この物語は、電登法の平凡な解釈を淡々と述べるものです。

過度な期待はしないでください。あ






注. 本文は、第3部しかありません。





民事法務協会とコンピューター化の歴史





ここで問題になるのは、
「電気通信回線による登記情報の提供に関する法律」
という法律。
現行法はこちら、制定当時の条文は こちらから。


これまで民事法務協会が紙の登記簿をデジタル化し、登記所がそれをコンピューター上で更新してきた、登記記録という情報をインターネットを通じて有料で公開するためのもの。

衆参委員会の1回ずつの審議であっさり成立した割には、非常に楽しめる法律である。

この制度は、利用者が、法務大臣が指定した法人に不動産や会社の登記記録を請求すると、その法人が法務省が管理するサーバーにアクセスし、不動産や法人の登記記録を引っ張り出して提供する、という仕組みになっている。

本来であれば、この法律ができた後で、だれを「指定法人」にするか決まるはずなんだけど、なんと、この法律ができる前から民事法務協会がなることに決まっていた!!


○政務次官(山本有二君)
  なお、この指定法人につきまして、今のところの予定といたしましては 民事法務協会、この財団法人にお頼みするつもりでございます。

完全な出来レース。





追加資料


民事法務協会への天下り 2019年07月26日 (商業登記 ゲンロン)

http://syotogen.seesaa.net/article/468290314.html









各府省等からの再就職者が5代以上続いている独立行政法人・特殊法人等・公益法人
※平成 21 年5月 14 日時点で確認されたもの。
法務省 (4法人、7役職)
(公益法人)
財団法人民事法務協会(会長)
財団法人日本刑事政策研究会(理事長)
財団法人矯正協会(会長、3常務理事)
財団法人入管協会(専務理事)












一番問題になったのが、
第三条
  法務大臣は、次に掲げる要件を備える者を、その者の同意を得て、 全国に一を限って、次条第一項に規定する業務(以下「登記情報提供業務」という。)を行う者として指定することができる。

というところ。



ただでさえ天下り団体と随意契約を結べば割高になるのに、競争もさせずに独占させたら、高くつくじゃないか。


第十三条
  法務大臣は、指定法人が次の各号のいずれかに該当するときは、その 指定を取り消し、又は期間を定めて登記情報提供業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。



それに、指定取り消しの規定があっても、代わりが見つかるまでサービスを中止しなきゃいけないから、事実上、指定取り消しなんて不可能じゃないか、と。









これに対して、法務省側は、 割高論点については、「セキュリティ」という錦の御旗を掲げたうえで、独占契約随意契約とを分離して反論する。



まずは、独占契約について。

○臼井国務大臣
  委員御指摘の条文でございますが、指定法人の数を全国で一に限る、こういうふうにいたしておりますのは、登記情報システムの安全性、いわゆるセキュリティーを確保する上で、登記情報システムに接続することができる指定法人の数はできる限り少なくする必要があると考えております。

  他方、指定法人を全国に一つとしても、利用者にとって特に不利益が生ずることはございません。

  また、指定法人は、利用者の利用料金の支払いにおける利便性を確保するために登記所の事務を代行する機関として設置されるものでございまして、登記所における登記簿の閲覧の手数料が全国一律であるのと同様に、指定法人に支払うべき利用料金も全国一律にすべきであります。

  さらに、指定法人は、登記所のコンピューターに記録されている登記情報をそのまま送信することを業務とするものでございまして、これに加工等をすることは許されておりませんので、複数の法人を指定し、競争させることによって利用者に利益が生ずることもございません。

  なお、 指定法人の利用料金は、登記情報の提供に要する実費用を利用見込み件数で除して算出されるということになっているわけでありますけれども、複数の法人を指定する場合には、各法人につき登記情報提供の経費を要する上に、各法人の利用見込み件数は一つの法人を指定する場合よりも少なくなるわけでございまして、かえって利用料金が高くなる。
利用者の利便性の確保の要請にも反する結果になるということでございます。




随意契約については・・・。

○細川政府参考人
  先ほど来申し上げておりますことは、指定法人の中に職員がおりますので、そこはコンピューターにアクセスできるわけですから、指定法人が二つ、三つできてきますとその人数が二倍、三倍になるわけですから、そこで何か不心得者がセキュリティー上の問題を起こす可能性が高くなる、だから一つの方がいいんだということを先ほど来申し上げているわけです。

  ですから、ほかにできるところがあるのではないかという御指摘でございますが、それはそれで、ないことはないだろうというふうには思っていますが、ただ、これは法務大臣が全面的に監督するものでございますので、 法務省の所管の公益法人でなければならないということになりますので、そういたしますと候補はおのずから絞られてくるということでございます。




次に、独占契約をしたために、指定法人が取り消された場合の、サービス停止リスクについては、

○臼井国務大臣
  たびたびのお尋ねでございますけれども、したがいまして、私どもは、その指定団体に、私どもが最も信頼の置ける団体を指定しよう、こういうことでございまして、万が一にもそういうことにならないようにこれから努力をする、こういうふうに私どもは申し上げているのでございます。




ひたすら「指導する」「監督する」を繰り返し、取り消すような事態にはならないと言い切っている。

この発言に至るまでに、何回同じこと言ったんだ?

質問した日野くんじゃなくても怒るよ。



○臼井国務大臣
  また、そのような事態にならないようにするために、本法案に規定しております法務大臣の監督権限を行使いたしまして、指定法人による業務遂行を十分に監督指導していく所存でございます
仮にそのような事態が生じたといたしましても、早急に新たな指定法人を指定することにいたしたいと考えております。
○臼井国務大臣
  今後とも、これからのことでございますので、そうした指定がなされた場合には、万が一にも取り消しというような事態にならないように、しっかりと指導してまいりたいと思います
○臼井国務大臣
したがいまして、繰り返しになるようでございますが、今後万が一にもそうした事態にならないようにしっかりと指導していくということに最も大切な要点があろうかと思います



取り消す側の人間が、こんなこと言っていいのか?



あまりのワンパターン答弁に委員長から注意が入るも、これ以外答えようがないんだから仕方ない。



これに対し、質問した議員くんたちも、法務省側の答弁に納得していないものの、攻撃の決め手がない以上、どうしようもない。









観戦する側からすれば、

「エラーの応酬でランナーが出るけど、好機でことごとく凡打する投手戦」

のような、見ごたえのなさですな。



議員くんたちの質問には期待できないので、とりあえず、この法律の面白いところについて、解説しよう。



まず、なんといっても、はじめから民事法務協会との契約が決まっている、出来レースである点。

他の法人と契約するつもりが全くないことを、全力で条文に表現している。

この美しさを味わってほしい。




第三条
  法務大臣は、次に掲げる要件を備える者を、その者の同意を得て、 全国に一を限って、次条第一項に規定する業務(以下「登記情報提供業務」という。)を行う者として指定することができる。

  一  登記情報提供業務を適確かつ円滑に行うのに必要な 経理的基礎及び技術的能力を有する者であること。

  二 民法第三十四条の規定により設立された法人であって、その役員又は職員の構成が登記情報提供業務の公正な遂行に支障を及ぼすおそれがないものであること。

  三  登記情報提供業務以外の業務を行っているときは、その業務を行うことによって 登記情報提供業務が不公正になるおそれがない者であること。








まず、1号の 経理的基礎及び技術的能力については、法律の定め方としてよくあるものだ。


第三条の二
  国土交通大臣は、左の各号に掲げる基準に適合する申請があつたときは、第二条又は前条の許可をしなければならない。

三   当該施設を新設し、譲り受け、若しくは借り受け、又は当該設備を新設し、増設し、若しくは拡張しようとする者の技術的及び経理的基礎が確実であること。

第九十三条
  基幹放送の業務を行おうとする者は、次に掲げる要件のいずれにも該当することについて、総務大臣の認定を受けなければならない。

二   当該業務を維持するに足りる経理的基礎及び技術的能力があること。




しかし、この「 経理的基礎及び技術的能力」という言葉、他の法律で使われるときは、

「基準の最低限を満たしているかどうか」

を判断するために使われているのに対し、この法律では、「 全国に一を限って」という限定を付けているので、他の法律とは全く違った意味になっている。



いわゆる「競願関係」というやつだ。


だから、この法律の場合、「最低基準」を満たしたとしても、それ以上の適任者がいれば、基準を満たしていても何にもならない、ということになる。



それでも、最低限を設定してあると思わせることには、意味があるんだろうと思う。

たとえば、この後、窓口での証明書発行業務を民間委託する入札の1年目、民事法務協会の入札価格は他より高かったにも関わらず、京都を除いて、すべて落札した。

しかも、京都だけは別の業者の価格があまりにも低く、排除できなかったため、一旦、落札ということになり、その後で低すぎる入札価格が問題視され、排除された、らしい。



○松野信夫君
要するに、ほかの法務局みんなそういう形で、民事法務協会の方が値段は高く入札しているんだけれども、どういうわけだか評価点というものがいい点数もらっていて、結局民事法務協会に落ち着くと、こういう仕組みで、悪いけど民事法務協会には最初からげたが履かされていると、こう言わざるを得ないと思うんです。

  それで、一つだけ違っていましたのは京都地方法務局、これはCという業者、大澤事務所株式会社が落札しているようですね。

このAというのが恐らく民事法務協会でしょうけど、よりもかなり安く。
そうしたら、京都地方法務局の下にありますように、低入札価格調査実施という記載があります。
要するに、これは余りに安くこのCの業者が入札し過ぎたということで低入札だという、これはいちゃもんというか嫌がらせではないかというふうに言わざるを得ないんですが、これ低入札だということで、この件も、これも、この京都地方法務局も結局この大澤事務所というのが排除されて民事法務協会が落札したと。

・・・中略・・・

  結局、そうすると、平成十九年度入札しましたと言ってはいるんですけれども、全部民事法務協会が落札をしたと、こういう結果でありまして、これは何というか、なれ合いというか身びいきというか、そう言われても仕方がない。



そういう意味で、 「 経理的基礎及び技術的能力」 は、低価格を武器に競争を仕掛けてくる相手がいたとしたら、その競争相手を排除する武器になる。


こういう使い方ができると思うのであります。





追加資料


民事法務協会が全部落札、という、たのしい結果について、法務省の説明があったので載せておく。




今回の外部委託の試行につきましては、一般競争入札によりまして実施していただく民間事業者を決定したわけでございますが、これまでも何度か話題に出ておりますように、結果としてその落札者はすべて(財)民事法務協会であったということでございます。
その入札結果についてどういうふうに分析しているのかというのが(2)のところだと思いますけれども、私どもといたしましては、今回の試行の入札に当たりましては会計法規を踏まえつつ、透明性、公平性を確保するという観点からホームページによって入札公告、また入札説明会を開催して入札を実施しております。
そういった意味では通常の入札手続をきちんと履践したと自負しておるところでございまして、その結果が、たまたま(財)民事法務協会だけであったということであろうと思っております。

どうしてそれだけになったのかという点に非常にご関心があるというふうに承っておりますけれども、前回、監理委員会のヒアリングの際にも申し上げたところでございますが、まず包括的な委託というのは今回初めて、私どもにとっても初めてですし、業者さんにとりましても初めての経験。
似て非なるものとしては一部委託、部分的なものとしては一部委託があったわけでございますが、これも前回監理委員会のヒアリングで申し上げましたように、今年度の実施分から入札を実施しておりますけれども、それまではずっと随意契約によって(財)民事法務協会との間で契約を締結して実施してきたということで、それ以外の業者さんにとりましては、なじみが薄かったということがあるのかなと思っております。

またもう一つは、乙号事務の市場化テストを実施するということは、昨年の段階で大きな方針として出ておりましたので、実際に試行の入札説明会にもかなりの業者さんが来ていただいておりますが、そういった業者さんはどちらかというと、多分本番、来年度からスタートいたします市場化テストによる民間委託に向けての情報収集という点が多かったのかなというふうに考えております。
現に入札説明会には来ることができなかったのだけれども、どういう説明がされたのか教えてほしいという個別のコンタクトがあった業者さんがありましたけれども、その業者さんに入札説明会は終わっているので、入札手続には今から難しいですよというご説明申し上げましたところ、我々の関心は専ら 20 年度からスタートする本番のほうだと言われました。
したがって、その情報が欲しいのだというようなお話も現に私ども直接接触して承ったりもしております。
そういったことで、結果として手を挙げられるところがいなかったのかなというふうに考えております。
また、そういったところにつきましては、来年度に向けてその体制を整えるということだろうと思いますので、今年度の試行の入札の時点では、例えば全府省統一参加資格をまだ充足していないとか、そういうような事情もあったのではないかなと推察しておるところでございます。

それが今回の入札結果についての分析でございます。
















値段勝負ではなく、反対に、能力勝負で民事法務協会をおびやかす相手を排除するのが、2号と3号になる。




まず、2号の

民法第三十四条の規定により設立された法人であって、その役員又は職員の構成が登記情報提供業務の公正な遂行に支障を及ぼすおそれがないものであること」

について。




ちなみに、この民法34条は、改正前の旧規定である。



第34条
  学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の 公益に関する社団又は財団であって、営利を目的としないものは、主務官庁の許可を得て、法人とすることができる。





民事局長も、答弁の中で、この公益性を強調している。





○細川政府参考人
  ですから、ほかにできるところがあるのではないかという御指摘でございますが、それはそれで、ないことはないだろうというふうには思っていますが、ただ、これは法務大臣が全面的に監督するものでございますので、法務省の所管の公益法人でなければならないということになりますので、そういたしますと候補はおのずから絞られてくるということでございます。




まぁ、法律では「法務省の所管の」までは言ってないけどね・・・。





しかし、ここまで強調した法人の「公益性」も、民事法務協会が「公益財団法人」になれなくなったら、あっさり引っ込めてしまう。


二   一般社団法人又は一般財団法人であって、その役員又は職員の構成が登記情報提供業務の公正な遂行に支障を及ぼすおそれがないものであること。





「公益法人」から「 一般社団法人又は一般財団法人」に改正したとき、どんな説明をしたのか興味深いところではあるけど、改正の経緯が見つからなかったので、たぶん、その微妙な時期につくられた法務省側の回答を引用する。



なお,登記情報の提供業務を行う者としては,登記情報のセキュリティーと,利用者の利用料金支払の利便性の確保ができる者が求められ,いわば国に代わってその業務を行うものである以上,当該業務が営利として行われることがあってはならないので,指定法人適格者を民法34条の規定により設立された法人に限っている。




アドレスにある"050726"は、2005年7月26日という意味だろう。


回答中で「民法34条」と言っているから、法律はまだ改正されていない。


民事法務協会が一般財団法人に移行したのが2012年だから、改正はまだ先のはずだ。


しかし、2001年頃から公益法人改革が叫ばれ始め、「公益法人制度改革関連3法案」が成立するのが2006年5月で、その4月には、民事法務協会の公益性について国会で追求されている。


したがって、2005年当時には、民事法務協会が公益法人のままでいられる可能性が低くなり、1999年の制定時ほど、公益性を強調していられなくなったんじゃないかな。


だから、この頃には、株式会社を排除する理由を、「公益性」を引っ込めて、次善の「非営利性」へとシフトさせていたんだろうね。



公益法人制度改革

2000年12月 -「行政改革大綱」閣議決定
      公益法人に対する行政の関与の在り方について策定
2001年1月 - 行革大臣から各府省に国所管の公益法人の総点検要請
2001年4月 -「行政委託型公益法人等改革の視点と課題」公表
2001年7月 -「公益法人制度についての問題意識-抜本的改革に向けて-」公表
       公益法人の基本制度及び関連制度の全般について抜本的な見直しを行い、公益法人制度改革の大綱を策定
2002年3月 -「公益法人制度の抜本的改革に向けた取組みについて」閣議決定


特例民法法人

1896年(明治29年)の公益法人制度以来の公益法人(社団法人・財団法人)であったものは、 2008年(平成20年)年12月1日の新公益法人制度施行から移行期間末日である2013年(平成25年)11月30日までの5年間継続して存在することを暫定的に認められている。これを特例社団法人、特例財団法人といい、総称して特例民法法人という。

これら特例民法法人は、2013年11月30日までの移行期間の間に、その定款を一般社団・財団法人法に合致するものに変更決議した上で(移行登記を停止条件とするもので可)、公益法人認定法の要件を満たして新公益法人に移行する認定を受けるか、公益認定を受けない一般社団法人・一般財団法人へ移行する認可を受け、移行登記をしなければ、移行期間終了と同時に自動解散となる。ただし2013年11月30日までに申請を終え、その後認定または認可されれば移行できる。移行期間中は従前どおり「社団法人」や「財団法人」とも名乗ることができる。




そして、この「非営利性」の意義については、大臣が答弁の中でサラッと言っている。



○臼井国務大臣
  なお、 指定法人の利用料金は、登記情報の提供に要する実費用を利用見込み件数で除して算出されるということになっているわけでありますけれども、複数の法人を指定する場合には、各法人につき登記情報提供の経費を要する上に、各法人の利用見込み件数は一つの法人を指定する場合よりも少なくなるわけでございまして、かえって利用料金が高くなる。
利用者の利便性の確保の要請にも反する結果になるということでございます。



利用料金  =  実費  ÷  利用件数



利益をのせてはいけないんです。



この理由は、現在でも生きている。



国から提供を受けた登記情報を指定法人の他の事業等に用いることや,指定法人の地位を利用して収益を上げることは認められません。(画像の下線部)








もちろん、株式会社を排除するためだろうね。




それから、
その役員又は職員の構成が登記情報提供業務の公正な遂行に支障を及ぼすおそれがない
という点。



これは、「登記に詳しくない役員・職員」ばかりだと、いくらITに詳しくても仕事にならないから、法務局関係者か、司法書士などの専門家を入れておけって、ことなんだろうね。



しかしね、そんな業界人ばっかの団体、そうそうありませんぜ。



業者団体か、天下り法人くらいしか残らないんだよ。



○水野副大臣
民事法務協会は財団法人でございますから、そういう意味でいうと公益法人の一種ということになりますけれども、どういう人たちで構成されているかというのは、財団法人民事法務協会については、昭和四十六年に設立をされまして、役員は理事が十五名おりまして、職員は二千七十四名おるということでございます。
出身というようなことがございましたけれども、職員数でいうと、法務局出身の人が八百五名、役員兼務の人を合わせると八百八名ということになると理解をしております。










そして、

登記情報提供業務以外の業務を行っているときは、その業務を行うことによって登記情報提供業務が不公正になるおそれがない者であること」



第三条
  法務大臣は、次に掲げる要件を備える者を、その者の同意を得て、全国に一を限って、次条第一項に規定する業務(以下「登記情報提供業務」という。)を行う者として指定することができる。

  三  登記情報提供業務以外の業務を行っているときは、その業務を行うことによって 登記情報提供業務が不公正になるおそれがない者であること。





法務省が民事法務協会と契約するために、ライバルとして排除したかったのは、次の3つの可能性だったはずだ。

  1. 安値受注のなんでも屋
  2. 技術的にかなわないIT企業
  3. 専門領域が重なる司法書士・土地家屋調査士グループ


この3つは、それぞれ三条各号に対応している。


つまり、これで業者団体も排除して安心というわけだ。



三号の規定については、政務次官の山本くんが国会で明快に答弁している。


○政務次官(山本有二君)
  そこで、司法書士会を指定法人にしたならばという御示唆でございますが、指定法人が登記情報提供業務以外の業務を行っているときは、その業務を行うことによって登記情報提供業務が不公正になるおそれがないものである必要がございますが、司法書士は報酬を得て登記申請手続の代理を行うことを業とし、職務上登記情報と密接な関係を有しますので、司法書士が構成員となっている司法書士会を指定法人とした場合には、業務遂行の公正につきまして外部の方に疑念を持たれるおそれがないとは言えないものと考えております。

  したがいまして、 司法書士会を指定法人とすることは適当でないと考えておるところでございます。



困ったねぇ。


民事法務協会しか残らないよ。


でも、他に選択肢がないんだから、しょーがないよね。

このサービスは始めなきゃいけないんだから。


こういう流れなのであります。






そして、上の3つのグループが組み合わさったとき、

-- たとえばIT企業が元司法書士を大量雇用した場合 --

の最終兵器が、「 全国に一を限って」である。



第三条
  法務大臣は、次に掲げる要件を備える者を、その者の同意を得て、 全国に一を限って、次条第一項に規定する業務(以下「登記情報提供業務」という。)を行う者として指定することができる。




ここまで徹底的にライバル候補を排除しておいて、なおかつ

「民事法務協会と競争して勝ったらね。」

という条件がついている。



もちろん、随意契約だから基準なんてありえない。

大臣までもが契約相手を明言しているのに、どういう勝負をせぇっちゅうねん。



随意契約の妥当性について調査した国税庁でさえ、

【契約形態・契約条件の妥当性】
  本サービスは、「電気通信回線による登記情報の提供に関する法律」第3条の規定に基づく 法務大臣の指定を受けた全国唯一の者である一般財団法人民事法務協会が、同法第4条に規定する業務(登記情報を電気通信回線を使用して送信する業務)を行うものであり、当協会以外に当該サービスを提供できる者がなく、また、財務大臣通達「公共調達の適正化について」(平成18年8月25日付財計第2017号)に定める競争性のない随意契約によらざるを得ない場合として整理される「法令の規定により、契約の相手方が一に定められているもの」に合致することから、当協会と随意契約を行っているものであり、契約形態に問題は認められない


例外的であるはずの随意契約を やむを得ないものと正当化している。




ホントに、うつくしいと感嘆するほかない。

様式美というのか、法律美というのか、伝統的・組織的な創作活動の上に成り立つ、計算され尽くした芸術である。


ナントカ警部が怪盗ナントカを捕まえるために建物中に警官を配置したような、つけ入るスキのなさである。







さらに、罰則についても、じゅうぶんな注意が払われている。


第十五条
  次の各号の一に該当するときは、その違反行為をした指定法人の役員又は職員は、三十万円以下の罰金に処する。

  一  第七条の許可を受けないで 登記情報提供業務の全部を廃止したとき。
  二  第十二条第一項の規定による 報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をしたとき。

2  指定法人の役員又は職員が指定法人の業務に関して前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、指定法人に対しても、同項の刑を科する。



ところで、この法律の罰則に当たる事由ってのは、すべて指定取消事由なんですよ。

7条とか12条とか、この電登法の規定に違反して罰金刑になるってことは、そもそも、この法律の規定に違反したってことだから、取消事由になってしまう。



○細川政府参考人
  ですから、 この規定の法律に基づく規定に違反したとき、あるいはこの法律の規定に基づく命令もしくは処分に違反したとき、このようにお読みいただきたいと思います。


第十三条
  法務大臣は、指定法人が次の各号のいずれかに該当するときは、 その指定を取り消し、又は期間を定めて登記情報提供業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。

  一  登記情報提供業務を適確かつ円滑に実施することができないと認められるとき。
  二 この法律の規定又は当該規定に基づく命令若しくは処分に違反したとき
  三  第五条第一項の規定により認可を受けた業務規程によらないで登記情報提供業務を行ったとき。

2  法務大臣は、前項の規定による処分をしたときは、その旨を公示しなければならない。



そして、大臣が、取り消しなんて起こらないと明言してるんだから、罰則の適用もありえない。



なぜなら、

罰則の適用がある」ならば、「取り消しの適用がある

の対偶は、

取り消しの適用がない」ならば、「罰則の適用がない

だから。



○臼井国務大臣
  たびたびのお尋ねでございますけれども、したがいまして、私どもは、その指定団体に、私どもが最も信頼の置ける団体を指定しよう、こういうことでございまして、万が一にもそういうことにならないようにこれから努力をする、こういうふうに私どもは申し上げているのでございます。










しかし、この罰則規定で本当においしいところは、ここではない。


刑が軽い


これまで、さんざん登記情報提供業務の特殊性を力説し、指定法人の信頼性を宣言していたのに、罰則のはなしになると、特殊でもなんでもなくなる。


第十五条
  次の各号の一に該当するときは、その違反行為をした指定法人の役員又は職員は、三十万円以下の罰金に処する。

  一  第七条の許可を受けないで 登記情報提供業務の全部を廃止したとき。



無断で全部やめちゃって、 30万円以下の罰金って軽すぎやしませんか?

30万円以下の罰金で検索すると、こんな感じですぜ。


第十四条
第一種動物取扱業者は、第十条第二項第四号若しくは第三項第一号に掲げる事項の変更をし、飼養施設を設置しようとし、又は犬猫等販売業を営もうとする場合には、あらかじめ、環境省令で定めるところにより、都道府県知事に届け出なければならない

第四十七条
  次の各号のいずれかに該当する者は、 三十万円以下の罰金に処する。
第十四条第一項から第三項まで、第二十四条の二、第二十四条の三第一項又は第二十八条第三項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

第十四条
  第四条第二項の規定による交付を受けた 施設占有者は、拾得者の請求があったときは、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない

一   物件の種類及び特徴
二   物件の交付を受けた日時
三   施設の名称及び所在地並びに施設占有者の氏名(法人にあっては、その名称及び代表者の氏名)

第四十二条
  次の各号のいずれかに該当する者は、 三十万円以下の罰金に処する。
一   第十四条の規定に違反して、書面を交付せず、又は虚偽の記載をした書面を交付した者



この仕事って、そんなどーでもいいことなの?



そう思って他の法律とくらべてみると、どうやら、それが無断で事業を全部廃止した場合の相場らしい。

というか、 三十万円以下の罰金という刑で検索すると、ほとんど、事業者専用みたいになっている。

なにこれ!?

ほんと、びっくりだよ。


第百十条
  次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした指定試験機関、指定登録機関、登録講習機関、センター又は指定法人の役員又は職員は、三十万円以下の罰金に処する。

四  第二十三条第一項の 許可を受けないで、又は第四十一条の九の規定による届出をしないで、試験事務、登録事務、講習事務又は管理適正化業務の全部を廃止したとき。

第百五十一条
  次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした設備導入促進法人の役員又は職員は、三十万円以下の罰金に処する。

二   第七十一条第一項の規定による許可を受けないで、設備導入促進業務の全部を廃止したとき。

第七十条
  次の各号のいずれかに該当する者は、 三十万円以下の罰金に処する。

二   第四十一条第一項又は第五十四条第一項の規定による許可を受けないで業務の全部を廃止した



モーターボート競走法なんて、ノミ行為とか八百長とかは懲役刑なのに、無断で事業を廃止しておいて、罰金30万円はないでしょ。

賭博罪にならない特別な立場で営業してるのに、役所に断りもせずにやめちゃうって、ふざけてません?

それに比べりゃ、ノミ行為なんてかわいいもんじゃないすか。


虚偽報告も、罰金10万円から50万円くらいが相場みたいなんだけど、中には懲役付きの重いものもある。

天下り団体でなければ、こーいうのもアリなの?


第四十条
  次の各号のいずれかに該当する者は、 六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

一  第十三条の五第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

第二十条
  認定職業訓練を行う者等が次の各号のいずれかに該当するときは、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

一   第十五条第一項又は第三項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした場合
二  第十六条第一項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又は同条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合

第三十七条
  第二十九条第一項の規定による報告若しくは物件の提出をせず、若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の物件の提出をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者は、一年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。




大臣が罰則は適用しないと言ってるんだから、もう罰則による抑止とかではなく、とことん政治判断なんだろうね。

原発事故みたいに、起こらないことが前提。


これも様式美の世界。


○日野委員
  あなたはそう言うけれども、トラブルというのはそんなことでは十分な危機管理にはならぬのです。
例えばジェー・シー・オー、臨界事故を起こした、あれなんか起きるはずないのですよ。
あんな事故が起きるはずない。
しかし起きたんだ、現に。

それから、今二万カ所の山陽新幹線のトンネルに異常が見つかった。
あるはずがないんだ、あんなものは。
あなたが今言ったのは私は甘いと思う。
ここを何とするのです。






追加資料


モーターボート業界は自分で稼げるので、補助金等のカネは流れていないようである。


天下りだけ挙げておく。



離職時の官職 再就職日 再就職先の名称 再就職先における地位
埼玉県警察さいたま市警察部長兼埼玉県警察本部警務部参事官兼第一方面本部長 H23.4.1 戸田競艇組合 警備長
静岡県警察本部地域部長 H23.4.1 浜名湖競艇企業団 保安部長
静岡県警察本部生活安全部長 H28.4.1 浜名湖競艇企業団 保安本部長
国土交通省海事局船員政策課雇用対策室長 H26.12.1 競艇総合管理株式会社 事業グループの契約社員
近畿船員地方労働委員会事務局長 H20.4.2 住之江競艇運営協議会 事務局長
九州管区警察局長 H8.4.1 財団法人競艇保安協会 理事長
近畿管区警察局長 H12.4.1 財団法人競艇保安協会 理事長
警察庁交通局長 H17.7.1 財団法人競艇保安協会 理事長
関東管区警察学校長 S62.4.16 財団法人競艇保安協会 常務理事
北海道警察旭川方面本部長 H5.6.1 財団法人競艇保安協会 常務理事
九州管区警察局広域調整部長 H16.4.1 財団法人競艇保安協会 常務理事










守秘義務違反は問わない


日本の法律では、「情報窃盗」というものは、罪に問われないらしい。

刑法の窃盗罪は「モノ」を盗むことなので、「情報」単体では窃盗罪に当たらないからである。


日本における情報窃盗の法的問題

日本において電子的に記録された 情報自体を盗む行為を処罰する刑法上の犯罪は存在しない。日本の刑法の窃盗罪(235条)は原則として財物を客体としており、情報は財物に含まれないためである。
したがって、情報そのものではなく情報が化体した文章、テープ、フロッピー等といった 媒体物を盗んだ場合に窃盗罪の成立を認めている
現在は企業の営業機密に属する電子データの持ち出しに関して2005年に不正競争防止法が改正され罰則規定が追加された。この不正競争防止法では、不正の競争の目的で、営業秘密を不正に取得し、使用し、または開示する事が要件となっている。ただし、そもそも対象となるデータが「営業秘密」と認められるためには、当該データに対し適切なアクセス権限の設定や保護が行われていることが必要となっている。



「情報を盗む」のを罰するのは無理にしても、職務上知った情報を公開しない、という意味で、公務員であれば、 国家公務員法や地方公務員法の守秘義務違反(罰則あり)、医師や弁護士であれば、刑法に秘密漏示罪がある。

では、指定法人の職員の場合は?


第九条
  指定法人の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、登記情報提供業務に関して得られた情報を、登記情報提供業務の用に供する目的以外に使用してはならない



使用してはならないんだけど、この規定に違反した場合の罰則規定がない。

これも、さんざん業務の重要性を言っておきながら、妙な設定である。


だが、安心されたい。

議員くんも、この点には気づいていて、しっかり質問してくれている。



○臼井国務大臣
  委員御指摘のとおり、この登記情報、極めて大切な役目を指定法人が担うということになるわけでございます。
したがいまして、役職員等の問題につきましては、先ほど参考人からお話をしたとおりでございまして、私ども、法務大臣としての監督権限というものをしっかり行使をいたしまして対処いたしてまいりたい、このように考えております。

  また、こうしたものにつきましては 特に罰則規定を設けておりませんが、捜査機関に対しての告発をするよう命令するということによりまして、しっかりと対処していきたいと思います。

○木島委員
  いや、告発するといったって、目的外流用した役職員は何か刑事罰に該当するのでしょうか

○細川政府参考人
  通常は、いろいろな情報を、例えば顧客の情報をコンピューターから打ち出して持っていきますと、これは窃盗罪、情報がついた紙を窃盗したということで現在の刑法では対処されているわけでございます。

○木島委員
  窃盗、紙の窃盗罪で告発するんですか。
本当にこれは、 国民の大事な登記情報を漏らしちゃいかぬ、こういう法律をつくろうというのですから、それを破った場合に紙の窃盗罪で告発するというのでは全然説得力がないと思うのですね





議員君は問題に気づいてはいたんだけど、 結局逃げられた。
守秘義務違反を窃盗罪にすり替えられて。


ここで、少し考えてみよう。 国家公務員法の守秘義務違反と、刑法の秘密漏示罪を並べてみる。


第百九条
  次の各号のいずれかに該当する者は、 一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

十二   第百条第一項若しくは第二項又は第百六条の十二第一項の規定に違反して秘密を漏らした者

第百三十四条
  医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。



もともと国家公務員がしていた仕事を民間団体が請け負うわけだから、罰則をつけようとすれば、国家公務員より重くするのは変だし、国家公務員より軽すぎるのも変である


そうすると、指定法人職員の守秘義務違反の相場も、「一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」か、ちょい下くらいになるだろうね。


第百四十八条
  機構の取締役、会計参与、監査役若しくは職員又はこれらの職にあった者が、第八十九条の規定に違反してその職務上知ることのできた秘密を漏らし、又は盗用したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第五十四条
  第二十五条第一項の規定に違反して、第二十四条の公共サービスの実施に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。



と思うんだけど、なぜか公務員より重い例もあった。


第四条の八
1  指定試験機関の役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、試験事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない

第十四条の四
  第四条の八第一項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。



だが、しかし。

仮にこの法律に守秘義務違反の罰則を付けた場合、この上なく大事な提供業務を無断で止めてしまっても30万円以下の罰金にしているのに、 秘密を漏らしただけで懲役刑って、ひどくないか?、という話になるわけですよ、絶対。

並べて規定したら、守秘義務違反のほうが刑が重いわけだから、じゃあ罪の重さもそれに比例するのか、といわれると矛盾してしまう。


第十五条
  次の各号の一に該当するときは、その違反行為をした指定法人の役員又は職員は、 三十万円以下の罰金に処する。

  一  第七条の許可を受けないで 登記情報提供業務の全部を廃止したとき。
  二  第十二条第一項の規定による 報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をしたとき。

2  指定法人の役員又は職員が指定法人の業務に関して前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、 指定法人に対しても、同項の刑を科する



しかも、2項によって、法人も同じ刑が科されてしまうので、守秘義務違反なんていつ起こるかわからんような問題に、指定法人を巻き込まんでくれ、ということにもなる。


なぜなら、指定法人を一つだけにしているのも、法務省のサーバーに直接アクセスできるというのも、

民事法務協会が信頼できるから

と言い続けてきたのに。



電登法に基づいて罰金刑なんか受けた日にゃ、これまでの答弁が全部無意味になるだけじゃなく、そんな法人を指定した法務省の責任問題になってしまう。

ここまで精巧につくった法律が根底から覆されるようなことだけは、どうしても避けなければならない。


その点、窃盗罪なら、日本で認知される犯罪の3/4が窃盗犯なので、どこにでもある、ユビキタスでポピュラーな犯罪なのであります。


そして、これならニュースでよくある「厳正に対処したい」情報流出事件として扱われ、 だれが指定法人になっても起こりうる問題という一般化ができる。

そういうわけで、 電気通信回線による登記情報の提供に関する法律15条の罰則の中には入れたくなかったんだろうね、たぶん。


うつくしい。

実に、うつくしい。


しかし、ほんとにいいのか、これで?







法律の説明がひととおり終わったところで、当時の議員くんたちが採り得た攻撃方法について考えてみよう。


全国に一を限って


議員くんたちも、この点についてはしつこく質問したし、天下りとも絡めて攻撃していたから、及第点は付けられるんじゃないかな。

しかし、できれば、もうちょっと突っ込んでほしかったな。



これついては、福島くんの質問がちょっといいかんじ。

○福島瑞穂君
  今回、民事法務協会、法務大臣が指定する公益法人が仲介者というふうな形になるわけですが、要するにアウトソーシングにされるというようなイメージで私は思っているんですが、いろんな役所のアウトソーシング化というのは、調べますと例えばその省庁の天下り先になっていたり非常に深い関係があったりということもあるわけですけれども、この民事法務協会のみが今回仲介になるのか、それとも将来いろんな団体も仲介になり得るのか、天下りとの関係はどうかということについてお聞かせください。



全国に一を限って」という規定によって委託された仕事というのは、調べてみると、たいてい天下り団体に行き着く。


ゴロゴロいるというか、入れ食い状態。


だから、こんな小さな問題で天下り批判をするより、他の委員会と合同で「 全国に一を限って」問題を取り上げるくらいの気概が欲しかった。


試しに、いくつか挙げてみよう。

  • 第二十一条第一項
      財務大臣は、塩の製造、輸入及び流通に関する調査研究等を行うことにより塩産業の健全な発展を図ることを目的とする一般社団法人又は一般財団法人であって、国民生活に不可欠である良質な塩の安定的な供給の確保を図るために次条第一項に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国に一を限って、塩事業センターとして指定することができる。

    塩事業センターに指定された公益財団法人塩事業センターには、財務省出身の監事が1名いるだけなんだけど、元になっているのは、日本たばこ産業株式会社。

    こちらは、元財務事務次官が取締役会会長を務める、AAランク+の天下り先。

    法律上の用語がそのまま法人名になっているところなんかは、出来レースという点では、いっそ、すがすがしい。

  • 第四十条
      国家公安委員会は、都道府県協会の健全な発達を図るとともに、善良の風俗の保持及び風俗環境の浄化並びに少年の健全な育成を図ることを目的とする一般社団法人又は一般財団法人であつて、次項に規定する事業を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申出により、全国に一を限つて、全国風俗環境浄化協会として指定することができる。

    全国風俗環境浄化協会に指定された公益財団法人全国防犯協会連合会には天下りがないようだが、傘下の防犯協会は警察の天下り先らしい。

  • 第四十三条
      国土交通大臣は、貨物自動車運送に関する秩序の確立に資することを目的とする一般社団法人又は一般財団法人であって、次条に規定する事業を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国に一を限って、全国貨物自動車運送適正化事業実施機関として指定することができる。

    全国貨物自動車運送適正化事業実施機関に指定された公益社団法人全日本トラック協会は、2008年の赤旗によれば、「全日本トラック協会(全ト協)の理事長など七人の常勤役員のうち五人が国からの天下りで占められ、理事長と常勤理事のポストは歴代旧運輸省(現国交省)と、旧自治省OBの指定席になっている」とのこと。

  • 第十一条の二
      農林水産大臣は、農地中間管理機構の行う第七条各号に掲げる事業を支援することを目的とする一般社団法人又は一般財団法人であつて、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国に一を限つて、当該業務を行う者として指定することができる。

    この規定により指定された公益社団法人全国農地保有合理化協会は、会長(非常勤)は元農林水産事務次官、専務理事(常勤)は元農水省幹部(?)、他に副会長(非常勤)に元北海道庁幹部(?)がいる。



いっそのこと、「 全国に一を限る法」っていう法律を作ってさ、この文言がどれだけの法律で使われているのか、そこにリスト化してみたらどうだろうか。



たぶん、 第二日本国政府が作れるくらいの仕事と役職が、ずらっと並ぶと思いますぜ。





追加資料

法人が政府より受けた補助金情報を掲載している「法人インフォ」という政府サイトがある。


これ使えば、できるじゃん。


しかし、調べてみると、指定法人であっても、補助金などの流れが出て来ないこともあるので、限界もあるらしい。


なお、天下りの役員が間違っていたら、ごめんなさい。







名称 民事法務協会
天下り 会長:元法務省参与
副会長:元札幌法務局長
監事:元広島法務局長×2
備考 法務省 財団法人民事法務協会(会長)
※平成21年5月14日時点
根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託
金額 15億8760万円
根拠法 電気通信回線による登記情報の提供に関する法律
業務 登記情報提供サービス
金額 337円
名称 全国農地保有合理化協会
天下り 会長:元農林水産事務次官
副会長:元農林水産省大臣官房参事官?
副会長:元北海道農政部長?
根拠法 農業経営基盤強化促進法
業務 農地中間管理機構事業/農地売買支援事業(支援法人費)
金額 11億4131万4000円
根拠法 農業経営基盤強化促進法
業務 農地中間管理機構事業/農地中間管理機構職員研修事業
金額 565万5000円
根拠法 農業経営基盤強化促進法
業務 農地中間管理機構事業/条件整備資金利子助成事業
金額 7336万7000円
根拠法 農業経営基盤強化促進法
業務 農地中間管理機構事業/農地売買円滑化事業
金額 2301万円
名称 一般財団法人日本木材総合情報センター
天下り 理事長:元関東農政局長
業務執行理事:元林野庁計画課海外森林資源情報分析官?
監事:元林野庁森林総合研究所総務部長?
備考 農林水産省 財団法人日本木材総合情報センター(専務理事)
※平成21年5月14日時点
根拠法 木材の安定供給の確保に関する特別措置法
業務 平成28年度地域材の安定供給対策のうち需給情報共有化対策事業
金額 7391万9000円
根拠法 木材の安定供給の確保に関する特別措置法
業務 新たな木材需要創出総合プロジェクト事業
金額 8500万円
名称 公益社団法人国土緑化推進機構
天下り 副理事長:元林野庁長官
専務理事:元林野庁国有林野部長
常務理事:元農水省国際情報分析官
常務理事:元林野庁林政部林業・木材産業情報分析官
備考 農林水産省 社団法人国土緑化推進機構(専務理事、常務理事)
※平成21年5月14日時点
根拠法
業務 合板・製材生産性強化対策事業費補助金
金額 290億円
根拠法
業務 新たな木材需要創出総合プロジェクト事業
金額 8577万1000円
根拠法 緑の募金による森林整備等の推進に関する法律?
業務 海岸防災林再生等復興支援事業
金額 3661万1000円
根拠法
業務 新たな木材需要創出総合プロジェクト事業
金額 2170万8000円
名称 公益財団法人中央果実協会 (旧財団法人中央果実生産出荷安定基金協会)
天下り 副理事長:元近畿農政局長?
常務理事:元中国四国農政局次長?
理事:元農水省果樹試験場栽培部土壌研究室長?
備考 農林水産省 財団法人中央果実生産出荷安定基金協会(常務理事)
※平成21年5月14日時点
根拠法 果樹農業振興特別措置法
業務 果実等生産出荷安定対策事業
金額 50億7825万円
名称 公益財団法人交通事故総合分析センター
天下り 理事長:元九州管区警察局長?
常務理事:元国土交通省自動車局付?
監事:元長崎県警本部長?
備考 警察庁 財団法人交通事故総合分析センター(専務理事)
※平成21年5月14日時点
根拠法 道路交通法
業務 車両安全に資するための医工連携による交通事故の詳細調査分析
金額 5173万2000円
根拠法 道路交通法
業務 事業用自動車の重大事故に関する事故調査分析研究業務
金額 5799万円





追加資料 その2


「全国に一を限る」法で、指定法人が法人インフォに出てこなかった原因として考えられるのは、

1.会員企業や下部組織からカネを集めている
2.独占的な業務をすることにより、その利用料を徴収している
3.どこかの時点で一括して多額の基金を受け入れた

などなど。


もっとも、「全国に一を限る」という縛りをなくせば、ふつーの天下りと補助金の問題として、それなりに遊ぶことができる。


平成20年12月31日~平成21年3月31日分
平成21年4月1日~平成22年3月31日分
平成22年4月1日~平成23年3月31日分
平成23年4月1日~平成24年3月31日分
平成24年4月1日~平成25年3月31日分
平成25年4月1日~平成26年3月31日分
平成26年4月1日~平成27年3月31日分
平成27年4月1日~平成28年3月31日分



試しに、少し拾ってみる。



名称 日本郵便オフィスサポート株式会社(株式会社メルファム)
天下り 九州支社統括部長:元佐賀地方法務局長(H26)
四国支社契約社員:元長崎地方法務局長(H26)
根拠法
業務 郵便切手類及び印紙供給契約
金額 1100万円
根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託
金額 2億9958万3360円
根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託
金額 2億9376万円
根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託契約
金額 1億9116万円
根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務
金額 3億8340万円
根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託
金額 4億2120万円
根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託
金額 2億9279万2320円
根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託契約
金額 6億1560万円
根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託契約
金額 2億8620万円
10 根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託契約
金額 5億2617万6000円
11 根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託
金額 1億9647万3600円
12 根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託
金額 2億1815万5680円
13 根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託
金額 9億0512万6400円
14 根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託
金額 4億6915万2000円
15 根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託
金額 3億2975万4240円
16 根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託
金額 11億7676万8000円
17 根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託(本局,台東出張所,墨田出張所,新宿出張所,板橋出張所,豊島出張所,北出張所,江戸川出張所及び城北出張所)
金額 16億704万円
18 根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託契約
金額 12億3120万円
19 根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託
金額 1億8518万7600円
20 根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託契約(大阪1)
金額 10億3680万円
21 根拠法 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
業務 登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)に係る業務委託契約(大阪2)
金額 10億440万円
22 根拠法
業務 総務系業務委託契約
金額 943万4880円
23 根拠法
業務 環境整備等業務委託契約
金額 291万6000円
名称 公益社団法人全国国土調査協会
天下り 会長:現法務大臣(休職中)
副会長兼常任理事:元農林水産省東北農政局総務部次長
嘱託職員:元東京法務局民事行政部次長
根拠法
業務 平成28年度山村境界基本調査に係る監督補助業務
金額 702万円
根拠法
業務 平成28年度 基準点維持管理支援業務
金額 756万円
根拠法
業務 地籍調査関係職員育成事業に係る研修等業務
金額 615万6000円
根拠法
業務 平成28年度都市部官民境界基本調査に係る監督補助業務
金額 1728万円
根拠法
業務 地籍調査に係る専門家派遣等による地籍調査実施支援業務
金額 648万円
根拠法
業務 平成27年度都市部官民境界基本調査実施のための資料作成業務
金額 471万9600円
根拠法
業務 平成27年度 基準点維持管理支援業務
金額 788万4000円
根拠法
業務 中長期的な地籍整備のあり方に関する検討会等の開催業務
金額 1134万円
根拠法
業務 地籍調査に係る専門家派遣等による地籍調査実施支援業務
金額 702万円
10 根拠法
業務 地籍調査関係職員育成事業に係る研修等業務
金額 615万6000円
11 根拠法
業務 平成27年度山村境界基本調査に係る監督補助業務
金額 756万円
12 根拠法
業務 平成27年度都市部官民境界基本調査に係る監督補助業務
金額 2916万円










なぜ指定法人を間にかませたのか


調べるのが大変そうなので、サラッと書いときます。

○臼井国務大臣
  現行の会計法規上では、クレジット払いや銀行口座からの引き落とし等の簡便な納付方法は許されておりませんので、登記所が直接、利用者に対して電気通信回線を通じて登記情報を提供するということになっております。
こうした登記印紙により手数料を前納する必要が国の場合あるわけでございまして、これでは登記簿の閲覧に要する時間と手間を圧縮するという本制度創設の趣旨が達成されないということになるわけでございます。

  そこで、利用者の料金の支払いを、民間のインターネットによる情報提供の場合と同様に、クレジット払いや銀行口座から引き落としをするという簡便な方法によることができるようにするために、登記所と利用者の間に指定法人を介在させるということにしたものでございます。

  また、電気通信回線による登記情報提供制度の実施に当たりましては、相当量の事務が新たに発生するということになるわけでございますが、行政の簡素合理化の観点から、これらの事務を指定法人にアウトソーシングするということにいたしたものでございます。



国権の最高機関たる国会が、 会計法規がクレジットカードを禁止しているからっていう理由で、行政サービスをアウトソーシングしていいのか?


新しい行政サービスを始めたいんだけど、会計法規がネックになっててねっていうんなら、会計法規のほうを変えるのが先決だと思うんだけど。


電登法に限らず、 国のサービス全体でクレジットカードを使えるようにすれば、大幅な効率化が実現できるじゃないか、と国会議員の誰かが発言しても良さそうなもんなんだけど、誰も言ってない。

与野党一致して言っていない。


ここは地雷なの?

印紙利権とか。



注.  現在は可能らしい。






民法第三十四条の規定により設立された法人




法務省側の説明では、こんな感じでした。


○細川政府参考人
  先ほど来申し上げておりますことは、指定法人の中に職員がおりますので、そこはコンピューターにアクセスできるわけですから、指定法人が二つ、三つできてきますとその人数が二倍、三倍になるわけですから、そこで何か不心得者がセキュリティー上の問題を起こす可能性が高くなる、だから一つの方がいいんだということを先ほど来申し上げているわけです。

  ですから、ほかにできるところがあるのではないかという御指摘でございますが、それはそれで、ないことはないだろうというふうには思っていますが、ただ、これは法務大臣が全面的に監督するものでございますので、 法務省の所管の公益法人でなければならないということになりますので、そういたしますと候補はおのずから絞られてくるということでございます。



それが、5年でこう変わります。


なお,登記情報の提供業務を行う者としては,登記情報のセキュリティーと,利用者の利用料金支払の利便性の確保ができる者が求められ,いわば国に代わってその業務を行うものである以上,当該業務が営利として行われることがあってはならないので,指定法人適格者を民法34条の規定により設立された法人に限っている。




そして、この見解は現在も継続中。


  登記情報提供業務は,様々な経済取引の基礎となる登記情報を広く一般に提供するものであり,指定法人は,国に代わってこのような公共サービスの提供を独占的に行うものであることから,国から提供を受けた登記情報を指定法人の他の事業等に用いることや,指定法人の地位を利用して収益を上げることは認められません




最初は

セキュリティの問題があるから、公益法人

という論法だったのに、5年後の主張では

行政サービスだから、非営利組織

という具合に、ポイントをずらしていったのであります。




後者については、市場化テストのときに、まとめてご賞味いただくので、とりあえず今は、当時の議員くんたちが

セキュリティの問題があるから、公益法人

をどうツッコむべきであったかである。




言い換えれば、 営利法人ではセキュリティが守れないのか、は正しいのか?



これまでのコンピューター化の歴史の中で、法務省側は、ずっと富士通との二人三脚ぶりを宣伝していたんだから、営利法人は信用できないっていうなら、
議員くんたちには、

じゃあ、そのシステムは誰が作ったんだよ

という、疑問は浮かばなかったのかな?



○政府委員(枇杷田泰助君)
その結果、 五十二年度から本体の方といいますかにつきましては富士通の方がなおその研究委託を進めていきたい、それから入出力につきましては東芝の方が進めていきたいというふうなことでずっと継続しておるわけでございます



ウイルスによる情報流出どころか、 登記システム自体を崩壊させることだってできちゃうじゃん。


どうやったって営利組織を噛ませなきゃITシステムは動かないのよ。


だいたい民事法務協会にしたって、自前ではどうにもならないから下請けに出してんのに。







この評価報告には、法務省CIO補佐官の大成くんも参加している。



大成くんの判断では、

10年以上やってるのに、内部に専門家がいない状態でも「技術的能力」がある

ということなの?



ただの丸投げじゃん。


第三条
  法務大臣は、次に掲げる要件を備える者を、その者の同意を得て、全国に一を限って、次条第一項に規定する業務(以下「登記情報提供業務」という。)を行う者として指定することができる。

  一  登記情報提供業務を適確かつ円滑に行うのに必要な経理的基礎及び 技術的能力を有する者であること。




しかも、随意契約で受けた仕事を一般競争入札に出しちゃったら、誰が落札するかわかんないよね。

業者を監督する能力もないのに。


資料は後知恵でも、議員くんたちもこうした主張はできたはずなんだ。


上にもいくつか引用した法律の中でも、天下り目的で指定団体を「一般社団法人又は一般財団法人」に限るってやり方は、

なにをやっているのか、よくわからん

という仕事だからゴマかせるのであって、IT運用なんていう身の丈を越えた技術的な問題、しかも参入者が山ほどいて市場価格がついてる分野で通用するわけがないのだよ。



作文の編集者・添削者であるはずの議員くんたちは、ここを指摘してほしかったな。







この下請け問題を、経済の視点から考えてみよう。




  登記情報提供業務の一部を外部委託により行うことについては,必ずしも禁止されるものではありませんが,その場合でも,登記情報提供業務は,すべて指定法人の責任において行っていただく必要があります。






この「外部委託」ってやつには、「一般社団法人又は一般財団法人」要件がついていない。


二   一般社団法人又は一般財団法人であって、その役員又は職員の構成が登記情報提供業務の公正な遂行に支障を及ぼすおそれがないものであること。





しかし、登記情報提供業務では、儲けちゃいけないんじゃなかったのか?




  登記情報提供業務は,様々な経済取引の基礎となる登記情報を広く一般に提供するものであり,指定法人は,国に代わってこのような公共サービスの提供を独占的に行うものであることから,国から提供を受けた登記情報を指定法人の他の事業等に用いることや,指定法人の地位を利用して収益を上げることは認められません





下請けに出せるなら、受注法人をトンネルにして下請会社で儲ければ同じことじゃん。

これを規制せずに受注法人だけ非営利に限定する意味がある?

民間委託だ、業務の効率化だ、と言って経済的な成果を強調しているのに、ここだけは非経済的というか反経済的な発想してますな。



どこの共産主義国かと。



まぁ、天下り法人だから、出資者に利益分配しなくても、役員・従業員で分配すればいいんだけどね。


だからこそ、逆に、相手構わず下請けを認めないと、民事法務協会の技術的能力要件が満たせないんだよね。


第三条
  法務大臣は、次に掲げる要件を備える者を、その者の同意を得て、全国に一を限って、次条第一項に規定する業務(以下「登記情報提供業務」という。)を行う者として指定することができる。

  一  登記情報提供業務を適確かつ円滑に行うのに必要な経理的基礎及び 技術的能力を有する者であること。




それにしても、「倒錯規定」とでも言うのかな、すごく回りくどいことをしている。





技術的能力要件  and  非営利要件



技術的能力要件満たせず



迂回ルート  :  下請け



非営利要件緩和






結局、どっちも骨抜きになってる。



だからさ、最初からこうすればスッキリするんだよ。





下請けに出すような奴に  "技術的能力"  はない!!








共産主義国でさえ、

白いネコでも黒いネコでも、ネズミを取るのがいいネコだ

なんて言ってたのに。



ネズミを捕るために白猫を飼ってるのに、白猫が自分のエサを黒猫に分けてやって働かせてるんだよ。

最初から黒猫を飼ってやればいいじゃん。

同じことなんだから。








追加資料

新しい資料じゃないんだけど、リンク先を読み返したら、新たな発見。


窓口業務について、業務の再委託については、結構細かい規定が書いてある。



(12) 再委託
イ   受託事業者は,委託業務の一部について再委託をしようとする場合には,原則としてあらかじめ提案書において,再委託先に委託する業務の範囲,再委託をすることの合理性及び必要性,契約金額,再委託先の履行能力並びに報告徴収その他の運営管理の方法について記載するものとする。





当然、登記情報提供サービスについても、同様の規定があるはずなんだけど、

再委託をすることの合理性及び必要性

は、どうなってるんだろう。




民事法務協会が提供できるのは電話応対とかの周辺業務で、提供サービスのコアの部分である「技術的能力」は丸投げするしかないんだから、「再委託をすることの合理性及び必要性」は、どう書いたんだろうね。


自分たちには技術的能力がありません、なんて書けるわけないし。



その2


  登記情報提供業務の一部を外部委託により行うことについては,必ずしも禁止されるものではありませんが,その場合でも,登記情報提供業務は,すべて指定法人の責任において行っていただく必要があります。




すべて指定法人の責任においてって言っても、結局、最終的には、国家賠償で国民が負担することになるんでしょ。



求償するつもりもないんだから、民事法務協会が外部委託するための抜け道にしかならないじゃん。









説明責任



民事法務協会に委託したのは、インターネットを通じた登記情報の提供でありました。

窓口で紙の証明書を発行する制度と両輪となって、「取引の安全と円滑に資する」ことになる。


これは、本体である登記データを国が管理して、証明書の発行を窓口の業者が、インターネットでの情報提供を指定法人が担当する役割分担になっている。


つまり、登記情報をどう読むのかという問題は、証明書だろうと、インターネットだろうと変わらないのであります。

そうなると、そこで発生する説明コストを最小限にしようとすれば、窓口業者や指定法人が個々にするよりも、法務省が一括してすることになる。

登記情報を理解しなければならないのは、証明書等の取得者に限られないし、法務省としても、行政機関として、国民の登記への理解を高めることをしていかなければならない。



そうなると、

利用者からの電話相談に関する業務についても指定法人が行っている

のは、そんな自慢げに言うことなのかな?




窓口の発行業者は、窓口で説明を求められたら、対応しなけれはならないだろう。

インターネットの情報提供業者は、説明が不充分であるために起こる、利用者の立ち往生を防がねばならないだろう。


しかし、国民が登記情報を理解できないという問題は、行政が一元的に対応して、根本的な解決を目指すべきものではないのか?


業者が対応するから、コストが下がるとかいう問題ではない。

これは、行政機関が情報として蓄積し、窓口やネットの担当業者が変更されるときに、円滑な引き継ぎができるよう、マニュアル化していかなければならないものだ。

それをあたかも同一の業者が永遠に対応するかのごとき前提で、丸投げしていることが問題なのだよ。


結果として、行政機関としての説明が投げやりになる。

というか、説明する気が全くない。





このやる気のなさは、今に始まったことではなく、法案審議当時も変わらなかったはずだ。



だから、議員くんたちにしても、この法律の目的が

登記情報をより簡易かつ迅速に利用することができるように

することだと認識していたのなら、

現在、法務省がホームページ上でしている説明では、国民は登記情報の意味さえ理解できない

と批判すべきだったのではないか。



法務省も、議員くんたちも、登記情報の利用について、一般国民を置き去りにしていることが全然わかっていない。




追加資料

○加藤(公)委員

  全く見ていないわけではないというのは、ちらっと見たことがあるというふうに日本語では言いかえられると思うんですが、ちらっとごらんになればわかるとおり、法務省のホームページは物すごく見にくいんですよ。
字が細かくて、文字ばかりなんですね。
余り私は人の悪口を言うのは好きじゃありませんけれども、正直言って、センス悪いんです。
そこに、会社法ができました、千条ですとあそこに出して、だれが見るのかと。
それで広報した気にならないでくださいねというのは、今の質問で最初に言ったのはそういうことでありまして、何もお金をかけて全部つくり変えろとは言いませんが、ホームページに載っけたからそれでいいんだという、この考え方だけはやめていただきたい。

  時間の関係がありますのでお願いだけしておきますので、大臣、大きくうなずいていただきましたから、しっかり広報していただけるものと確信をしております。










さて、そろそろ本題に入ろう。


この 電気通信回線による登記情報の提供に関する法律のすごいところは、制定後に起きた、あんなことやこんなことをいろいろ混ぜ込んでいくと、制定時とは全く違う味が楽しめるところにある。




市場化テスト



第一条
  この法律は、国の行政機関等又は地方公共団体が自ら実施する公共サービスに関し、その実施を民間が担うことができるものは民間にゆだねる観点から、これを見直し、民間事業者の創意と工夫が反映されることが期待される一体の業務を選定して官民競争入札又は民間競争入札に付することにより、公共サービスの質の維持向上及び経費の削減を図る改革を実施するため、その基本理念、公共サービス改革基本方針の策定、官民競争入札及び民間競争入札の手続、落札した民間事業者が公共サービスを実施するために必要な措置、官民競争入札等監理委員会の設置その他必要な事項を定めるものとする。


この法律によって、これまで随意契約で天下り法人に委託していた仕事が入札に出され、落札した業者が受注することになりました。


その結果、
「非営利法人は、信用できる」
という、意味不明な理由付けが、もはや通用しなくなったのであります。


電登法がらみで言えば、これまで民事法務協会が独占受注していた窓口での証明書発行業務も入札に出され、1年目のたのしい結果を除けば、民間企業が大いに受注している。

株式会社だろうが一般社団法人だろうが、書類を提出させて、その経営を監視すれば、結局同じことだから。


ならば、窓口に限らず、電子的な登記情報の提供も入札に付されるべきではないか。



この後知恵を使って、当時の議論を吟味してみようというのが、ここからの展開である。





追加資料


法務省が、こんなアンケートを実施していた。



 登記情報提供サービスに係る調査については,平成23年11月17日から本年1月31日まで実施したところですが,登記情報提供サービスの運営等に関するアンケートについては1名の方から,利用者アンケートについては62名の方からの御回答をいただきました。誠にありがとうございました。

登記情報提供サービスに係る調査結果の公表について(平成24年4月2日)



利用者アンケートの回答者が「62名」って・・・。



小学生の発表じゃないんだから。



2か月半やって、これだけしか集まらないってのは、どういう方法でアンケートを実施したんだろう。



インターネット上のサービスについて利用者に聞いたんだから、当然、インターネット上でアンケートをとったんですよね。



まさか紙ってことは・・・、ねぇ。





平成23年度における行政手続オンライン化等の状況(総務省)



謎だ。




〈問1〉
 今まで登記情報提供サービスを利用したことはありますか。

〈回答〉
  • 「よく利用する」
     → 81%(50名)
  • 「時々利用する」
     → 18%(11名)
  • 「利用したことはない」という方が2%(1名)


  


〈問2〉
 どのような実施主体が登記情報提供業務を営むことが適当ですか。

〈回答〉
  • 「現在の指定法人(「監督公益法人」)が登記情報提供業務を運営することが適当」
     → 31%(19名)
  • 「サービス内容に問題があるものの監督公益法人が登記情報提供業務を運営することが適当」
     → 23%(14名)
  • 「国が登記情報提供業務を運営することが適当」
     → 24%(15名)
  • 「営利企業(株式会社)が登記情報提供業務を運営することが適当」
     → 18%(11名)
  • 「別の非営利法人が登記情報提供業務を運営することが適当」
     → 2%(1名)



回答者の過半数が監督公益法人が登記情報提供業務を運営することが適当との御意見でした。



  


〈問3〉
 監督公益法人が登記情報提供サービスを運営することが適当でない理由をお答えください(この問は問2で監督公益法人以外が登記情報提供サービスを行うことが適当と回答いただいた方にお答えいただいています。)。

〈回答〉
  • 「満足できるサービスが提供されていないため」
     → 25%(7名)
  • 「利用料金(17円)が高いため」
     → 18%(5名)
  • 「サービスが安定していないため」
     → 14%(4名)


  


〈問4〉
 問2で選択された運営主体が適当と考える理由をお答えください(この問は問2で監督公益法人以外が登記情報提供サービスを行うことが適当と回答いただいた方にお答えいただいています。)。

〈回答〉
  • 「満足できるサービスの提供が期待できるため」
     → 32%(9名)
  • 「利用料金(17円)の引下げが期待できるため」
     → 14%(4名)
  • 「サービスの安定化が期待できるため」
     → 7%(2名)


  


〈問5〉
 監督公益法人の行う登記情報提供サービスについて,どのような点に御不満をお持ちですか(この問は問2でサービス内容に問題があるものの監督公益法人が登記情報提供業務を運営することが適当と回答いただいた方にお答えいただいています。)。

〈回答〉
  • 「料金の支払方法が限定されている点」
     → 21%(3名)
  • 「サービスが安定していない点」
     → 14%(2名)
  • 「コールセンター等の問い合わせ対応が十分でない点」
     → 7%(1名)
  • 「利用料金(17円)が高い点」
     → 7%(1名)


  


〈問6〉
 今後,仮に,監督公益法人から他の法人に運営主体が変更した場合には,利用者の皆様の氏名,生年月日などの個人情報や口座番号,クレジットカード番号などについて変更後の運営主体への引継ぎが必要になったり,登記情報提供サービスを利用するための契約・利用登録等について新規契約・契約変更・再登録等の手続が必要となることなどが考えられますが,その点について不便さは感じませんか。

〈回答〉
  • 「感じるが,手数料が安価になる等メリットがあるのであればやむを得ない」
     → 40%(25名)
  • 「感じるので避けて欲しい」
     → 27%(17名)
  • 「感じない」
     → 18%(11名)


  


ずいぶん露骨な誘導だな。

「問2」では、「回答者の過半数が監督公益法人が登記情報提供業務を運営することが適当との御意見でした。」という「まとめ」を挿入しているのに、なんでこっちに入れないんだろうね。



〈問7〉
 現在,登記情報提供サービスを利用いただいた場合の料金の支払方法は,個人の方にはクレジットカード払いによる方法が,法人の方には口座振替による方法が認められているところですが,登記情報提供サービスの運営主体が監督公益法人からその他の運営主体に変更した場合,口座振替又はクレジットカード払いの方法ができなくなり,その他の支払方法(例えば,ペイジーなどのインターネットバンキング)となるなど,料金の支払方法が変更されることも考えられますが,この点についてどのようにお考えですか。

〈回答〉
  • 「現在の支払方法を維持してほしい」
     → 40%(25名)
  • 「手数料が安価になる等メリットがあるのであれば,支払方法が変更されてもやむを得ない」
     → 24%(15名)
  • 「現在の支払方法を維持する必要はない」
     → 18%(11名)


  


〈問8〉
 登記情報提供サービスに対する要望として,優先度が高いものをお答えください(この問は2つ回答をいただいています。)。

〈回答〉
  • 「利用時間を拡大してほしい」
     → 53%(33名)
  • 「手数料を安くしてほしい」
     → 40%(25名)
  • 「操作性を向上してほしい」
     → 35%(22名)
  • 「安定した制度運営をしてほしい」
     → 26%(16名)
  • 「コールセンター等の問い合わせ対応をもっと充実してほしい」
     → 8%(5名)
  • 「料金の支払方法をもっと広く認めてほしい」
     → 5%(3名)

 なお,この問については同一人から,複数の回答をいただいているため,比率の合計は100になっておりません。

  

2 回答者の属性

(1) 年齢構成
  

(2) 利用目的
  

(2) 利用者の職業
  

 








民法34条の規定により設立された法人


なお,登記情報の提供業務を行う者としては,登記情報のセキュリティーと,利用者の利用料金支払の利便性の確保ができる者が求められ,いわば国に代わってその業務を行うものである以上,当該業務が営利として行われることがあってはならないので,指定法人適格者を民法34条の規定により設立された法人に限っている


市場化テスト時代の現在では、どんな理由を聞かせてくれるんでしょうか?



市場化テストによって窓口業務の委託費が下がったのは、

利益をのせない民事法務協会に頼むより、利益をのせた株式会社のほうが安くつく

ということですよね。



ものすごく不思議な感じもしますが。

ということは、

○臼井国務大臣
  なお、 指定法人の利用料金は、登記情報の提供に要する実費用を利用見込み件数で除して算出されるということになっているわけでありますけれども、複数の法人を指定する場合には、各法人につき登記情報提供の経費を要する上に、各法人の利用見込み件数は一つの法人を指定する場合よりも少なくなるわけでございまして、かえって利用料金が高くなる。
利用者の利便性の確保の要請にも反する結果になるということでございます。


利用料金  =  実費  ÷  利用件数

の「 登記情報の提供に要する実費用」の部分も、本当はものすごく高いんじゃありません?


協会職員さんたちの「利益」が乗っかっていて。


つまり、市場化テストの結果、「実費」に高い人件費をのっけて置くのも、「利益」として実費の外側に置くのも、 経済的にもなにも変わらないという、当たり前のはなしが通じるようになっただけなのだよ。

いままでは、それを「公益性」という言葉でくるんでいたので、株主が利益を受け取るのは だけど、天下りさんが給料として受け取るのはだという、コメディみたいな展開が通用していたわけであります。

ようやく「普通の国」に近づいたのであります。



こんな状態を放置していたというか、片棒を担いでいた議員くんたちには、まだやることがあると自覚してほしいな。







登記情報提供業務が不公正になるおそれがない




第三条
  法務大臣は、次に掲げる要件を備える者を、その者の同意を得て、全国に一を限って、次条第一項に規定する業務(以下「登記情報提供業務」という。)を行う者として指定することができる。

  三  登記情報提供業務以外の業務を行っているときは、 その業務を行うことによって登記情報提供業務が不公正になるおそれがない者であること。




この部分について、法務省側の説明は、こんな感じでした。



○政務次官(山本有二君)
  そこで、司法書士会を指定法人にしたならばという御示唆でございますが、指定法人が登記情報提供業務以外の業務を行っているときは、その業務を行うことによって登記情報提供業務が不公正になるおそれがないものである必要がございますが、司法書士は報酬を得て登記申請手続の代理を行うことを業とし、職務上登記情報と密接な関係を有しますので、司法書士が構成員となっている司法書士会を指定法人とした場合には、業務遂行の公正につきまして外部の方に疑念を持たれるおそれがないとは言えないものと考えております。

  したがいまして、 司法書士会を指定法人とすることは適当でないと考えておるところでございます。


なんていうか、肩書きで人を見るはなしだなぁ、と思う。

フリーランスの人が銀行から金を貸してもらえないみたいな、そういう価値観でつながっている社会のあり方じゃないかな、これは。


○魚住裕一郎君
  司法書士会の皆さんにはちょっとお聞かせできないような、怒るんじゃないかなというような御答弁かと思いますが、本当に職務に忠実に誠実に私はやっていると思っておりますけれども、じゃこの民事法務協会、何もほかにやってないのかと
出版活動もやっている、そういうことがありまして、 ある意味では五十歩百歩ではないか
つまり、司法書士さんとしての職務は各個人がやっているのであって、書士会あるいは書士会連合会としてはそういうような、他に不公正になるおそれがあるかのような業務をやっているとは、それはとんでもない話だなというふうに私の意見を述べさせていただきたいと思います。
なおあれば、民事局長。

○政府参考人(細川清君)
  ただいま政務次官の御答弁された趣旨は、現実に不正なことが起こる可能性があるといった趣旨ではないことはもちろんでございまして、外部の方から見て、そういう制度の利用者の大部分が司法書士さんなので、利用者が、かつ提供する方もやったら疑念を持つ方があるかもしれない、だからそこは慎重にいかなきゃならぬという御趣旨であったように聞きました。

  それから、この問題につきましては、日本司法書士会連合会と私どもお話しいたしまして、 連合会としては公式な意見として自分たちがやりたいということは言っておられないわけでございます。
ここのところは、実は 一部の司法書士の皆さん方で司法書士の団体でやりたいという意見はございましたが、それは日本司法書士会連合会の意見ではないということはぜひ御理解いただきたいと思います。




民事局長の答弁、あいかわらず、うまいですな。

利用者が、かつ提供する方もやったら疑念を持つ方があるかもしれない、だからそこは慎重にいかなきゃならぬ



これなら、司法書士会だけでなく、「 一部の司法書士の皆さん方で司法書士の団体でやりたいという意見」までカバーできちゃう。


しかし、同じ理屈で言うなら、天下り法人と契約するから、 外部の方に疑念を持たれるんじゃないかと。


○政府参考人(細川清君)
  それで、民事法務協会が天下り先であるかどうかというのは、これは私どもが申し上げるより事実として御判断いただいた方がいいと思うんですが、民事法務協会の役員は十九名おりますが、このうち有給は二名、会長、副会長だけでございまして、その余の十七名は無報酬でございます。

  それから、職員は二千人ほどおりますが、大部分は、一千人を超える数は登記簿の謄抄本の作成及びコンピューター化された登記所における登記事項証明書を発行するためのオペレーティング作業をやっている職員の方々でございます。
残りは登記相談とか、登記所の利用者のいろいろの各種相談がございますので、そういう相談に応じてもらう仕事、それから登記簿の簿冊に入っている登記事項をコンピューターに移行するための移行作業に従事していただくということで、これは法務局のOBが八百名ぐらい要ります。
これはそういう登記の知識がある方でなければそういうことはできませんので、そういう方をお願いしているというのが実情でございます。

それが民事法務協会の実情でございまして、いわゆる法務省の幹部が天下って甘い汁を吸う、そういう意味での天下り先ではないと私たちは確信しているところでございます



ところが、市場化テストによって、こういう流れも変わってきたのであります。


○木俣佳丈君
  これは特に、経済財政諮問会議の中の八代議員が、民間事業者が本業と市場化テスト、委託事業を兼業することによる利益というものを強調しています。これは特に、今年の四月三日の日経産業新聞なんかでも明確にお答えになっておりまして、将来性を考えれば企業にとっては先行投資になる、民間企業には官のような制約がないので兼業ができ、兼業の利益が得られると、こういうお答えをしています。


○水野副大臣
  実際にこの 乙号事務の入札に対して参加する可能性のある民間事業者ということで、要件などについては先ほど来いろいろありましたが、具体的な名前でいえば、財団法人民事法務協会は、今までの委託の経験などがありますから、可能性としては応札してくるところとしてあり得るでしょうし、昨年、公共サービス改革の基本方針策定に当たって民間事業者から意見聴取の手続を実施いたしましたけれども、そのときに関心を寄せていたものとしては、登記事項証明書の取得代行業者とか人材派遣会社などがこの問題に、乙号事務の市場化テストに関心を寄せていた様子でございました。




細川くんの

利用者が、かつ提供する方もやったら疑念を持つ方があるかもしれない、だからそこは慎重にいかなきゃならぬ

というセリフは、窓口で証明書を発行する場合にも当てはまるはずだ。


とすると、乙号事務の入札で意見聴取したときに、 登記事項証明書の取得代行業者は、当然、門前払いを食っていなければならぬ。

でも、副大臣がスルーしちゃってるんだから、これはもうOK、民事局長の答弁を副大臣が上書きしたと見るしかないでしょ。


こうなれば、「司法書士」と「登記情報提供事業者」とを兼業して何が悪いのか、というわけであります。

いまだに守秘義務違反に罰則もつけてないのに、「 兼業者は信用できないから、除外する」という論理がおかしいのであります。

実際、窓口業務の入札実施要項を読んでも、司法書士等の実務経験者の配置人数は指定してあっても、実務経験者の兼業を禁止する規定はないようだ。



ゆえに、仮に兼業司法書士がいたとしても、市場化テスト法の欠格条項には触れない、ということですよね。


第十条
  次の各号のいずれかに該当する者は、官民競争入札に参加することができない。

十  その者又はその者の親会社等が他の業務又は活動を行っている場合において、これらの者が当該他の業務又は活動を行うことによって 官民競争入札対象公共サービスの公正な実施又は当該官民競争入札対象公共サービスに対する国民の信頼の確保に支障を及ぼすおそれがある者




だって、窓口に兼業司法書士がいても「国民の信頼の確保に支障」がないんだったら、経営者にいても同じことでしょ。

そして、窓口がよくて、インターネット経由だとダメ、という理由も成り立ちそうにないから、次の答弁は、現在では効力を持たない、ということでよろしいか?


○政務次官(山本有二君)
  そこで、司法書士会を指定法人にしたならばという御示唆でございますが、指定法人が登記情報提供業務以外の業務を行っているときは、その業務を行うことによって登記情報提供業務が不公正になるおそれがないものである必要がございますが、司法書士は報酬を得て登記申請手続の代理を行うことを業とし、職務上登記情報と密接な関係を有しますので、司法書士が構成員となっている司法書士会を指定法人とした場合には、業務遂行の公正につきまして外部の方に疑念を持たれるおそれがないとは言えないものと考えております。

  したがいまして、 司法書士会を指定法人とすることは適当でないと考えておるところでございます。








さらに、 「不公正」規定は、これまでと全く逆の意味を持つようになる。



市場化テストによって窓口業務の独占が崩れた結果、窓口もオンラインも「代わりがいない」民事法務協会という理由付けが通用しなくなったから。



第一条
  この法律は、登記情報を電気通信回線を使用して提供する制度を設けることにより、登記情報を より簡易かつ迅速に利用することができるようにし、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。





この登記情報提供サービスというのは、紙の登記情報より、便利にすることを目指した制度でありました。


そのためには、紙の手続の限界を超えて、限りなく安く、早く、簡単に情報取得できるようにしていく必要がある。


一方、登記情報全体の需要は限られているので、登記情報提供サービスが便利になり、利用者がこっちに流れてくれば、当然、紙の登記情報の需要が減る。


それは、国民にとっても、窓口業務委託費の低下というメリットをもたらすので、歓迎すべきことである。



しかし、反対側から見れば、窓口業務受託者の売上が減少することになる。


登記情報提供サービスの指定法人として、誠実であればあるほど、受託業者に不利になる構図になっている。


つまり、 登記情報提供サービス市場と、窓口業務市場とで、利益相反が起きる


簡単に言えば、登記情報提供サービスの指定法人と、窓口業務の受託業者とを兼ねるなら、どちらかを優先させなければならない、ということだ。







ところで、民事法務協会の場合、登記情報提供サービスについて、随意契約により独占的な立場があり、しかも、かかった費用をそのまま利用者に転嫁できる仕組みになっている。



○細川政府参考人
  その指定法人が、場所を借り、あるいはクレジットの手数料を払うというようなことがございますし、職員の人件費等がございますので、これらの経費を合算し、通常の登記の手数料の算出と同じように、三年間の総経費を算出し、三年間の総利用件数を推定してそれで除して、出てきた答えが手数料になるということでございます。



そうすると、民事法務協会は、登記情報提供サービスの改善について努力しなくても費用を回収することができるだけでなく、努力しないほうが紙の登記情報市場を維持できるという、逆のインセンティブが働いてしまう。






なぜなら、窓口業務を落札できるかどうかは不明確でも、

(紙の登記情報市場)  ×  (落札できる確率)  =  追加的な売上

ということになり、紙市場を縮小させる理由がないからである。




この状況を、細川くんならなんと表現するだろうか?


○政府参考人(細川清君)
  ただいま政務次官の御答弁された趣旨は、現実に不正なことが起こる可能性があるといった趣旨ではないことはもちろんでございまして、外部の方から見て、そういう制度の利用者の大部分が司法書士さんなので、利用者が、かつ提供する方もやったら疑念を持つ方があるかもしれない、だからそこは慎重にいかなきゃならぬという御趣旨であったように聞きました。




したがって、民事法務協会が窓口業務の入札に参加するならば、登記情報提供サービスの改善について利益相反が生じ、その業務を行うことによって登記情報提供業務が不公正になるおそれがある。








役員又は職員の構成が登記情報提供業務の公正な遂行に支障を及ぼすおそれがない



第三条
  法務大臣は、次に掲げる要件を備える者を、その者の同意を得て、全国に一を限って、次条第一項に規定する業務(以下「登記情報提供業務」という。)を行う者として指定することができる。

二  民法第三十四条の規定により設立された法人であって、 その役員又は職員の構成が登記情報提供業務の公正な遂行に支障を及ぼすおそれがないものであること。




この規定は、実務経験者がいないようなところは認めない、という門前払いルールだったんだけど、なにせ随意契約なもんだから、どのくらいいればいいんですか、という基準が何もなかった。

最初から民事法務協会に決まっていたので、法務省側でも考えてないだろうね。

ところが、それが市場化テストによって、窓口業務の必要人数として出たのであります。



第33条の2
2   特定業務を実施する公共サービス実施民間事業者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する者でなければならない。

一   その人的構成に照らして、特定業務を適正かつ確実に実施することができる知識及び能力を有していること。




「実務経験者」又は「実務経験者同等者」を,登記所ごとに,「最低必要人数」を配置すること。

東京・法人登記部門 4名
東京・港,東京・新宿,東京・渋谷,さいたま・本局,大阪・不動産登記部門,大阪・法人登記部門,大阪・北,大阪・東大阪,福岡・本局,仙台・本局 2名
上記以外の登記所 1名



オンラインの場合は、対面式の人海戦術が不要というだけでなく、ユーザーインターフェイスの改善や、Q&Aの充実により、実務経験者の役割自体を逓減させていくことができる。

つまり、申請件数や問い合わせ件数で窓口業務と比較した場合、さらに少なくなる。

具体的な数字は不明なままでも、提供サービス側の要件がチラッと見えてしまったのであります。







情報提供契約の約款



市場化テストとは関係ないけど、成立時の審議ではわからないので、こっちにまとめる。



約款っていうのは、契約書のこと。

電話の加入契約とか、電車の乗車契約とか、相手ごとに個別の契約書なんか作ってられないような場合に、まとめて同じ契約書の内容で契約しちまおうってときに用いられるのが、「約款」である。


契約ってのは本来、お互いの合意に基づいて成立するものなので、こういう立場の強い者が一方的な契約書を作って使うと、弱い方に不利になるから、たいてい行政機関がお墨付きを出してから使われるし、この登記情報提供サービスの約款も、そうである。



第5条
  1. 指定法人は、 業務規程を定め、法務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

  2. 業務規程には、登記情報提供業務の実施方法、登記情報提供業務に関する料金その他の法務省令で定める事項を定めておかなければならない

  3. 法務大臣は、第1項の認可をした業務規程が登記情報提供業務の適確かつ円滑な実施上不適当となったと認めるときは、指定法人に対し、その業務規程を変更すべきことを命ずることができる



第4条

 法第5条第2項の法務省令で定める事項は、次のとおりとする。

  四   情報提供契約の約款





しかし、大臣が認可したとは言え、天下り団体が作ったのだから、行政機関によるチェック自体を疑ってかかる必要がある。

というか、ぜひ疑おう。



実にたのしい。




第2条
  1. 乙は, この契約に基づく権利を第三者に譲渡することはできません







ふつーの規定に見えるでしょ?


しかし、この業界では、 「怪しくないのが逆に怪しい」というのが公式であります。


そこらへんに転がっているような怪しさでは、すぐに議員くんたちに見付けられ、吊るし上げられてしまうので、枯れ葉や枯れ枝に擬態しているような怪しさを探さなければならない。



じゃあ、この規定の、どのへんが怪しいのか。


普通に読めば、申し込んだ人のところにデータを送るだけで、第三者のところへデータを送ってくれと言われてもやりませんよ、という意味にしか取れないですね。




しかし、まさかとは思いますけど、 他人から依頼を受けて情報を調べるのが約款違反だとか、いいませんよね?

そんなアホなこと、あるわけがない。



ねぇ。





○政府参考人(細川清君)

  ですから、基本的には先ほど言ったような 謄抄本をビジネスとして請求するというのはやはり司法書士法に抵触するというふうに私どもは考えているわけでございます。
本件の法律でやる場合も、手段がそういう 指定法人を介在して請求しているだけで、結果的には司法書士の業務である登記所に行って閲覧するということ、この方法をかりてやっているということになりますから、同様な解釈をすべきではないかというふうに考えているわけでございます。









第9条
 甲は,乙がこの契約に基づき 提供を受けた登記情報を使用することによって生じたいかなる損害についても,責任を負いません






定番ですな。

ノークレーム・ノーリターンでお願いしますってやつ。




しかしさ、仮にも自分たちで閲覧と同じだって言ってるんだから、「提供を受けた登記情報」が間違っていたら、それは法務局に置いてある登記簿が間違っていたってことと同じになるんじゃないのか?




法的証明力

当サービスで提供する登記情報は利用者が請求した時点において登記所が保有する登記情報と同じ情報です。しかし,当サービスは「閲覧」と同等のサービスであり,登記事項証明書とは異なり,証明文や公印等は付加されず,法的な証明力はありません。



控訴人はわが国の登記にいわゆる公信力のないことを理由にこれを否定するけれども、登記に公信力はなくても登記記載事項は一応真正なものとの推定を受けしたがつてこれを信頼することもまた無過失と推定されるのであつて、不動産の取引の実情も登記簿を閲覧しその記載を信頼してなされるのが普通であることを考えると、控訴人の右主張は採用できない。




だから、もともと登記記録が間違っていたなら、法務省が責任を負い、送信途中で改変されていたら、指定法人が責任を負うしかないでしょ。


なのに、賠償責任を負いませんって、なにそれ?

暗号化してないの?

公示の意味わかってます?

まさか、証明文がついてないから責任を負わない、みたいな、ふざけたこと考えてませんよね。





そして、「閲覧」と同じということは、国家賠償法でいうところの「公権力の行使」であり、指定法人は「公務員」ということになるんだろうね。



第1条
  国又は公共団体の 公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。


都道府県による3号措置に基づき社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所した児童に対する当該施設の職員等による養育監護行為は,都道府県の公権力の行使に当たる公務員の職務行為と解するのが相当である



つまり、なにかな、この規定は、民事法務協会は利用者との間では賠償責任を負わないので、もし損害が発生したときは、 直接、国家賠償請求をしてくださいってことを確認的に宣言しているだけなのかな?

そういう意味としてしか、とれないよね。



だったらさ、自分たちは責任を負わないっじゃなくてさ、

損害が発生した場合は、国家賠償請求をすることができます。

って、説明するのが約款を作成する側の義務なんじゃないの?





第82条

  1. 行政庁は、 不服申立てをすることができる処分をする場合には、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければならないただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない。



第46条

  1. 行政庁は、取消訴訟を提起することができる処分又は裁決をする場合には、当該処分又は裁決の相手方に対し、次に掲げる事項を書面で教示しなければならない
    ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない。

    1. 当該処分又は裁決に係る取消訴訟の被告とすべき者
    2. 当該処分又は裁決に係る取消訴訟の出訴期間
    3. 法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、その旨






つまり、民事法務協会は、手続を処理するプロセスでは、無駄に手間のかかる行政機関のふりをする一方で、自分たちにとって都合の悪いことを説明する場面では、行政機関の義務を免れ、民間団体としての利益を追求する、 ダブル・スタンダードを採っている。


この態度は、「唯一の指定法人」にふさわしいものだとは、思えないんだけどな。








第4条
  1. 登録利用者は,利用者識別番号等の使用及び管理について責任を負うものとします。
    甲は,登録利用者の利用者識別番号等を他人が不正使用したことにより登録利用者に生じた損害については,何ら責任を負いません。

    1. 登録利用者の利用者識別番号等を用いて行われた登記情報提供サービスの利用は,登録利用者が行ったものとみなし,登録利用者は,当該利用から生じた利用料金その他一切の債務を負担するものとします。






一つ確認しておきたいんだけどさ、

民事法務協会っていうのは、法務省の天下り団体であって、役員名簿には、学者とか元裁判官とか公証人とか、法律のプロがたくさんいらっしゃる。




そうそうたる肩書きが並んでいらっしゃる。


で、すばらしい肩書きのこの人たちは、この約款を読んでなんとも思わないのかね。

もちろん、法務大臣一党もだけど。

彼らは、こんな全部免責条項が通用すると思ってるのかな?



そして、さらに恐ろしいのは、民事法務協会の副会長という役職は、法務局幹部を退職して、一旦公証人に天下ったあとの、上がりポストなのだよ。

他の天下り役員もそうだけど。

この人たちは公証人時代に、こんな条項の入った公正証書を量産してきたのか?


たぶん、日本社会には、こういう不発弾みたいな遺産がたくさん埋まっているはずだ。



【論点】
いわゆる「なりすまし」が行われた場合、なりすまされた本人が責任を負う場合があるか。
  (2)なりすましによる行為の効力
      ①  本人と事業者との間の契約は成立するか
        ⅱ)  本人確認の方式について事前合意がある場合(継続的取引)
継続的取引の場合、通常、特定のIDやパスワードを使用することにより本人確認を行うこととするなど、本人確認の方式について事前に合意がなされている。この場合、事前に合意された方式を利用していれば、原則として本人に効果が帰属し、本人との間で契約は成立する。

しかし、 本人が消費者である場合には、なりすまされた本人の利益が信義則に反して一方的に害されるような内容の事前合意は無効となる(消費者契約法第10条)。

事前合意が無効とされる場合には、上記ⅰ)と同様に判断される。

( 事前合意が無効となる可能性がある例
ID・パスワードにより事業者が本人確認をしさえすれば、事業者に帰責性がある場合でも本人に効果が帰属するとする条項
・事業者からID・パスワードが漏えいした事案の場合





ちなみに、この準則がつくられたのは、平成14年から。

この「なりすまし」問題は、当初から取り上げられていた。







平成12年5月に成立した消費者契約法には、制定時から10条に (消費者の利益を一方的に害する条項の無効)の規定があって、現在でも内容は全く変わっていない。

そして、登記情報提供サービスが始まったのが、同年9月から。

あとからできた約款に、前からある法律が全然反映されていないって、ホントに大丈夫か、民事法務協会?



というか、この国の公証人の能力的に




第十条
民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、 消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。






第五条
1  指定法人は、 業務規程を定め、法務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

3   法務大臣は、第一項の認可をした業務規程が登記情報提供業務の適確かつ円滑な実施上不適当となったと認めるときは、指定法人に対し、その業務規程を変更すべきことを命ずることができる


○臼井国務大臣
  現在、民事法務協会というものは、登記、戸籍、供託等の民事法務制度に関しまして現に作業をいたしておるわけでございまして、そういったことからして、極めて私どもに対しては信頼性が高い、こういうことでございまして、そうしたことを勘案して民事法務協会というふうにいたしているのでございます。








IT環境の変化



登記情報提供サービスの仕組みは、こんな感じでした。


○日野委員
  それで、一般の人がこの登記情報にアプローチをするというときは、一般に、インターネット回線を使って、そして指定法人にこれこれを送ってくれということをやるわけですな。
そこのシステムも聞こうかと思ったけれども、これは通告しなかったからやめておきます。
指定法人に行くわけですが、この一つの流れ、請求者、つまり一般のお客さんですが、 お客さんの方から指定法人に対してこの請求をする、指定法人は専用線を使って登記情報システムの方から登記情報をもらって送り返す、この流れは間違いないですね。

○細川政府参考人
  御指摘のとおりでございまして、一般の利用者は指定法人まではインターネットの回線により、指定法人から登記所との間は専用回線でございます。





具体的には、こんなかんじ。


○政府参考人(細川清君)
  現在の登記のコンピューターの組織を申し上げますと、これは原則として各登記所にコンピューターを置いて独立的に処理しているんですが、各地方法務局単位でこれを全部統括するバックアップセンターがございまして、そこに回線がつながっていて、そしてバックアップをしているわけです。
そのさらに上部に、法務省民事局に登記情報センターというのがございまして、ここで、全国の情報が当然集まってきて、かつ全国のバックアップをしているという形になっております。

  そういうわけでございますので、今回の法案では、指定法人から各地方法務局にある バックアップセンターのコンピューターに回線をつないでいただきましてそこから各登記所にアクセスする、そういう仕組みを考えているわけでございます。





これは、バックアップセンターに接続するけれども、データ自体は、その下の登記所から直接持ってくる、ということらしい。


○法務省

そうではありません。登記情報システムというのは3階層になっていますから、最終的には同じデータを3箇所で保存するのですが、リアルタイムでいくと、これは登記所のデータベースにアクセスしないと、更新された情報が取れません。 ですから、いわゆる3階層の一番下の登記所の情報を提供するということになります。

法律上の登記情報というのは、登記所にある情報のことで、今回の登記情報提供制度で提供するのは、あくまでも原本の情報を提供するということで、登記所の情報をオンラインにするということです。





そして、民事法務協会と随意契約する根拠は、指定法人が証明の元になっている登記記録があるサーバーに直接アクセスできるので、 信用できない業者ではあぶないぞ、というところでありました。


○細川政府参考人
  先ほど来申し上げておりますことは、指定法人の中に職員がおりますので、そこはコンピューターにアクセスできるわけですから、指定法人が二つ、三つできてきますとその人数が二倍、三倍になるわけですから、そこで何か不心得者がセキュリティー上の問題を起こす可能性が高くなる、だから一つの方がいいんだということを先ほど来申し上げているわけです。

  ですから、 ほかにできるところがあるのではないかという御指摘でございますが、それはそれで、ないことはないだろうというふうには思っていますが、ただ、これは法務大臣が全面的に監督するものでございますので、法務省の所管の公益法人でなければならないということになりますので、そういたしますと候補はおのずから絞られてくるということでございます。



このあたりの事情は、当時の議員くんたちでも指摘できたことなんだけど、話が早いので、こちらでまとめて扱うことにする。



ところで、バスケットボールの世界には  "ミス・ディレクション" という技があるそうで、

見られたくないところを相手に見せないために、相手の注意を別のところに振り向けるテクニック

ということらしい。


ここで法務省が使った技術がまさにそれで、議員くんたちの注意を「民事法務協会」に引きつけておいて、肝心のところを見事に隠したのであります。

議員くんの側からすれば、まんまと騙された。



法務省の言い分は、こんな具合でした。

  1.セキュリティの確保が必要
  2.指定法人は一つだけ
  3.それは民事法務協会


まぁ、参議院で


  1. 登記情報提供業務を行う指定法人の数については、今後の技術の進歩や経済情勢の推移等を踏まえつつ、登記情報の安全性の確保、料金の問題等の視点から総合的に検討を進め、必要な場合には、見直しを行うこと


という附帯決議がついたけど、こんなのは想定の範囲内のはずだ。




そんな法務省が本当に触られたくなかったのは、

1.セキュリティの確保

の部分だったんだと思う。



ここを否定されてしまうと、指定法人を一つに限定するのも、それを民事法務協会にするのも、だめになっちゃう。

だから、まさか議員くんたちもセキュリティの重要性は否定しないよね、という雰囲気を作っておいて、それ以下の部分を好きなように攻撃させた。

だって、そんなとこ攻撃しても水掛け論になるだけだから、致命傷にはならないのだよ。


用意した撒き餌に群がる議員くんたちを見て、法務省関係者は、さぞいい気分だったことだろう。




じゃあ、議員くんたちはどうすればよかったのかといえば、正論はこうである。


どんな法人であっても、登記記録を保存してある登記情報システムへのアクセスを許すべきではない。




言い換えれば、セキュリティを強調する法務省側の主張に乗っかって、さらにセキュリティレベルを上げることを要求すべきだったのである。


もともと、登記情報システムのサーバーは、その目的の重要性から、耐久性とセキュリティを高めた、超高コストなシロモノのはずだ。


そんなものに、証明書の発行請求があったからと言って、毎回、データの送信要求をするのは、無駄な負荷をかけ、さらなる高コスト化を招くことになる。

おそらく、窓口の証明書についても、同じルートで情報が送信されていただろうけど、そんなコストやリスクは、最初から排除しなければならない。

この仕様は、登記情報提供サービスの受託者が、窓口業務を独占していた民事法務協会になることを前提としたシステム設計なんだろうね。


具体的にどうすればよいかと言えば、甲号(登記するほう)のサーバーと、乙号(証明書を発行するほう)のサーバーとの間に、中耐久・中セキュリティの読み出し専用中間サーバーを置いて、甲号で変更のあったデータだけ、直ちに中間サーバーに反映させる、という仕組みが必要だと思う。





こうすれば、本丸である登記業務用サーバーのセキュリティを確保しつつ、中間サーバーにアクセスする指定法人の数を増やせるだろうし、中間サーバーは複数あってもいいから、壊れたときのバックアップもできる。



そして、指定法人が複数になれば、

○政務次官(山本有二君)
  そこで、司法書士会を指定法人にしたならばという御示唆でございますが、指定法人が登記情報提供業務以外の業務を行っているときは、その業務を行うことによって登記情報提供業務が不公正になるおそれがないものである必要がございますが、司法書士は報酬を得て登記申請手続の代理を行うことを業とし、職務上登記情報と密接な関係を有しますので、司法書士が構成員となっている司法書士会を指定法人とした場合には、業務遂行の公正につきまして外部の方に疑念を持たれるおそれがないとは言えないものと考えております。

  したがいまして、 司法書士会を指定法人とすることは適当でないと考えておるところでございます。



業務遂行に疑念があると思うなら、その指定法人は利用されないだけであるから、こんな、こじつけじみた理由で排除する必要もなくなる。


天下り団体に気を取られた議員くんたちが、制度以前のシステム設計に注意を向けなかった時点で、既に議論の行方は決まっていたのだよ。








以下では、歴史のifとして、他の指定法人があった場合の選択肢について考えてみよう。


Amazon


kindle本の販売と、登記情報提供サービスとを比較してみようと思ったのであるが、よくよく考えてみると、似ているようで全く共通点がないことに気がついた。

kindleはAmazonのサーバーに保管したデータを配信し、徴収した料金の中から著作権料を支払う。

これに対し、登記情報提供サービスは、利用者からの要求に基づいて、法務省のサーバーからデータを呼出して配信し、自分のところの費用を上乗せした料金を徴収する。

kindleは価格戦略が柔軟であり、大量の無料本がある一方、原価とは無関係な、紙の本とほぼ同額の商品も多い。

他方、登記情報提供サービスは、法律で均一価格が義務付けられている。

Amazonは、独占的な立場を利益の最大化に利用するが、天下り団体は、独占的な立場を人件費を賄うことに利用する。


違うと言えばあまりに違うんだけど、それでも、仮にAmazonが参入すれば、 自前の技術を使って、法務省の想定を超えるサービスを提供できると思うのだよ。



まず、

○臼井国務大臣
  なお、指定法人の利用料金は、登記情報の提供に要する実費用を利用見込み件数で除して算出されるということになっているわけでありますけれども、複数の法人を指定する場合には、 各法人につき登記情報提供の経費を要する上に、各法人の利用見込み件数は一つの法人を指定する場合よりも少なくなるわけでございまして、かえって利用料金が高くなる。



臼井くんが説明する「 登記情報提供の経費」というやつは、新規に事業を立ち上げた場合であり、既存の情報配信事業者がサービスの一つとして行う場合は考えていない。

まぁ、民事法務協会が前提だから、当然なんだけどね。

売上高1兆円弱のAmazonのような超巨大販売サイトが、1億程度のアクセスをさばくだけのサービスを追加するのに、どのくらいの費用を必要とするのかな。



とにかく、自前の技術者を揃えているAmazonが、年5億~7億円の委託費用を支払っている民事法務協会より安くできることは、間違いない。


ゆえに、仮にAmazonと民事法務協会との間で競争が起こったとしても、価格面で民事法務協会に勝ち目はないし、四六時中、利用者の行動に目を光らせているAmazonと、サービス内容で競争しても、やっぱり勝ち目はない。

そうなると、結局、Amazonの独占になり、Amazonの利益を最大化する価格設定がされてしまう。

そういうわけで、仮にAmazonを指定法人としたとしても、さらに別の、業務の基盤が異なる競争者が必要になる。



今の手数料以下を義務付ければ、利用者にとって損はない、とか思ってますか?

そんなあなたは、たぶん、この規定を知らないはずだ。


(提供する情報の範囲)
第一条
  電気通信回線による登記情報の提供に関する法律第二条第一項 ただし書の法務省令で定めるものは、次の各号に掲げるものとする。

一   不動産の登記簿に記録されている登記情報のうち、請求に係る情報量が一メガバイトを超えるもの
二   商業登記簿、法人の登記簿、投資事業有限責任組合契約登記簿、有限責任事業組合契約登記簿、限定責任信託登記簿又は動産譲渡登記事項概要ファイル若しくは債権譲渡登記事項概要ファイルに記録されている登記情報のうち、請求に係る情報量が三メガバイトを超えるもの


現行規定では、不動産は1MB、法人は3MBまでのものしか提供されない。

なぜなのか。



これについては、民事法務協会理事(もちろん天下り)が答えている。

さらに、インターネットでは一定量以上の情報量の登記簿、具体的には登記簿の甲区と乙区の登記事項数が200を超えるもの、または情報量が100キロバイトを超えるものなどについては、閲覧サービスの対象から除外しています。こうした情報量が膨大なものは、利用者のパソコンへ表示されるまでに相当時間がかかるだけでなく、ほかの利用者へも影響を及ぼすなど、サービスの円滑な運営を阻害するおそれがあるためです



はい。サービス開始当初は、100KBが上限でした。

現在は、1MBが上限です。



その程度で

サービスの円滑な運営を阻害するおそれがある

って、どんな通信速度だよ。



ISDNからADSLに変わっただけなの?



ちなみに、Amazonの無料Kindle本で、漫画雑誌部門ベストセラーを並べてみると、こんなかんじ。

順位 雑誌名 サイズ
1 グランドジャンプ 【無料連載版】 108MB
2 本当にあった笑える話【無料連載版】 64MB
3 【無料】ダ・ヴィンチ お試し版  2017年1月号 98MB



現在のネット社会では、アングラ世界でなくても100MBクラスのファイルなんてザラにある。

ダウンロードサイトやストリーミングサイトではそういうものを日常的に送信しているのに、1MBを上限にして 技術的能力を有するって、どんな基準なの?



このサイズを超えるファイルがどれくらいあるとかじゃなくて、超えてしまうとサービスの枠に載ってこないことが問題なのよ。


この程度のサイズも送れないなら、はじめから1MB超えは登記できないようにしてしまわないと提供サービスの意味がない。


第3条
  法務大臣は、次に掲げる要件を備える者を、その者の同意を得て、 全国に一を限って、次条第一項に規定する業務(以下「登記情報提供業務」という。)を行う者として指定することができる。

  一  登記情報提供業務を適確かつ円滑に行うのに必要な経理的基礎及び 技術的能力を有する者であること。













Yahoo!  JAPAN


Amazonが買い物サイトに特化しているのに対し、多様なサービスを展開するYahooは登記情報提供サービスとのシナジーを追求できる強みがある。

たとえば、不動産登記情報を、不動産売買や地図情報とセットにしたり、会社登記情報を登記申請書作成サービスとセットにしたり(後述)することで、登記情報提供サービスを利用しやすくするだけでなく、Yahoo自身も付加的なサービスから利益を得られる。



制定時の基準では「業務遂行の公正につきまして外部の方に疑念を持たれるおそれがないとは言えない」かもしれないが、もはや市場化テストの時代、しかも指定法人併存だって可能なわけで、疑念を持つ人は使わなければいいし、サービスの向上を優先させなければならない。



第1条
  この法律は、国の行政機関等又は地方公共団体が自ら実施する公共サービスに関し、その実施を民間が担うことができるものは民間にゆだねる観点から、これを見直し、 民間事業者の創意と工夫が反映されることが期待される一体の業務を選定して官民競争入札又は民間競争入札に付することにより、公共サービスの質の維持向上及び経費の削減を図る改革を実施するため、その基本理念、公共サービス改革基本方針の策定、官民競争入札及び民間競争入札の手続、落札した民間事業者が公共サービスを実施するために必要な措置、官民競争入札等監理委員会の設置その他必要な事項を定めるものとする。



Yahooを指定法人にできるなら、その集客力はアクセスの容易さを格段に高めるだろう。

2009年の数字でも1日19億アクセス( Wikipedia)、これは、たぶん政府全体より多いんだろうね?

片や、 民事法務協会は、累計25万弱。

この数字の多寡は、新規顧客獲得に際して大きな違いになるのだよ。




  競争なんて勝手にやらせとけ?

そうじゃない。


いわば国に代わってその業務を行うものである以上(首相官邸にあったエクセルファイル)」、国民には登記の中身を知ってもらわなきゃ困るし、そのためには料金を払って登記情報を確認してもらわなきゃならない。




民事局長の小川くんも、国会で答弁している。



○政府参考人(小川秀樹君)
  御指摘のとおり、相続登記が行われませんと、相続した不動産をすぐに売却することができないなどの不利益、相続人自身がデメリットを被るわけでございます。また、最近はいわゆる所有者不明土地問題や空き家問題が取り上げられる中で、これらの問題の要因の一つとして相続登記が未了のまま放置されていることが指摘されており、法務省としても、これらの問題の拡大を防ぐためには相続登記を促進することが重要であると認識しております。

  本年六月二日に閣議決定されました経済財政運営と改革の基本方針二〇一六、日本再興戦略二〇一六及びニッポン一億総活躍プランにおきましても 相続登記の促進に取り組むことが明記され、政府の方針として示されているところでございます。

  そこで、このような政府方針なども踏まえまして、 法務省といたしましても様々な観点から相続登記の促進に取り組んでおります

  まず、国民の間に相続登記を行う意識が醸成されることが重要であることから、登記手続を行うことの意味やメリットについて理解が進むよう、昨年の二月から 相続登記の促進に関する記事をホームページに掲載して広報を開始いたしました
また、相続登記を行う意識を国民の間により一層広く浸透させるため、登記の専門家団体と連携の上、これは本年五月からですが、 相続登記促進のための広報用リーフレットを作成し、配布を行っているところでございます




しかし、役所のホームページに書こうが、パンフレットを配ろうが、政府がやる情報拡散量なんて、ネット社会の影響力に比べれば無に等しい。

そんなところに何億円かけても、Yahooのトップニュースには絶対かなわない。



だから、彼らを指定法人として情報提供をさせ、他の法人との競争に勝つための宣伝活動を促したほうが効果的である。









民事法務協会に独占させておくことは政府の他の業務を非効率にするから、"民間の活力"を利用しなければならないのである。







登記申請書作成サービス



以前、インターネット上で会社登記の申請書作成(紙)を自動化して営業していた会社がいくつかあったが、現在のところ、検索してもヒットしなくなってしまった。

そのまま司法書士に依頼したほうが安いのではないかと思うような料金だった気がする。

値段が高すぎて客がつかなかったのかもしれないが、ひょっとしたら司法書士法に引っかかったのかもしれない。



第3条
  司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。

二   法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録を作成すること

第七十三条
司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。




そういうわけで、唯一見つかったのが、 会社設立freee(無料)というサイト。


会計ソフトを作っている会社が顧客開拓のためにやっているらしい。



まぁ、楽天を筆頭にしたIT企業連合が立ち上げた 「新経済連盟」の会員みたいだし、
"会社設立freeeは2015年の グッドデザイン賞「未来づくりデザイン賞」を受賞しました"
というサービスを潰すわけに行かないだろうね。

だって、グッドデザイン賞を出している 公益財団法人日本デザイン振興会は、経済産業省の天下り先だもん。

常勤理事3人のうち、理事長は元・経済産業省大臣官房審議官(?)、事務局長は元・九州経済産業局国際部部長(?)らしい。


だから、他のサービスが司法書士法に引っかかるとするなら、司法書士法人がやっているわけでもない、このサービスも潰さないと、筋が通らない。



もっとも、

「会社をつくることはなんとなく面倒」というイメージが、起業の機会を奪っているとすれば、大きな社会的損失となる。freeeは起業に伴うストレスを低減することで、多くの人に起業するという選択の間口を広げている。結果として、本業であるクラウド会計ソフトの利用者を増やすことにもつながり、事業としてもよくデザインされている点が評価につながった。さらに多くの起業機会をつくることを期待している。

という審査員の評価を正面から否定できるなら、だけどね。


そういうわけで、民間企業がインターネット上のサービスとして、登記申請書の作成を行っても、司法書士法に引っかからない、ということでよろしいか?




法律用語で「業として」は「有料・無料を問わない」という意味のはず



であれば、登記情報提供サービスの指定法人が同じことをやっても司法書士法には引っかからないし、そのほうが「 登記情報をより簡易かつ迅速に利用することができるようにし」たといえるんじゃないのか。

第1条
  この法律は、登記情報を電気通信回線を使用して提供する制度を設けることにより、登記情報を より簡易かつ迅速に利用することができるようにし、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。



だって、それは会社設立のfreeeがグッドデザイン賞を受賞した理由とそのまま重なっているんだから。

指定法人がこのサービスを始めた暁には、ぜひ彼らにもグッドデザイン賞を与えてほしい。

「会社をつくることはなんとなく面倒」というイメージが、起業の機会を奪っているとすれば、大きな社会的損失となる。freeeは起業に伴うストレスを低減することで、多くの人に起業するという選択の間口を広げている。結果として、本業であるクラウド会計ソフトの利用者を増やすことにもつながり、事業としてもよくデザインされている点が評価につながった。さらに多くの起業機会をつくることを期待している。



登記手続コストは、低いほうがいいに決まってるじゃん。

それは零細企業が大半を占める民間部門だけでなく、政府にとってもそんな後ろ向きなコストを掛けるより、運転資金として経済活動を活発にしてもらったほうが遥かにいい。

それが規制緩和じゃなかったのか?


もっとも、このfreeeにしても本業の会計ソフトの利用者を増やすなら、設立に限らず会社の登記全般を扱ったほうが有利なはずだ。

既存の会社のほうが会計ソフトの需要があるだろうし、役員変更まで扱えば会社と継続的な関係を結ぶことができる。


しかし、やろうと思っても、ネックになるのが登記情報なのだと思う。

役員変更をしようとすれば、現在の役員の名前や資本金、機関設計などを入力させる必要があるだけでなく、既存の登記記録と矛盾がないようにしなければならない。

たとえば、就任日より前に辞任することはありえない。

役員変更まで、誰でも簡単に使える自動化をしようとすれば、登記情報がどうしても必要になるのだよ。

かといって、それだけのために登記情報提供サービスを登録させても、利用者拡大にはつながらない。コストに見合わない。

そういうわけで、freeeは設立に限ってサービスを提供してるんじゃないのかな、と思う。


ならば、指定法人が自分でサービスを立ち上げるなり、freeeのような会社を買収や提携で取り込むなりして、手続を一体化するのがベストだと思う。


申請人側のコストを削減するだけでなく、間違いが減ることによって行政側のコストも削減できるんだから。








追加資料



名称 公益財団法人日本デザイン振興会
天下り 理事長:元経済産業省大臣官房審議官?
事務局長:元九州経済産業局国際部部長?

根拠法
業務 中小企業経営支援等対策委託費(ものづくり企業(戦略的基盤技術高度化支援事業等)の新たなビジネスの創出や販路拡大につなげることを目的に、異分野の企業や販路を有する川下企業などとの出会いの場を提供するため、講演や製品展示、交流会などフォーラム事業を行う。)
金額 876万7500円(認定日:2012年01月01日)









過疎化の進展




この部分は、井上ひさしの小説「吉里吉里人」を読んだ感想文みたいなものである。


ちなみに、吉里吉里人はこういうお話。


東北地方の一寒村が日本政府に愛想を尽かし、突如「吉里吉里国」を名乗り独立を宣言する。当然日本政府は反発、これを阻止すべく策を講じるが吉里吉里側は食料やエネルギーの自給自足で足元を固め、高度な医学(当時日本で認められていなかった脳死による臓器移植を含む)や独自の金本位制、タックス・ヘイヴンといった切り札を世界各国にアピールすることで存続をはかる。その攻防を含む1日半の出来事を、全28章にわたって描写している。



日本政治のキーワードとして「地方の自立」とかなんとかはよく聞くけど、地方がほんとに自立したらどうなるのかをまじめに考えたのが、この小説である。

書かれたのは、1980年頃。

おそらく、当時も、地方の苦悩みたいなものは、今と変わらなかったんだろうね。



最近のニュースにも、旧国鉄が自治体に無理難題をふっかけていたという記事があった。


【音威子府】JR宗谷線の無人駅、筬島(おさしま)駅(上川管内音威子府(おといねっぷ)村)をめぐり、JR北海道が駅存続の前提として「JRが実施してきたホーム修繕費年100万~200万円を負担してほしい」と村に求めたが、実際にはこうした修繕は行われておらず、JR側が要求を撤回していたことが25日分かった。JRは「他の駅の資料と見間違えた」などと釈明したが、佐近勝村長は「こういう乱暴なやり方が続くと信頼関係がなくなる」と反発している。

  JRは、筬島駅を含む無人駅18カ所を廃止する意向だが、自治体側が維持管理して費用負担する場合は、存続を容認する考え。音威子府村は、筬島駅存続の方向で検討している。JR側は9月27日に除雪などの維持費は年76万円と提示。10月14日になって、毎年春と秋に行うホームの修繕費が年100万~200万円掛かるとして「維持費と合わせて年間200万~300万円が必要」と説明した。



この手の話は、法務局にもある。


吉里吉里人の、さらに10年くらい前のことである。



○横路委員
  たとえば、一つの例だけお話ししますけれども、後志支庁管内に蘭越という町があって、これは対象になっているようなんです、四十八年度で。
ここは、たとえば四十四年の場合、 札幌法務局長のほうから、ここは職員住宅や何かがだいぶ古くなってきたのですが、そこで職員住宅と書類を入れておく耐火書庫、これをおまえら建てろ、町村の負担で建てなければこれは廃止してしまうぞ、こう四十四年に札幌法務局長に言われて、貧しい財政の中から二百万円以上の予算を計上して、職員のために職員住宅と耐火書庫を建てて、そしてなおかつ冬になると、皆さんのほうから支給される石炭は少ないものだから、石炭まで与えてやって、そして何とかそこにいでもらおう、こういうところが北海道の中にたくさんあるのですよ、皆さんのほうから言われて。
そういうことでおどかざれれば、しかたがないから町村のほうで、じゃ職員のために住宅も建てましょう、耐火書庫もつくりましょう、冬なら石炭も渡しましょう、こう言って、町村のほうはともかくいてもらいたいものだから、一生懸命皆さん方の言うことをやってきたわけです。
そして今度はこの答申に基づいていきなりでしょう。
これでは町村は納得するはずないですよ。
そういう経過があるのです。
全体の中で、だから、ここはこうです、ここはこうですというぐあいに皆さん方説得されるのなら、そういうものをみんなきちんとやらないと、町村はなかなか理解できないですよ。
この間ですけれども、 つい四、五年前まで、そうやってわざわざ町議会では予算を計上して住宅までつくって、今度は廃止だ、こういうのですから、みんなおこりだすわけですね



○山田(正)委員
     まあ、いずれにしても、もう一つ豊玉の法務局のことに関しては、実は当時、昭和四十八年か四十九年ごろの町長の手紙でありますが、斎藤さんという町長です。
そのころ法務局を廃止するという話があった
それで、町長さんは大変困って、長崎法務局あるいは福岡まで行って何度も話し合った結果、法務局の方に土地を提供してもらったら法務局は新しく建物をつくってそこで何とか存続させることをいたしましょうという約束をいただいた。
それで、豊玉町長さんは二百坪の土地を法務局に提供した。
私も行ってまいりましたが、法務局はその上に立派な二階建ての鉄筋コンクリートの建物をつくられた
そして、これでもう大丈夫ですよと豊玉町民の皆様にそういう話をなさった。
ところが、それから今、今度豊玉町民に対して一方的に法務局を廃止すると

  これは、いわば国の機関とはいえ、二百坪の土地を町に提供させて、それでいてもう廃止します、これはまさに法務省は、いわゆる町民をだましているではありませんか。
これはどういうことなのか。
こんなこと、あってはならないことを法務省たるものがやっている。



吉里吉里人は、こういう社会を元にした小説である。


「それをなんだべぁお前様方は、米ば作らねで野菜拵ろ。野菜はやめで牛ば飼え。牛もうまく行がねようなら都会さ出稼さ出張って来。言う事くるくるくるくる変ってばがり居る。難儀するなァ俺達百姓でねが?お前様方の国益ば立てて居だら俺達ァそのうぢ乞食よ、褌も買えなぐなんべ。俺ァ無学な百姓爺だども、ド・ゴールづうどごがの大統領が『国家には感情がない、あるのは利益だけである』とくっ喋べったごどがあるづのば耳さしたごどがある。つまり国益づものさは〈勘定〉はあっとも〈感情〉はねえわけだべな。だども俺達は人間、感情がある。人間らすい感情さ従って、これからおらだは米ば作る。自分で必要だと思うごとを自分で為るごどにした……」
吉里吉里人(p88)








地方の苦悩は、現在も続く。


法務局の統廃合によって、登記事項証明書や会社の印鑑証明書の取得に時間がかかり、法務省側は合理化できたけど、過疎地の住民にとっては不合理な非合理化が進んでしまった。


○福島瑞穂君
  私は、これは何のためのコンピューター化か、あるいはだれが利便を得るのかと考えたときに、恐らく企業、不動産会社などがいながらにしてパソコンを打つことによってその不動産に関する情報を入手できるというメリットがあると思います。
一般の人にとってはどうか。
これはパソコンからの画面では証明書として使えないので、実際に法務局に行かないといけないわけですよね。
ただし、法務局は逆に統廃合がどんどん進んでいます。
そうしますと一般の、一生に一通とるかどうかなんという人は、 法務局の統廃合でなかなか遠くなって、半日かかる、一日かかる状態
むしろ不動産会社、一般の企業はパソコンを打つだけで不動産状況をぱぱぱっと理解できる。
そうしますと、実は一般の人にとって非常に統廃合の結果不便になるという面もあると思うんですが、この法務局の統廃合についてお考えをお聞かせください。



だから、自治体側は、証明書の発行を民間にやらせるくらいなら、自治体でもできるようにしろ、と要求する。

まぁ、もっともな意見だと思う。


岡山地方法務局新見支局の廃止統合に伴い、各種証明書の交付申請について、本市利用者の利便性が大きく損なわれ、本市利用者の時間的経済的負担が増加している
また、法務局庁舎外の市役所庁舎などで、登記に関する証明書を取得することができる法務局窓口としての「法務局証明サービスセンター」を設置し、“民間委託”により、各種証明書交付事務を行っている自治体もあるが、本市で同様の事務を“直接”行うことは、法により制限されている。
本市が直接、各種証明書の交付を行うことにより、法務局支局の廃止統合前の新見地域での交付が可能となり、利用者の時間的経済的負担が大幅に改善される
現在、法務省との協議で、「受託事業者(民間事業者)が地方公共団体と協力して運営する手法として、受託事業者が創意工夫により、委託契約で求められている場所以外の場所で当該交付事務を行うという方法」を提案された。
しかし、この方法では機器の設置及びその運用に係る経費を本市が負担する必要があり、証明書等交付事務は法務省所管の事務であることから国の負担とすべきであるため承諾することが出来ないと回答している。
現状の法務局証明サービスセンターを本市に設置することに限らずそれ以外の交付方法(専用端末を設置せずに交付する等)の検討も合わせて要望する。




そして、このような要求は自治体だけでなく、経済界からも突きつけられている。

普通に考えりゃ、そうですわな。

経済は合理性で動いているんだから。


○森下部会長代理

今度は商工会のほうです。6ページの法務局の支所の窓口廃止で印鑑証明が非常に難しくなるというので、これは確かに大阪なんかでも非常に減っていて市内に出なければいけないみたいなところがあるので、わかります。
逆に個人の印鑑証明は全市町村かどうかわかりませんけれども、私がいる吹田市は 最近マイナンバーを活用してコンビニでとれるようになって非常に便利になったのです。
そのためだけにマイナンバーカードを取ったのですけれども、そういう方法というのは 法人も今、全部番号がついていますから仮に全国で13できるのか、市町村レベルだからできるのかわかりませんけれども、県単位でもしできるようになればかなり改善するのかなと思うので、具体的にそういう動きがあるかどうか、あるいはそのような変化というのが望ましいかどうかという点をお聞きしたいと思います。



「登記法の法律的整合性」と「法務局単体の部分最適化」を追求する法務省としては、政府方針に採用されるまでは、自分たちの権限を手放す気は全くないらしい。


奥の手というか最終手段というか、自治体側も、例の「特区」制度を利用して、自分たちで費用を出してでも、法務省側に証明書発行を迫ったものの、あえなく撃沈。


登記事項等証明書発行特区

現在、法務省において登記事項証明書並びに法人の印鑑証明書を交付する発行請求機の設置基準の策定がなされているが、仮に当該請求機の設置の基準に満たさない地域であっても、地方公共団体が費用の一部を負担することで発行請求機を設置できるようにする。
また、発行請求機による交付については、地方公共団体の職員が出来るようにする。




よくわからんのは、上の特区要求に対する回答で、法務省側は、

自治体が発行請求機の費用を負担することは、総務省において対応不可であるため実現は困難である。

と言っているのに、その上の新見市に対する回答では、

現在、法務省との協議で、「受託事業者(民間事業者)が地方公共団体と協力して運営する手法として、受託事業者が創意工夫により、委託契約で求められている場所以外の場所で当該交付事務を行うという方法」を提案された。
しかし、この方法 では機器の設置及びその運用に係る経費を本市が負担する必要があり、証明書等交付事務は法務省所管の事務であることから国の負担とすべきであるため承諾することが出来ないと回答している。

というのは、矛盾していないのか?




だって、法務省が依っている総務省の回答っていうのは、


国の事務の縮小を自治体の財政負担で補完させることは、国と自治体の財政秩序を著しく不健全にすることにつながり、地方財政規律を保持する見地からも大きな問題がある


なので、民間事業者に出店を作らせて、その費用を市に負担させるのも同じことだと思うんだけど。








これは、総務省の考え方が変わったということですよね。





追加資料

当時からこんな話があった・・・
提案した町の発想はいいんだけど、それを審査する委員会のメンバーが全然わかってない。


  1. 具体的には、銀行からの融資の書き換えの場合に、印鑑証明書等が求められるが、すぐに提出しなければならない。これは 83 社から意見があった。
  2. 二つ目は工事入札の参加資格を得る場合で、印鑑証明が必要だが、提出期限が短いので、郵送ではなく急いで法務局に取りに行かざるを得なかったとする回答が建設業 21 社あった。
  3. 3つ目は、司法書士に頼む方法もあるが料金が高い。
    もう一つは、司法書士は他の業務で法務局に行く際に、取ってきてもらうので即日交付にならないことも建設業 21 社から回答があった。

ほかに困った例として、調整懇談会等の場での地域の住民の声だが、地元の企業のほとんどが零細であり事務員もいない中で、年に3,4回は登記簿、印鑑証明を使うが、その都度、仕事を早めに切り上げて法務局に取りに行く
郵便局の利用についても聞いたが、事務員もいないことから事務に慣れていないこと、即日交付にならないことから、逆に手間になるとのことだ。
それ故に即日で交付して欲しい。


詳しく言えば、法務省の外郭の財団法人があるが、その HP で不動産登記、商業登記の内容を見ることができる。
不動産登記簿と同じものだ。ただし、見ることができコピーまでできるが、印鑑がなく、証明書にならない点が異なる。
それを役場で手続きして、町長で証明させてもらえないかという提案だ。
町長名で活用できるのであれば、地域的には一番便利である。
ただし、そこには法改正もあり、進まないうちに請求機の話になってきた。
願いとしては役場がやりたいと言うことではなく、即日交付であると考えている。



総務省ヒアリング
総務省自治財政局調整課 稲山
[説明]
  • 国の専管の行政サービスの縮小を地方公共団体の財政負担で補完させることは、国と地方の財政規律を損なう恐れがある。
    地方財政法第 12 条第1項の規定の本旨に反し、同規定の例外措置としても認められるものではない。
    (例外措置:地方公共団体の本来的な事務ともいえるものを国が実施している場合において、その一部のものについて例外的に地方公共団体に経費を負担させる措置。)
  • この規定は、これまでの国と地方の立場の優劣を考えた場合、国の予算不足、行革のなか、経費を地方に転嫁することには問題が多く、財政秩序の観点からも問題があるとの認識に立つもの。
  • ただし、この法律があるために提案が実現できないということには大多数の自治体に違和感があるだろう。
    提案主体の切なる願いは十分理解している。基本的には法務省の対応であると考えている。



法務省ヒアリング
法務省民事局総務課・登記所適正配置対策室  松井室長


[説明]
・ 登記事項の証明は情報を保有する国が行うべき業務であるため、町長が代行することはできない。
国の職員を置くか、代替措置として、郵送、FAX、オンライン申請を提案している。
・ 法務省としても行政サービスの低下を最小限にすべく様々な代替措置を講じてきている。
同町に対しては、特に、郵便局に設置した FAX を利用した証明書交付請求および定期的な登記相談所の開設を提案しているところ。

法務局がなくなって不便であろうから、いろいろと相談をさせて頂くとのことだった。
相談業務については、実際的には何もない。
結果的には使えなかった話だ。


郵送による証明書発行では不十分というが、年平均3、4回行うという請求書発行のうち、即日交付を要するものが何回あるのか
・ 発行請求機の設置基準は採算に基づくものであり、基準を満たさない地方公共団体であっても費用負担いただけるのであれば、設置することはやぶさかではない。

  1. 1点目の経費について、現在、登記所の事務は、登記をする事務と証明書を交付する事務があるが、登記をする事務は国の一般予算であり、登記所を交付するのは登記特別会計であり受益者負担の考え方で実施している。
    登記特別会計なので、ある地域で赤字になると、全体の手数料が上がって別の地域が不利益を受ける観点から問題になると考えている。
    登記特別会計は平成 22 年度をもって廃止される。
    それ以降どうなるかは検討課題だが、登記所の数は以前は 2,000 箇所あったが、特区の関係では廃止済みの登記所に置くようにとの提案であった。
    2,000 カ所の中で、浦河レベルの登記所の数はかなり多く、これを実施するとかなりの赤字になり、一般予算になったあとでも財務省には認めていただけないと思われる。
  2. 2点目の経費が高い点は、よくおしかりを受けるが、証明書交付事業は機械で打ち出した紙を渡すだけで民間でもできると考えている。
    市場化テストについて、来年から4年間かけて、全国の 400 カ所全てで民間委託することに決定した。
    仮に浦河に発行請求機を置いたとして、当初配置するとしても、民間委託するために経費が落ちる可能性は十分ある。
    経費 700 万円が下がれば、当然、それに伴って見直しをする。
    不断に見直しをしたいと考えている。
    地方財政法の観点から不合理な押しつけはよろしくないとの指摘があったが、その通りだと思うが、基準が透明であれば押しつけではないと考えている。
    基準の透明性、経費節減に努めたい。
  3. 3点目の登記情報提供サービスだが、銀行に対しては、機会ある毎にお願いしている。
    また、国の役所の中でも一部にまだ紙の証明書を求めていると聞いており、IT本部を通じて各省庁に照会を取っている。
    登記事項証明書を添付証明とする手続きについては、全て登記情報提供サービスで代替ができるようにしている。
    ペーパーレスになるように働きかけている。
    これが、銀行業界に及んでいくことも切に願っている。














なんだかなぁ、と思う。

国と地方との戦いっていうと聞こえはいいけど、「権限を手放さない国」と「それを寄こせという地方」って構図は、芸のないワンパターンだなぁ、と思う。


もちろん、自治体側の必死さはわかるんだよ。

住民ファーストなんだから、その不便は解消しなきゃいけない。

それでもさ、井上ひさしが「吉里吉里人」で描いたような、ものごとをひっくり返して眺めてみようっていう努力が全く見えない。

昭和の時代は、国会議員や霞が関に陳情だってへりくだっていたのが、
平成になって発言力が出てくると、力いっぱい主張するようになっただけじゃん。




まずは、自分たちでできることをやってみようよ。









そういうわけで、この発言から。


また、郵送やオンライン請求等の制度が整備されてきているが、郵送だと時間と手間がかかることや、インターネットでは、高齢者がパソコン操作に不慣れなことなど、不便な点もある。さらなる利便性の向上のためには、市町村の窓口で各種証明書を交付できる環境整備が必要と考える。



IT化って便利だけど、使えない人にとっては、かえって不便になっちゃうんだよね。

高齢者とか、ネット環境にない人とか。

だったらさ、そういう人たちの不便を解消するのも、自治体の仕事なんじゃないかな。



第ニ条
  2  普通地方公共団体は、 地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する。


彼らの代わりにアクセスしてあげればいいじゃん。

有料で。

今は335円ですよ( ここ)。

しかも、このサービスには、固定費がまったくかかりません。

最初の登録費用、560円だけっ。

おまけに、用紙やパソコン・プリンタは、今あるものが流用できちゃう。

なんにもいらない。場所も取らない。

とっても簡単。


ちょっとやってみようかしら、と思った、そこの自治体職員さん。

企画書を書くのも大変ですよね。

大丈夫。

ここに全部書いてあるから安心してください。

読めばわかる!!絶対わかる!!


ほんじゃ、読んでみてください。





1.そんなことしていいの?


手数料を払ってアクセスするのに、どんな問題があるんだよって思うでしょ?

こういう不思議な議論が大好きなのが、法務省なのであります。



○政府参考人(細川清君)
  司法書士法第二条では、
「司法書士は、他人の嘱託を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。」
としておりまして、第一号として
「登記又は供託に関する手続について代理すること。」
というふうになっております。
それから、同じく司法書士法の第十九条では、
司法書士会に入会している司法書士でない者は、第二条に規定する業務を行つてはならない。
ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

ということになっております。

  ですから、基本的には先ほど言ったような 謄抄本をビジネスとして請求するというのはやはり司法書士法に抵触するというふうに私どもは考えているわけでございます。
本件の法律でやる場合も、手段がそういう指定法人を介在して請求しているだけで、結果的には司法書士の業務である登記所に行って閲覧するということ、この方法をかりてやっているということになりますから、同様な解釈をすべきではないかというふうに考えているわけでございます。



これって、ものすごく変なこと言ってますよね。

同じ委員会で、その前に 「誰でも閲覧できる」と説明しておいて、同じことを代理人に頼んだら司法書士法違反になるのかな?


○政府参考人(細川清君)
  これは非常に古い法律ですから、立法当初はただいま御指摘のような趣旨もあったのではないかと思うんですが、ただ、謄抄本等は利害関係の有無を問わず発行しておりまして、閲覧だけにそういう制限があったのは、簿冊をそのまま閲覧してもらうわけですので、それが余りたくさんになると大変だということもあったのではないかと思うんです。
事実上、従来の実務でも、閲覧について特に利害関係を審査しているわけじゃなくて、 閲覧に来ればどなたでも閲覧していただくという扱いになっておりましたので、そこのところを今の実態に合わせて改正したというのが経緯でございます。

  この法律案では、一々簿冊を書庫から出してお見せするということは必要でありませんで、インターネットで機械と機械との間で直接見ていただくわけですので登記所側の方に特段の閲覧に伴う負担というのはございませんので、今回はそういう制限をつける必要はないんだということに考えたわけでございます。



「登記申請」ができるのは本人だけだから、それを代理でやるには資格がいるっていうのは、まだわかる。

でもさ、誰でもできる「閲覧」を、"代理人" が自分のためにすれば問題ないのに、他人のためにすると違法なの?





ここはしっかりツッコまなきゃいけないのに、質問した小川くんは、磯野家のマスオさん状態になっている。



○小川敏夫君
  細かい議論は余りあれですけれども、指定法人に対する申し入れが登記手続というのかどうか、ちょっとそこら辺のところ将来見解が分かれないようにきちっとしていただければそれでよろしいんですが。



もっとも、この意味不明な議論も、いつの間にか黙認と言うか、改革開放路線へ進んだらしい。

次のやり取りをどうぞ。


○水野副大臣
  実際にこの乙号事務の入札に対して参加する可能性のある民間事業者ということで、要件などについては先ほど来いろいろありましたが、具体的な名前でいえば、財団法人民事法務協会は、今までの委託の経験などがありますから、可能性としては応札してくるところとしてあり得るでしょうし、昨年、公共サービス改革の基本方針策定に当たって民間事業者から意見聴取の手続を実施いたしましたけれども、そのときに関心を寄せていたものとしては、 登記事項証明書の取得代行業者とか人材派遣会社などがこの問題に、乙号事務の市場化テストに関心を寄せていた様子でございました。

○泉委員
  その証明書取得代行業者ですか、それも、実は役所の方からもそのお話を聞いたんですけれども、それを踏まえて私もインターネットなんかでその文字を入力して調べてみたんですが、出てこないんですね。
行政書士さんとかがいろいろな書類の申請を代行したり、取得を代行したりということのケースはあるんですが、そういう業者というのは、例えばある程度大きい会社で何社あってとか、業界的には副大臣はつかまれていますか。

○後藤政府参考人
  私どもで数等の正確な把握はしておりませんけれども、 登記所のそばにそういう事業者の方が会社を構えられて、一般の方からそちらに申し込みをされて登記事項証明書の取得を代行する、そういう事業は行われているものと承知しております



この後藤くんは、当時の法務省大臣官房審議官である。

法務省が事業者の「事業」として「承知」してくれてるんだから、いいんでしょうね。

そして事業者がいいなら、自治体がやっても、なおさら問題はない。

その上で条例まで作るなら、 「 ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない」 ので、文句を言われる筋合いもない。

だって、条例に刑罰を付けても法律扱いしてもらえるんだから、それに比べれば、司法書士の業務なんてどうでもいい話だもん。


第三十一条
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第七十三条
1  司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない






2.  335円は本人に払ってもらうとして、自治体側の人件費はどうすんのよ?


ということと、

3.証明書として使えないから、そんなの意味ないじゃん。


という話。




○細川政府参考人
  インターネットで閲覧したものは各利用者のお持ちのパソコンで印刷することは可能ですが、これは認証文は付しておりません。
要するに、 認証文を付しますと、非常に改ざんのおそれというものが、可能ですし、発見が困難になりますので、していないことになるわけです。

  ですから、認証文があるものを必要な場合には、改めて登記所から登記事項証明書を請求していただくということになるわけでございます。



ここで細川くんが言っている「 改ざんのおそれ」というのは、
「受信者が改ざんする」
という意味で、
「インターネット上で、指定法人から受信者までの間に、第三者が登記情報を改ざんする」
という意味ではない。

この委員会で連呼される「ハッカー」という人たちではない。

なぜなら、彼らが改ざんする可能性を認めてしまえば、この制度自体が成り立たなくなるから。

つまり、「改ざんするおそれのない受信者」ならば、認証文があるものと同じ効果がある。

実際、この法律のお膝元の法務局では、政令・省令を使って、しっかり営業している。


第十一条
電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請する場合において、登記事項証明書を併せて提供しなければならないものとされているときは、法務大臣の定めるところに従い、登記事項証明書の提供に代えて、登記官が電気通信回線による登記情報の提供に関する法律第二条第一項に規定する登記情報の送信を同法第三条第二項に規定する指定法人から受けるために必要な情報を送信しなければならない。

第百三条
2  第百一条第一項第一号の規定により登記の申請をする場合において、登記事項証明書を添付しなければならないものとされているときは、法務大臣の定めるところに従い、登記事項証明書の提出に代えて、登記官が 電気通信回線による登記情報の提供に関する法律第二条第一項に規定する登記情報の送信を同法第三条第二項に規定する指定法人から受けるために必要な情報を提供することができる。




そして、この「改ざんするおそれのない受信者」ってのは、登記官に限らず、市町村でも同じなのだよ。

これまで登記事項証明書として提出していた手続を、証明書の代わりに、オンラインで市町村に情報として送れるようになっている。

法務局が統廃合でどんどん減り、地元の市役所に提出するために、遠くの法務局まで証明書を取りに行くアホらしさが問題視された結果こうなったんだろうけど、
証明書発行の窓口業務を民事法務協会が落札できなくなったから、随意契約で安泰の登記情報提供サービスを売り込んでいる、 という見方もできるかな。

てへっ。


(2) 照会番号
ア  照会番号とは,

行政機関等(行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律第2条第2号に規定する行政機関等をいいます)に対してされる申請等に関する法令の規定において申請等の書面に添付し,又は申請等の際に提出すべきこととされている書面が登記事項証明書である場合において,行政機関等の定めるところに従い,行政機関等が本制度によって送信される登記情報をもってこれに代える(ことができる)としているときに,行政機関等が当該登記情報の提供を受けるために必要な情報」

をいい,一つの登記情報ごとに発番され,発行年月日と10桁の数字から成ります。行政機関等に対するオンライン申請等において登記事項証明書の代わりに照会番号を添付する申請等を受け付けた行政機関等は,この照会番号に基づきインターネットで登記情報の確認を行います。

第二条
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

  二   行政機関等  次に掲げるものをいう。
    ハ  地方公共団体又はその機関(議会を除く。)




だから、指定法人から市町村に届いた情報というのは、法律上、登記事項証明書に書いてある情報と全く同じ扱いになる。



法的証明力
当サービスで提供する登記情報は利用者が請求した時点において 登記所が保有する登記情報と同じ情報です。しかし,当サービスは「閲覧」と同等のサービスであり,登記事項証明書とは異なり,証明文や公印等は付加されず,法的な証明力はありません。



そういうわけで、国が証明しないって言うんならさ、自分たちで証明すればいいじゃん。

画面に映ったその事実を、行政証明として出しちゃう。

印刷した見本は こちら


法務局だろうと村役場だろうと、「官公署」であることに変わりはない。

それは 「登記事項証明書とは異な」るけど、「証明文や公印等は付加され」た官公署による証明であり、「法的な証明力」があるんだよ。



1  一般行政証明の意義
一般行政証明は、特定の事実又は法律関係の存在を公に証明するものとする。

3  一般行政証明の範囲(限界)
  (2)  2の(2)(任意で証明するもの)について、具体的には次の事柄を要件として検討し、証明してよいと判断されたものがその範囲(限界)である。
    ①  検討すべき要件
ア  区の所管事項であること
イ  区に備付けの公簿等により当該証明事項が確認できるものであること
    ②  証明できるもの
上記①の「ア及びイいずれの要件とも満たす」もの




ここで引用した23区の基準は、行政証明としては、全国で一番厳格なんじゃないかな。

他の市町村なら、もっとユルユルに出してるだろうから、こんなん問題にもならないでしょ。


繰り返すけど、自治体のパソコンに映っている内容は、 登記所が保有する登記情報と同じ情報なのだよ。

ここまでは、法務省側が保証してくれる。

だって、そうじゃないと、インターネット経由の情報を行政機関の「証明」として使えるわけないから。



Q15  「照会番号」とは何ですか。

A15   照会番号とは, 行政機関等にオンライン申請をする場合に,登記事項証明書の代わりに添付することができる番号をいいます。
申請を受け付けた行政機関等は,この照会番号により当サービス上で登記情報の確認を行います。

  なお,照会番号が添付書類として認められるかどうかについては,申請先の行政機関等にお問い合わせください。



だから、このサービスは、住民が、証明文・公印サービスが付いたプリンタを利用するようなもんなのだよ。


そして証明文をつけるなら、手数料は徴収しなきゃいけませんな。

インターネット経由の情報は335円、窓口で取得する登記事項証明書が600円( ここ)。

いくらでもいいけど、この差額が目安になるかな。




これは、別に国の権限(=登記事項証明書の発行)を侵害しているわけじゃないよ。

もちろん、登記事項証明書の効力を否定しているわけでもない。

ただ、自治体のパソコンの画面に映った内容を、自治体職員が改変せずに印刷したっていう事実を市町村長が証明してるだけだから。

ややこしいので、あっちは「 登記事項証明書」だから、こっちを「登記情報証明書」と呼んでおこう。


念のため書いておくと、"登記情報証明書"  で検索すると、不動産業界のブログやホームページがヒットするけど、こういうのは、
・普通の「登記事項証明書」か、
・昔の権利証にあたる「登記識別情報」か、
・申請した登記が終わったことを示すだけの「登記完了証」
のどれかを書き間違えているだけなので、ここでいう「登記情報証明書」とは全く別物である。



手数料を徴収するわけだから、当然、条例を作っとかなきゃね。

たとえば、
登記情報提供サービスにおけるデジタル・ディバイドを解消するための条例
とかさ。


住民の依頼を受けて自治体が請求をすることをはっきりさせておくため、委任状はもらっておこう。

行政証明の申請書もいるので、 「登記情報請求委任状」「登記情報証明申請書」にしておけば、1枚で済む。

それから、内容が間違っていたというトラブルを避けるため、コピーを取って申請書と一緒に保存する。


証明文は、登記事項証明書がこんな内容なので

これは登記記録に記録されている事項の全部を証明した書面である。

登記情報証明書は、こんな感じかな。

「これは登記記録に記録されている事項の全部を印刷して証明した書面である。」








登記情報証明書の活用



さて、自治体が登記情報証明書を発行しても、それが通用しなかったら意味がない。

だから、自治体自身が率先して普及に務める必要がある。


とはいえ、自分のところに提出させる証明に、わざわざ自分で証明をつけるのも無駄なんだよね。

まぁ、そういう無駄なことが好きな制度もあったりするけど。


第十九条の三
  この法律の規定により 登記の申請書に添付しなければならないとされている登記事項証明書は、申請書に会社法人等番号を記載した場合その他の法務省令で定める場合には、添付することを要しない。



照会番号という制度が効率化につながるにしても、デジタル・ディバイドを考えれば、ネットを使えない人から不可避的に生じるコスト面での非効率をどこかで回収しなきゃいけない。

そうなると、証明をつけるつけないにかかわらず、指定法人に支払う料金のほかに、利用者から別途手数料を徴収するしかないんだろうな、と思うのだよ。


つまり、やっぱり、自治体自身が自分のところに提出させる 登記事項証明書の代わりに登記情報証明書を利用する、というルールが必要になる。

ただし、証明文は必要ないので、条例で、手数料は値引きできないけど証明申請書の部分を省略できるとしておいて、その場合は、職員が登記情報提供サービスを確認するだけの手続に分岐させておく。



役所の中はそれでいいとして、問題は、地域経済のなかで通用するかどうかである。


一番最初に押さえなきゃいけないのは、地元の金融機関。

なんだけど、金融機関なら、自分のところで、直接、登記情報提供サービスを利用すれば済む、というか、データとして管理したほうが圧倒的に効率がいいわけだから、そもそも証明書なんか必要ないはずなんだよね。

それでも、いまだに証明書にこだわる金融機関には、市長が直談判して運用を変えてもらおう。

支店長では話にならんと言うなら、フットワークの軽い、地元の地方銀行や信用金庫と取引すればいい。


次に、地元企業に対しては、法務局へ行く必要がない利点を説き、登記情報証明書でも受け取ってくれる金融機関を推薦する。

そして、企業間で証明書を使う機会があれば、登記事項証明書と同じ内容の、登記情報証明書の利用を宣伝しておこう。

法務局から遠いのは地元企業にとって同じで、相身互い身、運命共同体なわけなのだよ。

そういうわけで、登記情報証明書の流通は、その会社自身にとっても利益になる。


最後に、住民への周知も忘れずに。

行政サービスってのは、役所が思っているほど理解されていない。

せっかく便利なサービスを始めても、行政というのは非効率なものだと思っている人は、今まで通りの無駄なやり方を続けてしまうものだ。

だから、企業への経済レベルで話をするだけでなく、住民の日常レベルでも話題にしていかないと、すぐに忘れられてしまう。

広報誌やポスターなどを活用して、住民への理解を高めていこう。








広域連携の必要性


自分のところの区域内は条例をつくるにしても、実際の経済は、複数の自治体にまたがって動いている。

だから、登記情報証明書の流通には、周辺自治体の協力が不可欠である。

ここでも、先ず隗より始めよう。

市役所内の手続で、他の市町村が発行した登記情報証明書が提出されても同様の効力を認めなきゃいけないし、地元企業に対しても、どの市町村が発行しても同じ証明書だとわかってもらわなきゃいけない。

正確には、印刷段階で間違いがあった場合は、証明書を発行した市町村に対して国家賠償請求をすることになるので、自治体間の経済力格差が損害賠償債権の回収に影響を及ぼすことがあるんだけど、まぁ、現実問題として、起こる可能性はほとんどない、と思う。



そして、次の段階が、登記所の統廃合で困っている周辺自治体との協力である。


登記事項等証明書発行特区

現在、法務省において登記事項証明書並びに法人の印鑑証明書を交付する発行請求機の設置基準の策定がなされているが、仮に当該請求機の設置の基準に満たさない地域であっても、地方公共団体が費用の一部を負担することで発行請求機を設置できるようにする。
また、発行請求機による交付については、地方公共団体の職員が出来るようにする。



この北海道の例では、法務局が近くになくて困っている自治体が共同で特区申請をしたんだけど、登記事項証明書の場合は、近くに法務局がある自治体も巻き込んで話を進めて行く必要がある。

なぜなら、中心部分がすっぽり抜けたら、流通量が格段に減るし、流通されなければ認知もされないから。

しかも、もともと固定費のかかる話ではなく、近くに法務局がある自治体であったとしても、市町村役場の支所・出張所のネットワークのほうが便利なわけで、住民サービスの向上にもなる。


こうして、点から線へ、線から面へ広げていくことで、登記事項証明書から登記情報証明書への代替が進むはずだ。



繰り返すけど、これは別に違法なことをやっているわけじゃないよ。

登記事項証明書は国だけが発行しているし、自治体の区域内で流通する。

この、国のサービスの上に、言い換えれば、国の領土の上に自治体の区域が成り立つように、地域のデジタル・ディバイドを解消するためのサービスを提供するだけだから。



そして、それは国が制定した

電気通信回線による登記情報の提供に関する法律

の趣旨にも合致する。


第一条
  この法律は、登記情報を電気通信回線を使用して提供する制度を設けることにより、 登記情報をより簡易かつ迅速に利用することができるようにし、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。




この法律も言っているとおり、守るべき価値は「 登記情報の利用」であって、「登記事項証明書の流通」ではない。

たとえて言えば、環境規制を強めれば産業が衰退する、というような二者択一ではない。



仮に、登記事項証明書が使われなくなったとしても、

取引の安全と円滑

が実現するなら、それは登記法全体にとっても、望むところなのであります。


第一条
  この法律は、不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度について定めることにより、国民の権利の保全を図り、もって 取引の安全と円滑に資することを目的とする


第一条
  この法律は、商法、会社法 その他の法律の規定により登記すべき事項を公示するための登記に関する制度について定めることにより、商号、会社等に係る信用の維持を図り、かつ、取引の安全と円滑に資することを目的とする









印鑑証明をどうするのか



登記事項証明書の代わりがあるとしても、登記情報提供サービスでは、会社の印鑑証明書を取ることができない。

残念ながら、これは無理だ。

セキュリティレベルが上がってしまうので、通常のネットサービスでは送れない。


まぁ、最終手段というかなんというか、まちおこしの一環として、 アザラシとか、アニメのキャラクターとかを大量に住民登録したドサクサに、地元企業も一緒に住民登録して、そのついでに印鑑まで登録しちまう、とかなんとか、ぶつぶつ・・・。



でも、よくよく考えてみれば、法令で添付が要求されている場合を除けば、会社の印鑑証明書って必要なのかな ?

別になくてもいいじゃん、というのが、以下の論旨である。



まず、日本の法律では、原則として、契約書は必要ない。






「申込」と「承諾」、

「こういう契約しよっ。」「いいよ。」

これだけで成立してしまう。



別に不思議なことでもない。

普段、コンビニでレジに商品を持っていって代金を払う行為を法律的にみると、こうなるだけだ。

ただ、あとあとトラブルになったとき困るから、値段の高い取引では、文書(契約書)として記録を残し、その文書に、間違いなくこの内容で合意しましたという本人だけができる証拠(実印・印鑑証明書)をつけておくのである。


つまり、印鑑証明書を不要にするためには、次の2つの方法があることになる。



・トラブルを起こさない
リスクは避けられないので、解決策にはならない。

契約書を作成するが、実印・印鑑証明書以外の方法で本人の意思を確認する。
言いたいのは、こっちである。









個人の印鑑があるじゃないか



そう、会社の印鑑を使わず、個人の印鑑で代用してしまえばいいのである。

順を追って進めていこう。



①  まず、当事者(たとえば、売り手と買い手)の合意だけで契約が成立することは、個人も会社も同じである。

②  ただし、会社は、法律によって作られた人( 法人)なので、考えたり行動したりすることができない。

③  だから、普通の人間( 自然人)が会社の代わりに契約を結んでやらなければならない。

④  その仕事をするのが、 代表取締役である。
  大きな会社では、部下が代表取締役の代わりをする。

⑤  このとき、代表取締役(普通の人間)は、 会社の一部として行動しているのであって、個人として行動しているのではない。

⑥  そのため、契約書を作るときに使われるのは、個人として市役所に登録した印鑑ではなく、 会社の代表者として法務局に登録した印鑑である。

⑦  近くに法務局がないと、会社の代表者としての印鑑を押しても、それを証明するための文書( 印鑑証明書)が付けられず、代表者であると信じてもらえないから困っている。





会社の印鑑証明書か、個人の印鑑証明書かの分かれ道になるのが、⑤だ。

法律学を学んだことがないと、一人の人間が、「一個人の立場」と「代表取締役としての立場」を使い分けていることが理解しにくいと思う。


オレのモノはオレのモノ。

会社のモノもオレのモノ。


個人商店と変わらないような零細企業では、実質的にはこっちのほうが正しいんだけど、法律的には間違っている。

「会社」という別の人格( 法人格)をつくったら、それは、作った人とは別の人間とみなければならない。

だからこそ、市役所で登録した代表取締役個人の印鑑とは別に、法務局で会社としての印鑑も登録して、(法律的には)会社自身が取引することになる。



会社の印鑑証明書がないなら、

個人の印鑑証明書を使えばいいじゃない

という考えは、この法律的なフィクションをひっぺがして、日本の会社の大多数を占める零細企業の現実に合致させようとするものだ。

もちろん、ナントカ街を占拠せよ、みたいな法律違反の反体制活動ではない。

きちんと法律に則って、もっと便利で効率的な経済の仕組みを模索しているだけである。

だって、もともと会社の印鑑証明書自体が取引に必須というわけではないんだもん。



角度を変えてみよう。

会社の実印・印鑑証明書がなくても、代表取締役がした契約は有効である。

その有効な契約に基づいて、取引相手は、会社に契約内容の実現を要求することができる。

仮に、会社の実印・印鑑証明書がないことを理由として、会社側が契約の無効を主張するとしたら、
「そんな契約を結んだ覚えはない」
という方向しかない。

しかし、代表取締役個人の実印・印鑑証明書がついていれば、会社の代表者が契約をしたことが明らかなので、その言い分は通らない



問題は、会社の代表取締役と、代表取締役個人とをどうやって結びつけるかである。

当然のことだが、代表取締役個人の印鑑証明書を取っても、代表取締役としての肩書きは載っていない。




そういうわけで、登記情報提供サービスから印刷した 登記情報証明書をセットにしなければならない。

どちらにも、代表取締役個人の住所・氏名が記載されているから、一応のつながりがつく。





しかし、住所・氏名だけでは、同一人と判断することはできない。

たとえば、嫁と姑がたまたま同じ名前で、同居している場合を考えればわかるように、これだけでは情報が足らないのである。

ちなみに、当然のことだが、親と同じ名前の相手と結婚しても、法律的な問題はない。


そのため、同じ住所に同じ名前の人間がいないことを証明しなければならない。

いわゆる「不在住証明」ってやつだ。

通常、この「不在住証明」は、その住所にその名前の人が住んでいないことを証明するものだ。






そういう意味では変則的な使い方なのだけれども、この「不在住証明」には法律的な根拠があるわけではなく、市町村の裁量で発行している行政証明なので、内部規定を変えれば、証明の仕方はどうにでもなる。

可能なら、「不在住証明」を印鑑証明書にくっつけたいところだ。



つまり、個人の印鑑証明書・登記情報証明書・不在住証明書をセットにすれば、個人の実印を押しても、それが「会社の代表取締役」の印鑑であると証明できる。

そして、全部、市町村の窓口で取れる。



法務局へ行けば、登記事項証明書が600円・印鑑証明書が450円なので、こっちは各1通の3点セットで1000円ってのはどうかな?








脱・ローカルへの道



証明がつながったところで、取引相手が信じてくれなければ意味がない。


トランプの大富豪で
「あたしの中学校じゃ、4が一番強いカードだっていうルールだったんだけど」
というローカル・ルールを持ち出すようなものだ。


だから、個人の印鑑証明書が会社の印鑑証明書の代わりであることをはっきり示しておこう。


そのためには、会社の目的に書くのが一番だ。






繰り返しになるけど、会社の実印や印鑑証明書がなくても、取引の有効性は変わらない。

なので、もともと効力のあるものを「追認 (無効にできるものを有効と認める) 」っていうのも変なんだけど、間違いと言うほどのものでもない。


それから、法律的には当然のことを目的に書いてもいいのか、という疑問については、
目的の定番である
3 前各号に附帯する一切の事業
自体が、すでにそのムダの前例になっているので問題ない。


なぜなら、目的に列挙された事業だけでなく、それに付帯する事業もできるというのは、この業界の常識だから。


会社は定款に定められた目的の範囲内において権利能力を有するわけであるが、目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為であれば、すべてこれに包含されるものと解するのを相当とする




法務省は、そんなこと百も承知で、あえて定款見本に「前各号に附帯する一切の事業」を入れている。

だから、当然のことでも、表現が少々おかしくても、気にしてはいけない。

そういう世界なのだよ。


とはいえ、個人の印鑑証明書をやたらめったらバラ撒くのも、リスク管理という点でいいことではない。

対策の一つとして、いくつか印鑑を用意して、個人の登録印を定期的に変更すること。

ローテーションで使いまわせばいい。

いくらかリスクを減らせるはずだ。


もう一つの対策として、目的の個人の実印を使う条件を限定することだ。

たとえば、「3点セットを添付して」の部分を
3点セット(発行後7日以内のものに限る)を添付して
にしたり、
「当社代表取締役」の部分を
当社代表取締役 (こんな顔です。
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/prof_index.html)
にすることで、別人が代表取締役のふりをすることを防止できる。

ただし、これは取引の相手方に負担をかけることなので、取引を断られる原因になるかもしれない。








会社の印鑑証明書のこれから



会社の印鑑証明書は、なぜ市町村で取れないのか?


というより、なぜ民間委託していることを市町村にもさせないのか?


【石垣・新見市長】  「民間でなくて、なぜ市町村ができないんですか、という」

・・・中略・・・

【法務省民事局総務課長】  「コストの面からもサービスの面からもというのが、少なくとも今の 市場化テストあるいは公共サービス改革法の枠組みでございます





つまり、法務省としては、市場化テスト法があるから仕方なく民間に委託しているのであって、田舎の利便性まで構ってやる気はない、ということらしい。

民間に任せることについて、それ以上の理由などないから、こう答えるしかないんだろうね。


それでも、費用負担がはっきりしないものの、オプションとして市町村に専用端末を設置すれば、登記所のないところでも証明書が発行できる。


だだし、専用端末を設置すると、もれなく専任の担当者を常時配置しなければならない。


しかし、証明書の発行は、そこまでするほどのことか?

これまで書いてきたように、登記情報提供サービスを官公署が印刷すれば証明書として使えるはずなんだから、 登記情報証明書ではなく、市町村で印刷した登記事項証明書として発行しても問題ないはずなのだよ。

だって、それが 照会番号制度なんだから。


つまり、登記事項証明書については、わざわざ高コストな専用端末を置かなくても、役所においてある普通のパソコンで代用できちゃうってことなんだよね。



せっかくなので、専用端末と 登記情報提供サービスを比較してみる。

専用端末で出力される証明書については、 法務局証明サービスセンターにおける取扱証明書一覧をみてね。

各種証明書の発行枚数(全体)については、政府統計の 登記事項証明書の交付等の件数 を参照。


登記事項証明書
(不動産)
地図 図面 登記事項証明書
(商業・法人)
印鑑証明書 動産・債権譲渡
法務局証明サービスセンター
登記情報提供サービス ×
交付件数(枚数) 7600万 1000万 4500万 1300万 7万



表を見ると分かるとおり、印鑑証明書の需要なんてのは、専用端末でできることの1割程度でしかないのだよ。

言い換えれば、専用端末の仕事の9割は普通のパソコン、「 登記情報証明書」で代替できる。

ものすごいガラパゴス。



昔、公共施設においてあった キャプテン端末を思い出すな。





こっちが21世紀版。


客に端末を操作させといて職員を張り付けるのは、逆に退化しているのではないかと。





どう見ても端末の横に職員を配置する構図は、笑いを取りに来ているとしか思えない。

人と機械との共生」とか、「ワークシェアリング」とか。

担当者は真面目にやってるつもりなんだろうね。



本題に戻ろう。

証明書需要の1割に応えるために、専用端末を設置するのは、とても効率が悪い。

印鑑証明書を取りに来る人が1人もいない日だってあるだろう。

そのためだけに人を張り付けるのは、ムダの上塗りである。



では、どうするか。

繰り返すけど、需要の9割は普通の回線でさばけるので、印鑑証明書需要はたかが知れてる。

もともと需要が少ないから、法務局が撤退したわけで。

そして、安全に送らなきゃいけないのは、印影という小さな画像データだけである。

これなら、安全性さえ確保できれば、ナローバンドな旧式回線でも用が足りる。


つまり、すでにある自治体用ネットワーク回線と法務省とをつなげはいいだけだ。

そういう観点で検索してみると、「 住民基本台帳ネットワークシステム」と「総合行政ネットワーク」というのがあった。


どちらも、 地方公共団体情報システム機構が運営している。

ここは、財団法人地方自治情報センターを前身とし、地方公共団体情報システム機構法に基づく地方共同法人として、2014年4月1日に設立されたらしい( Wikipedia)。

まぁ、お約束というか、旧自治省の天下り先である。


住民基本台帳ネットワークシステムの場合、根拠になっている住民基本台帳法が第1条だけで「住民」という言葉を6回も連呼するほど、住民データにこだわってるので、割り込むのは無理でしょうね。



次に、 総合行政ネットワークというのは、こんなかんじらしい。


LGWANとは?

総合⾏政ネットワーク(略称:LGWAN(Local Government Wide Area Network))は、地方公共団体の組織内ネットワークを相互に接続し、地方公共団体間のコミュニケーションの円滑化、情報の共有による情報の⾼度利⽤を図ることを⽬的とした、⾼度なセキュリティを維持した⾏政専⽤の閉域ネットワークです
平成13年度から運⽤が⾏われており、 現在、全ての都道府県及び市区町村が接続されているほか、一部事務組合及び広域連合の接続も増加しています。

また、 LGWANは、国の府省間ネットワークである「政府共通ネットワーク」と相互接続しており、地⽅公共団体と国の機関との情報交換にも利⽤されています。






なんで、ここに乗っけないの?

印鑑証明データを送れるくらいの安全性はありそうなんだけど。


というか、市町村から法務局へ登記申請に使えるんなら、反対側にデータ流すくらい簡単でしょ。


LGWAN・政府共通NW経由によるオンライン登記嘱託

  登記・供託オンライン申請システムでは,LGWAN・政府共通NWから接続可能な「LGWAN/政府共通NWによる登記・供託専用ポータルサイト」において,「官公署用申請用総合ソフト」を提供しています。

  平成25年4月1日から,「官公署用申請用総合ソフト」を用いて, LGWAN・政府共通NW経由で,オンライン登記嘱託等をすることができるようになりました





したがって、市町村長諸君は、自分のところで正規の証明書を発行したいからと言って、市場化テスト法を持ち出すのは愚策である。

あの法律は、国がやっていた仕事を民間と競争させるためのものなので、そこに市町村が参入しても、民間企業と争う、不毛な戦いが待っているだけなのだよ。

そうではなくて、電登法で指定法人としての民事法務協会が持っている特権を、自分たちのほうがふさわしいから、そこに割り込ませろ、と言わなければいけない。





追加資料


法務省は、既に地方公共団体情報システム機構と契約してるじゃないですか。


8の戸籍副本データ管理システムにおけるLGWANの利用で、724万8960円。


登記申請でも使うってことは、別口の契約もあるでしょうね。




名称 地方公共団体情報システム機構 (旧財団法人地方自治情報センター)
天下り 副理事長:元?自治行政局長
理事:元?消防庁防災課長
備考 総務省 財団法人地方自治情報センター(理事長)
※平成21年5月14日時点
根拠法
業務 総合行政ネットワークの改修に係る業務委託契約書
金額 1620万円
根拠法
業務 カード有効性情報提供システム等開発等に係る業務委託
金額 12億2400万円
根拠法
業務 カード有効性情報提供システム等開発等に係る業務委託
金額 12億2400万円
根拠法
業務 国税庁
金額 194万4000円
根拠法
業務 「全国町・字ファイル」の提供及びその保守
金額 118万2600円
根拠法
業務 国税庁
金額 700万円
根拠法
業務 公的個人認証サービスの利用 一式
金額 700万円
根拠法
業務 戸籍副本データ管理システムにおけるLGWANの利用
金額 724万8960円
根拠法
業務 地方交付税及び地方特例交付金等の算定及び分析に係る請負業務
金額 1億9902万2000円
10 根拠法
業務 公的個人認証サービス情報提供手数料
金額 700万円
11 根拠法
業務 総合行政ネットワークの改修に係る業務委託
金額 2億4300万円
12 根拠法
業務 地方交付税及び地方特例交付金等の算定及び分析に係る請負業務
金額 1億9588万円
13 根拠法
業務 戸籍副本データ管理システムにおけるLGWAN利用料 一式
金額 724万8960円
14 根拠法
業務 公的個人認証サービス情報提供手数料
金額 350万円
15 根拠法
業務 公的個人認証サービスの利用 一式
金額 350万円
16 根拠法
業務 国税庁
金額 350万円
17 根拠法
業務 国税庁
金額 194万4000円
18 根拠法
業務 公的個人認証サービス失効情報の提供
金額 350万円
19 根拠法
業務 住民基本台帳人口移動報告用データ再作成業務(平成22年、平成23年分)
金額 501万8112円
根拠法
業務
金額










「電子自治体の基盤として平成13年に本運用が開始されました。」( 目的及び基本方針)というLGWANについて、平成11年当時の法案審議で選択肢として検討するのは無理がある。

しかし、内閣としての一体性が機能していれば、そういた案があることくらいは伝わったであろうし、法案審議の中でも説明されるべきでなかったか。

しかも、参議院の附帯決議であれやこれや注文がついていたのだから、法律を誠実に執行するつもりなら、平成13年段階で再検討をすべきだったと思う。


    登記情報提供業務を行う指定法人の数については、今後の技術の進歩や経済情勢の推移等を踏まえつつ、登記情報の安全性の確保、料金の問題等の視点から総合的に検討を進め、必要な場合には、見直しを行うこと

    電気通信回線による登記情報提供制度実施に当たっては、利用者の意見等も調査しつつ、利用可能時間の延長など更なる利便性の向上に努めること

    電気通信回線による登記情報提供の場合には認証文を付すことができないことにかんがみ、郵送等による登記簿謄抄本の取得方法など、 認証文を必要とする利用者の利便に資するため、広報等にも力を入れること





なぜなら、この法律の趣旨は、


登記情報を電気通信回線を使用して提供する


登記情報をより簡易かつ迅速に利用することができる


なので、法律を誠実に執行しようとするなら、この条件を満たす最善を追求しなければならない。


第一条
  この法律は、登記情報を電気通信回線を使用して提供する制度を設けることにより、 登記情報をより簡易かつ迅速に利用することができるようにし、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。




しかし、現行の制度では、次のような難点がある。

  • 証明書として使えないため、利用場面が限られる
  • そのため、証明書を発行する登記所の減少を補えない
  • どれだけ暗号化しても、インターネット経由では改ざんリスクがある



そこで、指定法人と同等の立場に市町村を加えれば、次のようになる。


  • 市町村窓口で証明書の発行を受けられる
  • そのため、発行窓口の数が大幅に増加する
  • 閉域ネットワークのLGWANを使用することで、安全性が向上する



ちなみに、現在の登記所数は約500,市町村の数は約1700。

さらに、市町村には支所や出張所があるが、その全体数は不明である。

ただし、都道府県単位で調べることはできるので、その一部から推測すると(全部はやってられん)、おそらく市町村数の3倍から10倍くらいかと思う。






離島が多いところは、どうしても支所の数が多くなるので、推測の誤差も大きくなる。

だから行政を効率化する必要があるんだけどね。




いずれにしても、LGWANで市町村の支所・サービスセンターまでつないでしまえば、登記所の統廃合など問題ではなくなるほどの証明書発行拠点が確保できる。

これは、住民サービスの向上だけでなく、日本の経済活動のボトルネックが証明書の発行ということにでもなれば、それはすなわち、法務省が日本経済を停滞させているということにほかならない。


したがって、理想的な制度設計としては、こんな感じになるんじゃないかな。





当時の議論の補足として、インターネット経由での情報伝達のリスクを説明しておく。








法律制定時の国会審議では、内部の指定法人職員や、外部のハッカーが、情報漏えいやシステム攻撃をするという想定で議論がされていた。

イメージとしては、こんな感じ。





もちろん、そっちのリスクもあるにしても、なぜかインターネット上で情報が改ざんされる危険については、議論がされなかった。

法務省と指定法人の間は専用回線でも、利用者と指定法人との間はインターネットなのであります。

こっちは誰でも通れる、普通の道路。

英語でいえば、 ろーど であります。






だから、そもそも論でいえば、インターネットなんてのは必要悪であって、使わなくてもいいんならそれに越したことはないんだよ。


でも、使わないと経済の効率が上がっていかないから、リスクを承知で、個人情報やお金のやり取りとかをしているわけだ。


不正送金被害が引き続き発生

警察庁によると、2015年のインターネットバンキングにかかわる不正送金の被害額は約30億7,300万円となり、2014年の29億1,000万円を超え、被害額が過去最悪となったことが明らかとなった。
特に信用金庫、信用組合、農業協同組合、労働金庫の利用者に被害が及んだ。
セキュリティ対策の遅れが原因と考えられる。





だいたい、法務省自身が国会での答弁で、セキュリティを確保するために、指定法人を一つにして、なおかつその法人を天下り団体にすると言ってるじゃないですか。


○細川政府参考人
  先ほど来申し上げておりますことは、指定法人の中に職員がおりますので、そこはコンピューターにアクセスできるわけですから、指定法人が二つ、三つできてきますとその人数が二倍、三倍になるわけですから、そこで何か不心得者がセキュリティー上の問題を起こす可能性が高くなる、だから一つの方がいいんだということを先ほど来申し上げているわけです。

  ですから、ほかにできるところがあるのではないかという御指摘でございますが、それはそれで、ないことはないだろうというふうには思っていますが、ただ、これは法務大臣が全面的に監督するものでございますので、 法務省の所管の公益法人でなければならないということになりますので、そういたしますと候補はおのずから絞られてくるということでございます。



ということは、もっとセキュリティを高める方法があるなら、そっちを優先すべきなんだろうね。


そして、それは、インターネットよりも安全な、閉域ネットワークだと思う。

そういうインフラがすでにあるなら、それを使うことが社会的資産有効活用じゃないかな。





  閉域網を構築する際は、通信装置もアクセス回線も、インターネット用とは物理的もしくは論理的に分離します。
また、閉域網内のルーターは、パケットの受け渡しに必要な経路情報をインターネットから受け取ったり、インターネットに通知したりしないように設定します。
これでインターネット上の機器とは通信できなくなります。




まぁ、こっちも天下り法人だから、使用料に天下りプレミアムがつくのはしょーがないけどさ。








この世でいちばん大事な「カネ」の話



第十九条
  国又は 地方公共団体の職員が、職務上請求する場合には、手数料を納めることを要しない




一般人が手数料を払って得られる情報も、公務員が職務上請求すれば無料になる。

その根拠になるのが、上に引用した登記手数料令19条である。

紙の時代なら、自治体職員に登記簿の簿冊をドサッと渡して勝手に見てもらえばよかったわけだが、コンピューター化されてしまうと、いちいち入力して印刷しなければならないから、その分のシステム使用料とか手間賃とかを誰が負担するのか、という問題が起きる。

そして、その分は一般人の手数料に上乗せするしかないので、ただでさえ急激に値上げしていった登記手数料が更に上がるという問題に発展するのであります。


ちょっと、しつこいけど、国会で繰り返し議論になっているので引用する。



○山田委員
  私の持ち時間が参りましたのでここまでにいたしますけれども、今るるやりとりをさせていただきましたコンピューター化に伴う移記ミスが非常に多い、そういう事情の中で、それに関連をする閉鎖登記簿を閲覧せざるを得ない状況が一方にあり、それはすなわち国民負担を増大させるということに直結する問題であり、そしてもう一方、きょうは議論できませんでしたけれども、国、地方公共団体あるいは公社公団、特殊法人等が請求をする謄抄本あるいは証明書等につきましては、これは手数料を納めること不要というふうにされているわけです。
免除されておるわけでございます。
しかし、登記特別会計というものが設置をされて、そのもとでコンピューター化の大事業を進めていく、あるいはまた登記簿謄抄本等のそういう登記情報を供給するコストというものを賄わなければならないという制度のもとで、いつまでも国等の請求に係る部分が手数料免除のままでいいのかどうか、私はこれは民事行政審議会の答申にもございますように、国等においても受益者たる立場においてやはり登記手数料は支払うべきである、こう考えるわけでございます

  そういうことがございますのに、前回改定の時期から数年経過したからということで来年四月一日から登記手数料の値上げに踏み切ろうとなされている、あるいは踏み切ったというやり方は国民は納得しないのではないか、私はこのように思います。
したがって、一切値上げをしてはならぬということより、むしろ、値上げをなさる前に、登記手数料を引き上げる前にやるべきことが幾つもあるんじゃないですかということを私は申し上げたいわけでございます。

○紀平悌子君
  民事訴訟費用の引き下げという一つの方向性、その方向性と逆に先ほど山田委員が御質問なさいましたけれども、法務局における土地、建物の登記簿を閲覧したり、謄本を請求したりする際に支払う登記手数料、これの大幅値上げというか、相当大幅だと思いますが、この値上げの理由については先ほど承ったように理解いたしますので、少しその先を申しますと、国、地方公共団体それから特殊法人、これらの謄本請求等については無料であるというふうに伺っているんですけれども、コンピューター化による登記事務情報処理上の付加価値というもの、それを国や公共団体は無料である、しかし国民は払っていくわけですから、そのツケというと失礼なんですが、国民の方が一手に引き受けているような感じがするんですけれども、この無料であるというところの合理性というものがあれば伺わせていただきたいと思います。

○政府委員(清水湛君)
  お答えいたします。

  他方で、この登記につきまして乙号手数料を主要な財源といたしますところの登記特別会計制度というものができましたので、そういう制度のもとでは受益者負担というような原則を徹底すれば、国もあるいは地方公共団体も一人の受益者であるからそういうような負担をすべきであるというような考え方もあるわけでございます。

  そういう面から見ますと、こういったたぐいのものも有料化すべきだというような議論も出てくるのかもしれませんけれども、しかしながら、このような登記特別会計制度を導入したからといって、国、地方公共団体等の事務の公共性、相互協力関係とかあるいは国の予算配分の合理性等というようなものを考えますと、やはり無料のままでそれなりの負担というものを考えるということも十分合理性があることではないのかというようなことも考えられるわけでございます。

○政府委員(清水湛君)
  国なり官公署が登記所に登記簿の謄本を請求するという場合には、現在これは無料ということになっております。
登記特別会計のもと、そういう無料ということでいいのかというような素朴な御意見があることは私ども承知しているわけでございますけれども、官公署相互間の協力関係とか、あるいは例えば国の場合を考えますと、結局また一つの国の機関として相互に協力をいたしているわけでございますので、これを有料化するということについてはやや問題があるのではないか。

  それから、一番大口なのは市町村が登記簿を閲覧する、これは固定資産課税台帳との突合という意味で一登記所の登記簿を全部閲覧してこれを課税台帳と照合するということが行われているわけでございまして、そういう件数が非常に多いのでございますけれども、登記所にかける手数というのはほとんどないというような実情がある
そのほかに、国なり官公署が登記簿の謄本という形でこれを請求する件数というのはそれほど数は多くないというような問題もございまして現在のところ無料ということになっているわけでございます。

○金田(誠)分科員

  そこで伺いたいんですが、なぜ官公庁あるいは公社公団、特殊法人などについては無料のままで据え置いて、なぜ一般の民間、こういう厳しい経済状況の中で手数料を引き上げなければならないのか
これはもう理解に苦しむわけでございます。
まさに官尊民卑そのものだと思うわけでございますが、その辺何か弁明する言葉などございますか。

○細川政府委員
  確かに、御指摘のとおり、現在、登記手数料令の第七条が適用される国、地方公共団体あるいは特殊法人からの職務上の請求につきましては、手数料を無料とする扱いとされておるわけでございます。
この扱いは、公共部門における相互の協力関係を促進する、こういう意味でございまして、従来から他の同様の制度についても同様なことが認められておるわけでございます。

  さらに、この登記特別会計が創設されたときの衆議院大蔵委員会の附帯決議でございますが、昭和六十年四月のものでございますが、これでも、公共部門における相互の協力関係について、従前の慣行を尊重するようにという附帯決議がございました。

  そういうことなどから考慮して、現時点ではこれは維持せざるを得ないということが私どもの考えでございます。




上の清水くんの答弁は、紙の簿冊の場合である。

コンピューター化も始まっていて、そっちの予算のときは進捗具合をアピールするのに、こういうときだけは昔の方法を強調している。

もっとも、現在では、「登記異動通知」(呼び方はいろいろ)という書類で一覧形式で市町村に提供されているらしい。

しかし、印刷した状態で受け取るため、マンパワーで突合しなければならず、ムダが多かった。

その問題も、ソフトウェアの改良で解消しつつあるとか。


A”TAXes ソリューション

固定資産課税台帳を管理する課税システムへ法務局から通知される登記済通知書電子データの異動内容をコード変換し、異動処理の大幅な省力化を全国で初めて実現したソリューションです。









コンピューター化によって、「一番大口なのは市町村が登記簿を閲覧する(平成5年4月15日参議院法務委員会)」需要がなくなり、登記手数料令の免除規定の根拠もだいぶ変わってきたと思うのであります。


そこで、ここからは、市町村窓口で正規の登記事項証明書が発行される時代の登記手数料令のあり方を考えてみたい。



追加資料

この「固定資産課税台帳」っていうのは、地方税法第382条のものだと思う。


手続きの流れは、相続未登記と固定資産税実務について(土地総合研究所)を参照。


名称 一般財団法人土地総合研究所
天下り 理事長:元内閣官房都市再生本部事務局長 → 日本下水道事業団 → 三井不動産顧問
副理事長:元九州地方整備局副局長 → 元国土交通省総括監察官 → 日本道路交通情報センター理事
理事:元国土交通省土地・建設産業局長 → 都市再生機構副理事長 → 内閣審議官内閣官房地域活性化統合事務局長 → 一般社団法人不動産協会副理事長
理事:元近畿地方整備局副局長 → 不動産適正取引推進機構理事
備考
根拠法
業務 適正な土地取引監視、最適な土地活用・管理の在り方検討業務
金額 359万6400円
根拠法
業務 平成27年度土地利用基本計画制度に関する検討会運営支援等業務
金額 183万6000円
根拠法
業務 平成27年度 国土形成計画推進のための研修会運営支援等業務
金額 138万2400円
根拠法
業務 民法改正に伴う不動産実務の対応方策検討業務
金額 798万6600円



地方税法(昭和25年7月31日法律第226号)
(登記所からの通知及びこれに基づく土地課税台帳又は家屋課税台帳への記載)
「第382条 登記所は、土地又は建物の表示に関する登記をしたときは、十日以内に、その旨を当該土地又は家屋の所在地の市町村長に通知しなければならない。」


横浜市中央図書館がその経緯を調べていたので、載せておく。

地方税法第382条の規定が制定された趣旨及び経過について知りたい。



政府委員(平賀健太君

第七十八条の改正でございますが、本条は、土地の表示の登記において登記すべき事項を規定いたしたものでございます。
所有権の登記のされていない土地について、その所有者の表示及び共有の場合の持ち分を記載いたしますのは、所有権保存登記の申請適格者を明らかにしますと同時に、地方税法による土地の固定資産税の納税義務者を明らかにいたす必要があるからでございます。
要するに、現行法のもとにおける不動産登記簿の表題部の実質は大体同じようなことを一号からこの四号までに相当することを記載するわけでございますが、ただ現行法では、所有者を表示するということは、表題部ではやってないのでございます。
この案におきましては、所有権の登記がされれば、その所有者の表示は消しますけれども、まだ所有権の登記がされていない不動産につきましては、その表題部の所有者の表示をするということにいたしたのでございます。
これは現在の台帳と同じ建前なんでございます。




この調査結果は、調べてはあるんだけど、全然わからん。


そういうわけで、国会会議録を調べてみると、この質問に対する答えとしては、もっと前から載せなきゃいけなかったんじゃないかな、と思う。


現在、市町村税とされている固定資産税は、もともと地租&家屋税として国税だったのが、昭和22年に地方税となり、昭和25年に固定資産税としてまとめられた、らしい。


4.固定資産税(内閣府 税制調査会)

土地税制史-評価を中心として-(税大論叢39号)


で、昭和25年の地方税法改正時に、土地台帳・家屋台帳が税務署から登記所に移された、らしい。


そして、それまで、土地の異動は市町村経由で登記されていたものが、直接、登記所に対してする、らしい。


上の資料の「異動」通知っていうのは、ここから来てるんだろうね。


そして、市町村経由でなくなったってことは、今度は、登記所から市町村へ情報を流す必要が出てくる。


大臣の大橋くんの答弁には出てこないけど、そういうルートがあるんでしょうね。


この辺の経緯については、第1章 不動産登記制度の概要 (愛知県公共嘱託登記土地家屋調査士協会)がわかりやすいかも。


○国務大臣(大橋武夫君)

 現在の土地台帳及び家屋台帳は、土地家屋の状況を明らかにし、地租及び家屋税を徴収するために必要な事項を登録する課税台帳でありますと同時に、地籍、家屋籍に関する台帳といたしまして、不動産登記制度の基礎ともなつているのであります。
然るにこの土地台帳及び家屋台帳に登録する賃貸価格の調査決定は、税務署においてこれを行うこととなつております関係上、その台帳の事務は税務署の所管とされていたのでありますが、他方不動産登記の事務が登記所の所管でありますために、不動産制度の見地から考えましすならば徒らに手続を煩雑にし、事務処理の円滑を欠く憾みがあつたのであります。
今回、地方税法の改正が行われようとしておりますが、これによりますと地租及び家屋税は市町村がこれを徴収することといたしますとともに、その課税は、右の賃貸価格を基準とせず、毎年市町村において認定する土地家屋の価格を基準として行われることになりますが、その結果といたしまして、賃貸価格の登録をする必要がなくなり従つて又税務署において台帳事務を掌る理由も消滅することとなるのであります。
ここにおいて、土地台帳及び家屋台帳の事務は、これと最も関係の深い不動産登記の事務を掌る登記所に移管し、あわせて土地台帳及び家屋台帳の事務と不動産登記の事務との間に、ある程度の手続上の簡易化を図りますとともに、従来通り市町村に土地台帳、家屋台帳の副本を備え、市町村の課税上支障を生じないように双互の連絡を図ることと致したのであります。
以上申し述べました趣旨によりまして、土地台帳法、家屋台帳法、不動産登記法その他関係法律の規定に所要の改正を加えるため、この法律案を提出いたした次第であります。

 以下この法律案の重要点を申し上げますと、先ず、土地台帳法の改正におきましては、第一に、土地台帳の事務を登記所に移管いたします結果、登記所に土地台目帳を備え、その登録の事務は、当該土地につき登記の事務を掌る登記所が掌るものといたしました。
第二に、今後は土地台帳に賃貸価格を登録する必要がなくなりますので、土地の賃貸価格に関する規定は、全部廃止することといたしました。
なお、市町村におきましては、土地台帳の副本に課税の基準となる土地の価格を記載することとなりますので、今後は土地台帳にも市町村長の通知により土地の価格を記載するものといたしました。
第三に、土地の異動に関する所有届の申告は、現在ではすべて市町村を経由してすることとなつておりますが、今後は、直接登記所に対してすることもできるものといたしました。
第四に、法令により登記名義人又はその相続人に代位して、不動産の表示の変更その他の前提登記を申請し、又は嘱託することができる場合でも、従来は、土地台帳法による申告を代位してすることができませんでしたため、種々手続上の不便を生じましたので、今後は、これらの登記を申請し又は嘱託し得る者は、土地台帳法による申告者に代位してその申告をすることができるものといたしました。
第五に、現在土地台帳の閲覧は許されないこととなつておりますが、今後土地台帳が登記所に移管されますと、登記との関係が現在以上密接となり、その閲覧の必要を生じて参りますので、従来の謄本の交付の制度の外に、新らたに土地台帳の閲覧を認めることといたしました。
第六に、現行の土地台帳法は、申告、土地台帳の副本等に関する重要な事項をもその施行規則においてこれを規定いたしておりますが、これらの規定を整理しまして、土地台帳法中にとり入れることといたしました。
第七に、罰則につきまして、他の法律における罰則との均衡を図るため必要な整備を行うことといたしました。

 次に家屋台帳法の改正におきましては、土地台帳法の改正と同様の趣旨によりまして、第一に、登記所に家屋台帳を備え、その登録の事務は、当該家屋につき登記の事務を掌る登記所が掌るものとし、第二に、家屋の賃貸価格に関する規定を廃止するとともに、家屋台帳には市町村長が通知した家屋の価格を記載するものとし、第三に、家屋台帳法施行規則中重要な規定を家屋台帳法中にとり入れることといたしました外、家屋に関する申告、家屋台帳の閲覧、罰則の整備につきましても、土地台帳法と略々同様の改正を加えることといたしました。

 更に不動産登記法の改正におきましては、第一に、現在、登記所が土地の所有権、質権若しくは地上権又は家屋の所有権の得喪変更等に関する事項の登記をしました場合には、これを税務署に通知して、税務署はこれに基いて土地台帳又は家屋台帳の登録を修正することとなつておりますが、今後はその必要がなくなりますので、その通知を廃止することといたしました。
第二に、現在不動産の所有権の保存の登記及び不動産の分割、合併その他表示変更の登記を申請する場合には、土地台帳又は家屋台帳の謄本を添附することとなつておりますが、今後はその必要がなくなりますので、これらの謄本の添附を要しないものと致しました。
第三に、不動産又は登記名義人の表示か、登記簿と土地台帳又は家屋台帳と符合しない場合には、その一致を図るための措置としまして、当該不動産又は登記名義人の表示の変更の登記により、先ずこれを符合させた後、他の登記をすべきものといたしました。
第四に、登記申請の手続の簡易化を図る意味におきまして、土地台帳法又は家屋台帳法による申告をする場合に、別に登記の登録税の納付があれば、その申告の外に、不動産の表示若しくは登記名義人の表示の変更の登記又は所有権保存の登記の申請があるものとみなして、その登記をすることといたしました。




で、おもしろいのは、昭和25年の改正で、台帳を税務署から登記所に移しちゃったもんだから、それまで所有権移転登記なんかがあれば、登記所から税務署に通知していた制度も廃止された。


意味ないからね。


ところが、国税としての地租(固定資産税)はなくなったんだけど、不動産を譲渡したときの譲渡所得について、所得税がかかってくる。

No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき) (国税庁)


となると、やっぱり税務署にも、市町村と同様に「異動通知」が必要になる。


で、地方税法に基づく通知のついでに、税務署にも法務局から通知を送っていたらしい。



問題は、コンピュータ化される前の登記所は、人手不足でそんなことまでしていられなかったってこと。


それが次に紹介する昭和45年の国会議事録。


○広瀬(秀)委員

 国税庁長官お見えになっていますが、特に資産税課税関係で土地の譲渡、不動産の譲渡、こういうようなものについて法務省との関係の問題でございます。
つい最近の新聞に、法務省側でいわゆる税務通知といいますか、これを譲渡所得について拒否をするというような新聞記事が出たわけでありますが、法務省のほうにいろいろ聞いてみますと、これは拒否せざるを得ないようなことになりますということを昨年の秋に正式に大蔵省、国税庁に申し入れをしている。
その後その事態がなかなか改善されないということを新聞社がそういう形で表現したんだろうということなんでありますが、これは現場の現地第一線の地方の法務局なんかに行ってみますと、このことは常に非常に問題になっているわけです。
これは本来の業務ではないはずだということで、なるほど地方税法三百八十二条でこのことが明確に規定されている。
しかしこの譲渡所得に関して、国税について法律上の根拠は何もない。両者の打ち合わせ、申し合わせというような形でやられている。
同じ資料だから三部とって、市町村のほうにやる分と県にやる分と税務署にやる分とつくってもらうということはそうたいしたあれもないだろう、こういうことでやっているようでありますが、しかし、現実に法務局の登記関係の仕事、甲号事件、乙号事件、それぞれたいへんに事務量がふえております。
譲渡所得なんかも非常に急ピッチでふえているというようなこともあって、本来の仕事がかなりおくれてきているということの一つの原因がこれであるということは、これは否定できない現実だろうと思うのです。
そういう点があり、さらに臨時の職員でも雇ってもらいたいというようなことで、これも申し合わせのようでありますが、予算が年間どれくらいかかるということをはじき出して、単価をようやく四十四年で一人当たり一日雇うということで七百二十円程度にした、こういうようなことではもう人も集まらぬということになってくる。
人が集まらなければよけい法務省の内部で金を出して、高い賃金を払ってやらなければならぬというような事態もあるということだし、さらにまた法務局の本来の仕事が非常におくれているにもかかわらず、その税制のほうでも期限のある問題が非常にあるわけです。
土地税制の改革なんかの問題で、この時限で適用が終わるというような場合なんかについて、それでくくらなければならぬというような場合には非常に税務署からもせっつかれてくるというようなことで、さらに今度は窓口にたまって、登記事務を早く進行してもらいたいという人たちなんかに対して、特に三月期の決算時期だなんというときに、商取引上どうしても必要だというような書類なんかも一日も二日も一週間も延びるというような事例もあるのが実態です。

 そういうようなことになっておりますから、この問題についていま何らかの形で、そういう点で法律上根拠を持たせるなら持たせる。
そうして持たせたならば、その事務をやる適正な人間を定員増として配置をするか、あるいは予算単価をもっと十分にやって、あらためてその要請をするというような、とにかくそういう措置を講じなければ絶えずあの不満は解消しない、こういう事態があるわけでありまして、法務省のほうでも国税庁から新しい提案があるのを待っているというような状況でありますが、その問題はどのように準備をし、新しい提案としてスムーズに問題が処理されていくように考えておられるか、この点を長官にまずお伺いいたします。




なぜかは知らんけど、昭和45年に指摘された問題が、平成に入っても解決していなかったらしい。


なに、これ?


○渡辺(嘉)委員

 そして問題はまだ一つ、地方税法に基づきまして法務局から市町村への物件異動通知書が送付されてきますると、その虚偽の登記をいたしました分だけはこれを抜き取るんです。
抜き取りまして残りを国税当局に連絡提携でお示しをしていらっしゃる、だからこういうことがなかなかわからなかったわけですね。

 こういうやり方は、脱税を目的とした、所得税法で規制している間接正犯ではなかろうか。
国税犯則取締法の正当な申告をさせないための扇動といいますか、あおり、唆しに当たるのではなかろうか、こう思うのですが、この点。

 いま一つは、法務省、こういう異動物件の通知書を、この際は市町村のみでなくて国税当局にも直接通知をするという、二通つくればいいのですから、こういうふうにきちっと法整備を行って的確を期されたらどうだろうか、こう思いますが、それぞれ御答弁を賜りたいと思います。
○清水(湛)政府委員

 地方税法三百八十二条の関係についてお尋ねでございましたので、その点についてお答え申し上げます。

 現在の地方税法三百八十二条によりますと、表示の登記とか所有権移転の登記がありました際に、登記所は市町村に通知をするということになっております。
この通知は、市町村がその事務等をしております土地あるいは建物に対する課税台帳を修正させるということを目的としてされるものでございます。
ところが、国税の関係ではそういうような規定は目下のところございません。
つまり、固定資産の課税台帳を修正させるというような要素が国税の場合にはないということが一つの理由になっているものと考えられるわけでございます。

 しかしながら、課税の適正を図るということは非常に大事でございますので、現在登記所では、税務署から要請がございますと、登記簿の閲覧とかあるいは申請書の閲覧については最大の便宜を図っておる、こういうことでございます。

 これをさらに進めて、地方税法三百八十二条と同じような規定を国税についても設けるのが適当かどうかというようなことになりますと、先ほど申し上げましたような課税台帳の修正というような要素がないということに加えまして、登記所も現在非常に繁忙であるということもございますので、非常に困難な問題があろうかと思いますが、大蔵省当局ともよく相談してみたいというように考えております。









現行モデル

窓口
閲覧
窓口
ネット
ネット
データ
情報証明
発行
事項証明
発行
印鑑証明
発行
市町村 無料 無料 中間 安い 可能 不可 不可
住民 中間 高い 中間 安い



順番に説明すると、最初の 「窓口・閲覧」は、申請書とか地図とかのように、コンピュータ上のデータではない、紙の資料を登記所の窓口で閲覧する方法であります。

もともと、これをネット上で閲覧することはできないので、「窓口」と限定する意味もないんだけど、他と比較しやすいように付けてある。


次に、 「窓口・紙」は、普通の紙の登記事項証明書。謄本のこと。


そして、それをインターネット上で請求して窓口で受け取る、これが 「ネット・紙」

郵送してもらうと、ちょっとだけ高いです。





それから、このサイトのテーマである登記情報提供サービスが 「ネット・データ」


「情報証明発行」は、それを市町村が印刷して行政証明をつけたもの。

現在、そんなサービスを提供している自治体はないと思いますが、やろうと思えば可能(なはず)。


「事項証明発行」は、法務局で出している登記事項証明書を市町村で発行できるか、という話。

今のところ、法務省は、自分のところの出店を市役所内に作って法務局として発行するサービスはしても、市町村自身が発行することは認めていません。


そして、最後の 「印鑑証明発行」は、市町村で会社の印鑑証明書を発行できるか、という意味で、現時点では、これもできない。




現行モデルの検討


オンラインでの、登記情報提供サービスや証明書請求が安いのは、そこにかかる人件費が少ないから。

逆に、窓口で紙の証明書を取得するのが高いのは、それだけコストがかかっているからであります。

では、市町村が登記事項を確認しようとするとき、なぜ、一番安くつくのが、一番コストのかかる窓口での証明書の発行なのか?


第三条
1  前条第一項の規定にかかわらず、 登記所の使用に係る電子計算機と請求人の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用して行う登記事項証明書の交付の請求に関する手数料は、一通につき、四百八十円とする。



オンラインで請求して、紙を窓口で受け取る制度は、登記手数料令の3条に規定されている。

しかし、この3条が公用請求の手数料免除を定める19条の適用除外になっている、つまり、手数料が免除されないのであります。


第十九条
  国又は地方公共団体の職員が、職務上請求する場合には、手数料 (第二条第六項から第八項まで、第三条、第四条、第七条、第九条及び第十条第二項に規定する手数料を除く。)を納めることを要しない。




そして、さらに低コストの登記情報提供サービスにも、公用請求の免除がない。






よくわからんのは、紙の手数料を免除しているんだから、登記情報提供サービス料金の大半を占めている登記手数料を免除して、

市町村は、1件15円

にしてもよさそうなんだけど、あえてやらない。



国も地方も税金で運営されているので、その合計コストが一番安くなるように制度設計されるはずが、一番コストのかかるものだけ無料になっている。

ものすごーく不思議な価格設定であります。


それでも、自己評価はとても高い。





市町村が使った費用は、誰が負担するんでしょう?

考えられるのは、次の3通り。

  1. 窓口で証明書を請求した人だけ
  2. 窓口で証明書を請求した人 + オンラインで証明書を請求した人
  3. 窓口で証明書を請求した人 + オンラインで証明書を請求した人 + 他全部の人


市町村が無料で取得できるのは、登記事項証明書と要約書と地図・図面なので、それぞれについて同じことが言えます。

いずれにせよ、ムダに高いコストを負担させられている一般利用者にとっては、とても迷惑な話ですな。


もっとも、それは免除されている自治体にしても同じことで、登記情報提供サービスが無料化されていれば、事務所にいながら確認できるのに、わざわざ登記所や出向くか、日数をかけて郵送請求しなければならない。






得をしているのは、せいぜい窓口業務を請け負っている民間企業で、無駄に手間のかかる客がいることで売上(受託代金)を伸ばせるくらいかな。

とにかく、制度設計としては、あまりに非効率であります。

では、とりあえず、市町村を低コストな制度へ誘導するため、窓口での証明書発行を有料にし、インターネット上での情報取得を無料にしてみるとどうなるか。







低コスト優先モデル

窓口
閲覧
窓口
ネット
ネット
データ
情報証明
発行
事項証明
発行
印鑑証明
発行
市町村 無料 高い 中間 無料 可能 不可 不可
住民 中間 高い 中間 安い



こうすると、市町村はわざわざ法務局へ行かなくても済むので、法務局も対応する必要がなくなり、お互いに無駄が省ける。


しかし、証明書を窓口で請求する場合、おおっぴらにムダな請求を出すと、法務局側に嫌な顔をされるので、世間体的な抑制が働くのに対して、ネットで自由に閲覧できるようになれば、請求件数が増加すると思う

逆にいえば、現行制度では労力と世間体くらいしか、無駄な請求に対する抑制がないのに、それすらなくなってしまう。


そうなると、市町村が余計に使った分は、やっぱり残りの一般利用者で頭割りするしかない。



また、住民からの依頼でこっそり調べることもできるので、無料の登記情報提供制度という抜け道もできる。



誤解のないように書いておくと、抜け道があるから、市町村の職員に犯罪に走る、と言いたいわけではない。

登記情報システムコストは、現行制度では、利用者間の平等の費用負担の上に成り立っているので、一部の人が負担しないと、他の人のところで分担しなければならない。

一部の市町村で不正が起これば、その分をそれ以外の市町村の住民が負担することになる

そのコストをその自治体だけで負担するなら自業自得で済むけど、他の自治体に影響が出るリスクを残しておくのは、制度設計として下策だと思う。



もちろん、現行制度は、もっとヒドイんですけどね。








低コスト優先・事項証明書発行モデル

窓口
閲覧
窓口
ネット
ネット
データ
情報証明
発行
事項証明
発行
印鑑証明
発行
市町村 無料 高い 中間 無料 可能 可能 可能
住民 中間 高い 中間 安い



LGWANで登記情報提供サーバーと接続できれば、登記事項証明書も印鑑証明書も発行できるので、ここではまとめて可能としておく。



市町村にとっては、理想に近い制度だと思う。

自分たちは法務局へ出向く必要がなくなり、住民に対しては正規の証明書を発行することができる。

しかし、一つ前の低コスト優先モデルで述べたように、一般利用者が負担している手数料で無制約に利用できる制度は、役所によるフリーライダーという奇妙な構図になってしまう。



国民の皆さんに、住民の皆さんに、

行政サービスを提供するために税金払ってね

あなたの税金、大事に使います

とアピールしているのに、自分たちがそれを否定するような制度は、やっぱり愚策だと思う。


もちろん、ここでは税金ではなくて手数料だけど、経済的に見れば何も変わらない。

だって、証明書を発行するようになれば、それを市町村が徴収することになるんだから。



そして、市町村役場で登記事項証明書がとれるなら、住民は近い方を選ぶだろうね。

そのとき、証明書というモノが必要な人はともかく、ちょっと知りたいだけの人が気持ちよく手数料を払ってくれるかな。

対応する職員にしても、受け取る手数料の大半は法務省に吸い上げられるわけで、無駄に手間のかかる接客ではコストに見合わない。

そのとき、公用として、ちょこっと調べるだけで客が帰ってくれるなら、というインセンティブを残しておくのは、合理的ではないと思う。



全体最適を実現するためには、こういう予防線をあちこちに張っておく必要がある。







一律課金・事項証明書発行モデル

窓口
閲覧
窓口
ネット
ネット
データ
情報証明
発行
事項証明
発行
印鑑証明
発行
市町村 中間 高い 中間 安い 可能 可能 可能
住民 中間 高い 中間 安い



長々と書いてきましたが、これが最後のモデル、結論であります。


要点をいえば、フリーランチはありえないということであります。


フリーランチ

  「フリーランチ(タダ飯)はない」。
ハーバード大学のマンキュー教授が自身の教科書で「経済学の10大原理」の冒頭に掲げるのがこの言葉だ。
何かを得るには何かを犠牲にする必要があり、タダに見えることにも隠れたコストがあることを意味する。




市町村がどれだけ請求しても、他の利用者がそれを負担することになる。

しかし、他の利用者にとって見れば、自分が住んでいる市町村でもないのに、役所の仕事だという理由で費用を負担させられるのは、まったくの筋違いである。



利用者にしてみれば、その市町村との接点は、登記の証明書をとった、という点にしかないのだから。


それは、法務省が言っているように、

様々な経済取引の基礎となる登記情報を広く一般に提供するもの

をたまたま利用した仲ということだ。




そういうわけで、市町村分を負担させられている一般利用者から、公用手数料免除を定めた登記手数料令が憲法84条の租税法律主義に違反する、という訴訟が起こされるのである。



手数料

国又は地方公共団体が国民のために行う公の役務に対する報償として徴収する料金又は公の施設の利用に対する反対給付として徴収する料金

の場合は、その利用が法律上又は事実上強制されている場合(例えば裁判における手数料など)は、強制的賦課の性質を有して、租税と同視しうるものと解すべきである

新版  体系憲法事典  p764

第八十四条
  あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする



そもそも不動産登記法119条3項は,登記手数料の額を定めるについて,『実費』のみならず,『物価の状況』,『その他一切の事情』を考慮すべきことを規定しており,内閣は,法律の委任の趣旨に反しない限り,その裁量権に基づいて,登記事務のコンピュータ化への移行経費及び公用請求分の無料化に必要な費用を見込んで登記手数料の額を定めることができると解される。
そして,前記引用に係る原判決の「事実及び理由」中第3の2(2)及び(4)における認定,判断によれば,不動産登記法119条3項の委任に基づいて登記手数料令2条1項が定めている本件手数料の額は,役務の反対給付の性質を逸脱していないというべきであるから,本件手数料の一部であれ,租税に転化しているということはできない

したがって,本件手数料を定める本件政令が憲法84条に違反するとの控訴人らの主張は,その前提を欠くというべきであって,理由がない。




まぁ、こういう結論になるだろうね。

だって、経済学的な見地から不当であっても、さらにその先にある一線を越えなければ、憲法違反にはならないから。

これについて、国会で金田くんがうまいこと言っている。



○金田(誠)分科員

  直ちに違法だと私は言っているわけじゃないんですね。
為政者として、法の適用の精神に照らしてどうなのかということですよ。
あるいはまた、現下の情勢に照らしてどうなのか。
民間は非常に厳しい状態にある。
地方公共団体も厳しいですけれども、そういう予算も努力の中から民間と同じように捻出しても罰も当たらぬだろうということを申し上げているわけでございます。

  特に、この経費は、コンピューター化に伴う経費、コンピューター化をしなければ値上げは必要なかったわけでございますから、そのコンピューター化が整えば官公庁も応分の恩恵にあずかるというものでございます。
それをみんなで割り勘しようではないかという発想になぜ立てないのかということは、非常に残念に思います。



それが日本の訴訟制度なのだよ。

原告もわかった上でやってると思うけど。



しかし、こういう経済の原則を無視した裁量が、今の日本の財政やら経済やらの状況を作ってきたんじゃないのかな。

だから、経済的に見れば、公用無料は、やっぱり間違っている。



どんな手続きをするにも、コストは必ず発生する。

それがフリーランチの議論だ。

  • 登記手数料だけ免除して意味あんの?

    用地買収にせよ徴税の差押にせよ、それを担当する職員の人件費がかかり、現地へ行けば交通費がかかり、連絡するには通信費がかかる。

    どうして、そこに登記手数料が入ってこないのだろう?

    登記を調べれば当然発生しているコストなんだよね。

    つまり、市町村の事務コストはそこの住民が負担すべきであるのに、自治体がそれぞれのコストを、お互いの住民に付け回しする構図になっている。

  • 民間と競合すると、不公平だよね

    これについては、銀行協会が提言をしていた。

    金融に限らず、建設とかもそうだと思う。

    登録免許税についてだけど、登記手数料も当てはまるんだろうね。

    ・政府系金融機関は、国家信用に依存した資金調達に基づいて、市場原理の下では提供し得ない貸出等を行っている。
    また、担保登記の登録免許税等が免除され、担保設定順位も第一順位となっている場合があるなど、税制面等で民間金融機関よりも優遇されている。
    これらの結果、民間金融機関による自由かつ適正な競争を通じて資源配分の適正化や効率化等が図られるという、わが国金融・資本市場の市場メカニズムそのものが歪められている可能性が高い





だからさ、住民の数とか不動産の数とかを基準にして、一般財源のカタチで補填すれば、自治体にとっても不都合なく、合理的な制度ができると思うんだよね。

それを使って調べるのも裁量、そこを節約してコストを削るのも裁量、全部住民が最終責任を負えば、スッキリする。


それが自治じゃないですか?







まとめ




○細川政府委員
  確かに、御指摘のとおり、現在、登記手数料令の第七条が適用される国、地方公共団体あるいは特殊法人からの職務上の請求につきましては、手数料を無料とする扱いとされておるわけでございます。
この扱いは、公共部門における相互の協力関係を促進する、こういう意味でございまして、従来から他の同様の制度についても同様なことが認められておるわけでございます。

  さらに、この登記特別会計が創設されたときの衆議院大蔵委員会の附帯決議でございますが、昭和六十年四月のものでございますが、これでも、公共部門における相互の協力関係について、従前の慣行を尊重するようにという附帯決議がございました。

  そういうことなどから考慮して、現時点ではこれは維持せざるを得ないということが私どもの考えでございます。

という答弁は、案外、本音なんじゃないかな。



ホントは有料化したいけど、それをやってしまうと、他の法令とのバランスが崩れてしまう。

法令全体の免除規定をまとめて変えなきゃいけないかもしれない。

そんなことになったら、改正作業や事務処理変更がものすごいことになって、霞が関ムラから後ろ指さされることになっちゃうよ。



だから、その中間として、現行制度のもとでは、登記情報サービスの登記手数料を免除して1件15円で閲覧してもらうのが、過渡期としてベストな制度だと思う。




ところが、それを請け負っているのが、天下り団体の民事法務協会だ、というのが話をややこしくする。

税金から料金払わせといて、儲かるのは、自分のところの天下り団体だけかよっ、ていう批判は、せっかく精巧に仕上げた作品である電登法のシステムを根底から覆しかねない。

ヤブヘビになっちゃう。

そういうわけで、この国全体にとって、より良い選択肢であるはずの1件15円は無理なんだと思う。




しかし、LGWANと接続することによって、市町村が、直接、登記情報提供サーバーに接続できるなら、法務省に支払う登記手数料を原価として払うだけでいいから、話がシンプルになる。

市町村が登記事項証明書を発行するときは、原価に自分のところの手数料を足した料金で発行すればいい。


市町村と同じように免除されている国の機関も、政府共通ネットワークで接続することにより、原価で情報取得ができる。




行政機関間の決済なら、印紙もクレジットカードもいらない。

無駄に調べている部署があれば、そこの予算が圧迫されるだけなので、抑制も働く。



やっぱり、ここがゴールなんじゃないのかな、と思うわけであります。











印鑑はいらない



ここまでお付き合い頂いて、いまさら議論をひっくり返すのもあれなんですけどね。



この日本社会は、いつまでこの印鑑で自分を証明していくんでしょうか?

IT先進国を目指している割には、ずいぶん旧式の制度が温存されているな、と思うわけであります。


ここからは、印鑑に代わる制度として、携帯電話の可能性を考えみたい。

パソコンを使った電子商取引であれば、すでに一般的であるが、 face to face の書面取引がなくなったわけではない。

ここで使われている印鑑を駆逐したいのである。



もっとも、技術的な話がまったくわからないので、モデルを使った思考実験みたいなものなんだけどね。



  1. まず、インターネットから隔離された、携帯電話ネットワークがあるとする。



  2. このネットワークを利用したサービスとして、個人・企業と契約し、経営者から従業員まで、ひとりひとりに端末を貸与する。



  3. 企業であれば、所属部署・役職だけでなく、担当する業務や決裁権限を登録しておく。



  4. 企業間の取引においては、担当者と担当者がデータをやり取りすることによって、今、自分が相対している人物が誰であり、どのような権限を持っているか知ることができる。



  5. ネットワーク上での契約締結において、それぞれが端末で承認し合うことにより、権限があればその時点で契約が成立し、別に決裁権者があればその承認を待つ。







設定としては、これだけ。




追加資料

「デジタル名刺」というサービスは、あるらしい。


ただ、紙の名刺の文化が根強いことと、名刺の内容の裏付けがないことがネックになるんだろうね。



  今回追加された「オンライン名刺刺交換機能」は、スマホさえあれば名刺を交換できる機能で、紙の名刺を切らしているときや大人数で名刺を交換する機会などで役立ちます。

  いままでもiOS間では「Airdrop」、Android間では「NFC」でデジタル名刺の交換は可能でしたが、異なるOS間での交換はできませんでした。
しかし、今回は「近くのユーザーを検索」「QRコードの表示」「メールでの送信」で名刺交換を行なうため、iPhoneとAndroid間でも利用できるようになりました。
なお、「近くのユーザーを検索」機能はグーグルの近接通信技術「Nearby API」で実装されているため、WiFiやBluetooth、超音波が活用されます。









登記情報をネットワークに乗せる



このモデルが成り立つためには、会社の役員・従業員の意思表示が、会社自身の意思表示であるという裏付けが必要であります。



部長、課長等との取引

しかし、そうでない場合は、銀行取引約定書等基本約定書(資格証明書、印鑑証明書を添付)を本社の代表取締役等代表者から提出を受けるとともに、部長、課長等を代理人とする旨の「代理人届」の提出を受けたうえで取引を行うべきである。その際、代理人の「使用印鑑届」も提出してもらう。

銀行窓口の法務対策3300講【追補】 きんざい pp412-413



結局、代表取締役の印鑑なんだよね。

これ、万能。


でもさ、鶏を割くのにわざわざ牛刀を使う必要はないよね。

そのために、部長や課長がいるわけだし。

最初だけにしろ、その人たちの権限を証明するために、代表取締役の印鑑を確認するってのは、やっぱり非効率だよ。



だから、取引のプラットフォーム自体で、会社の代表権を確認して、認証してしまえばいい。

手順としては、こんなかんじ。


  1. 会社が携帯電話会社と契約する。

    この契約には、次の内容が含まれる。

    • 端末のリース
    • ネットワーク・サービスの利用
    • 役員・従業員に対する代理権限の付与
    • 役員・定款等の変更時の通知義務
  2. 携帯電話会社が代表取締役の権限を確認する。

    会社がこの契約を結べるかどうかを確認する。

    • 代表取締役の会社実印と印鑑証明書
    • 定款
    • 必要なら、株主総会議事録・取締役会議事録
  3. 定期的に、それ以外でも登記事項に変更があった場合は、携帯電話会社が登記内容を確認する。

    登記情報提供サービスを利用して、登記されている内容を取り込む。

    効果は、こんなかんじ。

    • 携帯電話会社が登記内容に変更がないことを確認する。
    • 変更があれば、サービス上に登録してある内容を修正する。
    • サービス利用者は、お互いに、会社の登記内容を無料で確認できる。



何回目の繰り返しかわからないけど、登記情報提供サービスの受信者が内容を変更する危険があるから、証明文が付いていないのでありました。

だから、受信した瞬間は、その内容を国が保証しているわけであります。

そして、この携帯電話サービスは、いわば会社の実印を預けてしまうような内容なので、携帯電話会社に対する全幅の信頼がなければ成り立たない。

つまり、毒食わば皿までなのであります。

というか、プログラムを作って処理すれば、登記内容を抽出する段階で書き間違いが起こることはないし、その上で、マンパワーでチェックすれば、ほぼゼロでしょうね。



仮に、携帯電話サービス会社が、登記されている全部の会社と契約すれば、契約者が会社の登記情報を知るのに、このサービス上での確認だけで済んでしまう


登記提供サービスの利用は激減するだろうが、それがいいのか悪いのかといえば、もちろんいいことだ。

なぜなら、登記として公示する目的は、「取引の安全と円滑」であるから、紙ベースの取引をデジタル上に移行することによって「取引の安全と円滑」が向上するなら、関連法令にとっても本望というものなのだよ。


○田嶋委員
  最初の質問は大臣にですが、法務局やそれからネット上で商業・法人登記を公開しているということでございますが、その公開している意義について、まず大臣から伺いたいと思います。

○谷垣国務大臣
  確かに、商業・法人登記、これは公開しております。
それで、会社の商号、あるいは本店、代表者及び資本金等々が登記事項とされているわけですが、その狙いといいますか意味は、こういった情報を公開することによって、その会社と取引をしようとする相手方が会社の内容を確認することができる、したがって取引の安全と円滑が図られることになる、それを大きな意義として公開しているということであります。





こうやって、会社の代表権の確認、つまり、会社がこの携帯電話サービスを利用します、という言質を取っておく。

そうすると、個別の会社との取引で、代表取締役からの委任状もいらないし、その部長や課長が本当に会社の人間かどうかとかを確認する必要もない。


会社を登記する究極的なゴールは、ここにあると思うのであります。









教科書を読み返す



法律の教科書を読むのが嫌いであります。

つまんないんだもん。


でも、仮に、上に書いたような取引システムが普及していたら、法律の教科書もずいぶん薄くなるだろうな、と思うのであります。

法律の教科書には、コンピューターどころか、電卓すら普及していなかった時代の判例がザクザク出てくるんだよね。

いまだに、こんな問題が起きるのかと。

誰も防ごうって気はないの?

だから、もう、そんな問題、知ったこっちゃないんで、教科書から抹殺しましょうっていうのが、以下の主張である。



まずは、この判例から。




取締役会決議がなかった法律行為の効力



  株式会社の一定の業務執行に関する内部的意思決定をする権限が取締役会に属する場合には、代表取締役は、取締役会の決議に従つて、株式会社を代表して右業務執行に関する法律行為をすることを要する。




しかし、代表取締役は、株式会社の業務に関し一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する点にかんがみれば、代表取締役が、取締役会の決議を経てすることを要する対外的な個々的取引行為を、右決議を経ないでした場合でも、右取引行為は、内部的意思決定を欠くに止まるから、原則として有効であつて、ただ、相手方が右決議を経ていないことを知りまたは知り得べかりしときに限つて、無効である、と解するのが相当である。




まず、この携帯電話サービスでは、取締役会決議が前提として必要なら、決議のない取引は、システム上、成立しない。

起こり得ない問題である。


それでも、紙の契約書に判子押して取引したら、という可能性は残る。

これについては、SFついでに設定がある。

紙ベースの契約を定款が禁じている場合だけど。



  • すべての会社がこのサービスと契約すれば、相手方の会社が紙ベースの契約をできないことについて悪意である。

  • 過半数の会社がこのサービスと契約すれば、こっちの方が多数派なので、法律が改正され、紙ベースの契約ができないことが登記事項になる。



  • リアルの会社を解散して、携帯ネットワーク上の仮想世界に会社を作り直す。


    商品販売

    ユーザーは自分の持ち物を(譲渡可能な品ならば)任意のユーザーに販売できる。販売行為に資格や追加料金は必要ない。価格・販売量は販売者自身が決定し、リンデンラボはそれらを統制しない。商品の制作者自身が、みずから商店主として施設の確保・プロモーション・接客など店舗運営を一通りこなすというケースが多い。

    商品の例としては、アバターが身につけるスキン・髪・衣服・靴・アクセサリ、アバターの仕草をカスタマイズするアニメーション、SL内の住居に設置する家具・植木・家屋そのもの、自動車・飛行機・船などの乗物、武器、楽器、制作素材として使うテクスチャ・サウンド・スクリプト、など様々である。

  • すべての業務執行権限を持つ「代表取締役」は危険なので、・・・


    第三百四十九条

    4   代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する

    5   前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。






現行法は、代表取締役の万能性だけに着目して、逆に、代表取締役の全権リスクは無視している。



以前は、「共同代表取締役」というリスク分散システムがあったのに、廃止されてしまった。


旧共同代表取締役制度

通常、代表権は単独で行使できるが、それを数人で共同しなければ行使できないとするのが共同代表取締役という制度であった(旧商法261条2項)。
しかし共同代表では機動性に欠け、また一人で代表権を行使できないとはすなわち半人前であることを公言するようなものであるという事情もあり、共同代表取締役が実際におかれることは稀である。
立法論としても削除されるべきとの考えが強く、裁判上も重視されていない。
そこで、2006年5月施行の会社法において、共同代表取締役の制度は廃止された

共同代表取締役の登記制度の趣旨は、代表権の濫用を相互に牽制させるための制度を設け、これを外部に公示させることにあったところ、相手方が当該代表取締役が単独代表権を有しているものと信じてトラブルの原因となることが多いとの指摘がなされ、実際には、表見代表取締役の規定(商法第262条)によって保護されることが裁判上通常とされていることなどから、会社法では、共同代表制については、取締役の代表権に対する単なる内部的制限と位置づけ、これを登記事項から削除することとされた。




でもさ、取引の相手方に共同代表であるか否かが伝わらないってのは、純粋に登記上の公示が下手だから、とか思わなかったのかな。


監査役の監査の範囲より、ずっと重要な公示内容だと思うんだけど、共同代表を公示するために、どれだけ努力したんだろうね。

代表取締役の場合は、印鑑証明もあるから、そっちでも共同代表である旨の記録が必要になる。



少しは頭使いなさいよ。








これなら、仲間を3人集めて、はじめて効力が発生する。

相手にもそれがわかっているから、1人や2人では相手にならず、フラストレーションが溜まっていく。

そして、最後の最後で3人そろうと、その力が開放され、クライマックスを迎えるわけだ。


これこそ、共同代表取締役制度の趣旨をカンペキに表現できる方法である。




この国の立法者たちは、クール・ジャパンなどと恥ずかしいことを言いながら、ゲームや漫画のストーリーが理解できていない。


「登記・友情・勝利」 が少年漫画の基本なのだよ。




で、何の話だっけ?




そうだ。

ITをつかえば、法律的なトラブルを減少させることができるのに、法律は旧態依然としたままである。

こういう部分のコストやリスクを減少させることによって、経済っていうのは効率化していくんじゃないのかな?











代表権の濫用


単純に手続違反なら、システムで実行できないようにすることは簡単なのだよ。

関係者全員がウンと言うまで、先に進めない。

ところが、手続はちゃんと踏んでいるけど、正規の手順に則ったうえで、よからぬことしようとを考えている場合は、防ぐことは難しい。

たとえば、こんな事例。



  株式会社の代表取締役が、自己の利益のため表面上会社の代表者として法律行為をなした場合において、相手方が右代表取締役の真意を知りまたは知り得べきものであつたときは、民法九三条但書の規定を類推し、右の法律行為はその効力を生じないものと解するのが相当である。

  しかるに、原判決は、訴外Dは、登記簿上上告会社の代表権限があるのを幸い、自己の利益のために、上告会社所有の本件建物を被上告会社に売り渡したものであり、被上告会社は右の事情を知りながら悪意でこれを買い受けたものであるから、右の売買契約は無効である旨の上告会社の抗弁に対し、代表取締役が会社を代表して行為をする場合に、その経済的利益を自己におさめる底意があつたという事実は何ら会社に対する効果に影響はないとの理由により、果して上告会社が主張するとおり、訴外Dに背任的な権限濫用の行為があつたか否か、また、被上告会社の知情の点如何を審理判断することなく、たやすくこれを排斥しているのであつて、ひつきよう法令の解釈を誤り、ひいては審理不尽、理由不備の違法あるを免れない。
従つて、論旨は理由があり、原判決は破棄すべきものである。





この事件でいえば、代表取締役が代金を着服しようとしている、というココロの問題は、外からみてもわからない。

それは機械でどうにかできることではない。

だから、それをシステムに組み込むのが、リスク・マネジメントだと思うのだよ。


これまでの判例は、取締役会の決議がなかったっていう手続的瑕疵も、代表取締役の配信的悪意も、心裡留保の類推適用を使って処理してきた。

それは、相手方から見れば、どっちも分かる話ではないから、これはそれなりにスジが通っている。

しかし、調べればわかることと、調べてもわからないことは、本来は、別の話である。

意思決定をシステム化すれば、手続的瑕疵というリスクは防ぐことができるものだ。

そのうえで、代表取締役のデキゴコロのほうも、それが実現できないような業務執行手続を設計できるかどうかという問題に変換しなければならない。


たとえば、次のような方法が考えられる。


  • 取締役会の事後承認手続

    会社法が予定しているのは、取締役会の業務執行の決定があって、その後、それに基づいて代表取締役が実際に行動する。

    リアルの取引手続では、仮に、定款で取締役会の事後承認手続を義務付けたところで、代表取締役が相手方にそれを表示しなければ、善意の第三者には対抗できない。

    しかし、契約手続をシステム化すれば、相手は必ず悪意になるし、契約成立は取締役会の事後承認を経た後になる。

    こうなれば、代表取締役の意図を事後的に検証することができる。

  • 決済手続のビルトイン

    代表取締役がたとえ背信的意図を持っていたとしても、代表取締役のフトコロに対価が入っていかなければ、その意図は実現しない。

    であれば、金融サービスを取引システムに組み込むことによって、会社以外に対価を受け取れないようにすれば、不正も起こらない。

    そして、これは、不動産取引であれば、その登記手続までシステムに組み込むということである。



    オンライン申請などによって、どれだけ「人力」で登記手続を素早く行ったとしても、プログラムによる自動化では勝負にならない。

    また、人間が関わるということは、それ自体がリスクでもある。

    法律的な価値を実現するというのは、省力化と同義だと思う。

  • 目的物の受領確認

    金銭や不動産であれば、情報としてその移転を確認できる。

    ところが、「ジャガイモ  10トン」(特定物でも同じ)では、現物を引き渡さなければ、義務の履行にならない。



    現在でも、運送会社への依頼・発送手続はデータ化されているが、運送会社のホームページで確認するか、せいぜい運送会社からのメールやGPS等で報告を受けるまでだろう。

    しかし、売主・買主のほかに、運送会社まで携帯電話サービスとして契約すれば、それぞれの従業員の端末によって、契約の履行を各段階で確認することができる。





政治や行政でもそうだけど、民間部門の規制についても、つくづくツメが甘いなあ、と思うのであります。






表見代表取締役


第三百五十四条
  株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。



登記データと取引とがリンクしていない弊害の最たるものは、この表見代表取締役の制度である。

代表取締役であることは登記事項であり、登記をすれば第三者に対抗できるのが法律のタテマエである。


第九百八条
  この法律の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。


そして、逆に、「代表取締役でない」ことは登記できないので、会社にとっては、「代表取締役である登記をしない」以上にできることは何もない。

しかし、表見代表取締役制度は、「代表取締役」っぽい肩書をつけているというだけで、代表取締役の登記がない「非代表」取締役にも代表取締役としての権限があることにする、という恐ろしい制度なのである。

つまり、社内で、社長とか副社長とか専務とかの役職があれば、代表取締役でなくても、対外的には代表取締役になってしまうのである。



こんな経済政策のもとでは、会社内で、肩書きのデフレが起こることは目に見えている。


会社は、表見代表取締役の適用を免れるため、代表権のない取締役の明確化を図るだろう。

たとえば、代表取締役社長の次が部長取締役になり、その下が課長取締役係長取締役と、ランクダウンさせざるを得ないではないか。


使用人部長と、課長取締役とでは、どっちが偉いのか?

何たる不合理。



こういう条文があるのに、代表権のない副社長取締役を置いている会社は、法律的なリスク・マネジメントが全然できていない、ということだ。




諸悪の根源は、代表権の万能性にある。

「対外的な業務執行は、代表権」というフィクションがあるから、代表権のないものが代表者のごとく振る舞った場合のケアを考えなければならなくなる。

しかし、現実的には、役職それぞれに権限があり、そのリミッターを超えるか超えないか、という問題のはずだ。


第十一条
1  支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

第十四条
1  事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。

第十五条
物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為をいう。)を目的とする店舗の使用人は、その店舗に在る物品の販売等をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。





そういうわけで、それぞれのリミッターを超えられないようにすれば、こんな回りくどい制度にする必要もなくなる。



それが、取引のデジタル化である。





追加資料


課長取締役はシャレで書いたのに、租税法の教科書を読んでいたら、そんな記述があったので条文を引用しておく。


取締役が課長をするんじゃなくて、使用人兼務の取締役が使用人として課長の仕事をするって意味なんだけどね。



(役員給与の損金不算入)
第34条

  1.  内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与及び第五十四条の二第一項に規定する新株予約権によるもの並びにこれら以外のもので使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの並びに第三項の規定の適用があるものを除く。)のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

  1.  第一項に規定する使用人としての職務を有する役員とは、役員のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいう。












国の役割


このように、日本経済のプラットフォームは携帯電話業者にやってもらうべきなんじゃないかな。

幸い、日本には携帯電話サービス提供者が複数あるから、全国に一を限ってなどという不毛な独占も起こさずに済む。


したがって、重要なことは各プラットフォーム間でも内部と同様に円滑な取引ができるよう規格を統一することだ。

これは同時に、消費者としての企業が契約条件によって自由にサービス提供会社を変更できるということでもある。


そして、携帯電話サービス内の意思表示はネットワーク内部での私人間の取引に限らず、行政機関への申請等に利用したり、取締役会等の決議としても利用できるだろう。















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